【コースタイム】青崩07:20…中間ベンチ08:20~08:30…山頂09:20~09:30…ツツジ園(下山開始)10:00…中間ベンチ10:40…10:50…青崩11:40
快晴の朝、いつもの駐車場所に来ると驚くほど車の数が少なく、ざっと数えて10台程しかない。殆どが公衆トイレ近くに駐車して金剛山に登る様子で、水越峠へ登る車道の側壁沿いには私たちの車だけだ。近頃、駐車できるようになったトンネルを見下ろす空地は数台でほぼ満車。身支度を終えた夫婦が水分橋を渡って太尾道から金剛山へ向かったのを見送って、反対方向の葛城山に向かう。空は高く、晩夏というより初秋の気配が漂っている。青崩集落の一番上の民家を過ぎ、急坂の舗装路が終わり植林帯に入ると、ひんやりした冷気が身体を包む。しかし、どういうわけか体が重く、いつもの調子がでない。
暗い樹林帯が終わり、道が細く急になる辺りはヤブミョウガ、ベニバナボロギク、フシグロセンノウ、クサアジサイ、ツユクサ、ブタクサ、キツリフネ、ミズヒキ、ヤブミョウガ…夏の名残りの花と開き始めた秋の花の競演だ。流れを小石伝いに渡り、木の階段や岩交じりの急坂になる。この谷沿いの道はずっと日陰で涼しいので助かる。ただ、ここもアブが多く、ウチワで払いながら進むのが煩わしい。
シギンカラマツや、咲き残ったイワタバコを見ながら鎖の付いた岩場を過ぎて、再び流れを渡り谷を右手に見ながら水場に出る。冷たい水で顔を洗ってしばらく休む。
やや体調を取り戻し、ゆっくり登り続けて中間ベンチに着く。少し手前から感じていた風はここでは冷たいくらいに吹き過ぎ、火照った身体をたちまち冷やしてくれる。
腰を上げるのが惜しいような自然のエアコンの中で、しばらく休んで木の階段道を登りだす。ここは来る度に整備が進んでいるように思う。右手が開け金剛山が見える地点から明るい尾根に出る。伐採作業が続いていて、この早くから電動ノコギリの音が響いていた。ヌスビトハギの咲く短い植林帯の登りを過ぎ、水平の捲き道に入って♀ペンがヤマジノホトトギスが咲いているのを見つけた。よく見ると斜面にいくつも咲いている。堰堤を越えて五つ辻への旧道を分けて左に折れる。クサアジサイとフシグロセンノウが競うように咲く草地から、ショウジョウバカマの群落の中を登る。体調は完全に回復し、この登り道はいつもより短く思えた。キャンプ地を過ぎて何時も人通りの絶えないロープからの道へ出ても、不思議なほど誰にも出会わない。やっと高原ロッジの宿泊客らしい小母さんが一人、下って行った。
まだ締まっている白樺食堂の前から山頂への途中で、コオニユリにアゲハが羽を休めていた。その後ろにはススキの穂が出始めている。山頂の広場も全くの貸切状態で、ただ爽やかな風だけが吹き抜けている。せっかくなので展望盤の下に腰を下したが、日陰がないので花を探しながら山頂南西部の笹原を歩く。
金剛山を背にオミナエシが秋らしい色彩を見せ、ススキの穂が風に揺れていた。その下のナンバンギセルは残念ながら見つからなかったが、シラヤマギク、ヒヨドリバナ、カワラナデシコ、ワレモコウなどおなじみの花がたくさん咲いている。松の木の下のベンチから高原ロッジの前へ下る。中に数人の観光客の姿が見えたが、裏手からツツジ園の方へ行ってみると、ここも全くの無人。戸を閉めた売店の横に空の自動販売機が二台、ポツンと立っていた。売店の裏の木陰のベンチでしばらく休む。前にきた5月はツツジの時期で、休み場所を探すのに苦労したことを思い出す。
次第に気温が上がってきたので下山を始める。帰りもゆっくり花を眺めながら下ることにする。天狗谷道の下りに入ってすぐ、今日初めての若い登山者に出会う。あとはまた、二人きりの静かな山になる。暑くなったせいかアブが増えて困る。ウチワで追いながら歩くと、バンバンあたる音がするほどの多さだ。ベンチでもゆっくり休んでおれない。水場で汗を拭っていると、さっきの登山者が下って行った。凄い速さでのピストン登山だ。入れ替わるように、今度はゆっくりしたペースの男性が登ってきた。今日、出会った登山者は結局、頂上のトイレ前にいた山ガールと合わせて三人だけだった。歩き始めどうなるかと思った体調も次第に回復して、静かな山をゆっくり花を愛でながらマイペースで登れてよかった。