時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

雷桜 107

2010-09-14 | 読書
江戸から三日を要する山間の村で
生まれて間もない庄屋の一人娘・遊が
雷雨の晩に何者かに掠われた
手がかりもつかめぬまま
一家は
失意のうちに十数年を過ごす

その間
遊の二人の兄は逞しく育ち
遊の生存を頑なに信じている次兄の助次郎は江戸へ出
やがて
御三卿清水家の中間として抱えられる


お仕えする清水家の当主・斉道は
心の病を抱え
屋敷の内外で狼藉を繰り返していた…

遊は
‘狼少女’として
十五年ぶりに帰還するのだが…

運命の波に翻弄されながら
愛に身を裂き
凛として一途に生きた女性を描く


毎回申しますが
どんな形にせよ想い合う二人が
結ばれて終わらなと納得出来ないσ(^^;)

なので
当然
この手のタイプは
ラストが気になるわけですよ

一足先に
原作を読んでみました

映画見たら
不満感残るんだろうなぁ~
きっと…


今の今 この刻
そちと予の気持ちが一つであることが予にとっては重大なことに思える
この先どうなろうと 予がそちを愛しいと思う心に偽りはない

たとい一緒に暮らせなくても
心が通っていればそれでいいのだと思う
互いに相手を案じていることは この上もなく貴重で尊い


21世紀の今となっては
世界遺産並みの貴重な心情&心の機微…

ぬぁんて‘純’なの…

文庫291頁
傾きかけた夕日の茜色に染まる
斉道と遊のシーン
映画ではどんな感じになるんだろう…
雷桜は?

二人のクライマックスは
中盤で頂点に達してしまいます
この後
二人を取り巻く環境が一変!

二度と会うことがないと知りながら
遊を求めた斉道
精神のバランスが保てず
周囲を振り回していた斉道が
見事に変わりました
紀州藩主として
遊への想いを内に秘めながら
懸命に生き抜いた強さ…

愛する人がいると
こうも
人は強くなれるもんなのでしょうか…

瀬田村に残った遊は
斉道との一度の契りで身篭り
斉道の子を宿すことになるんだけど
よかったね…遊


斉道が
息子の存在を生涯知ることがなかったのは
残念だけど…
ストーリーの流れと
原作者の一貫した意志を感じました

後の展開は
辛く悲しいばかり…
なのに
それを感じさせないほど
二人は懸命に生きた!
それが何よりの救いです

個人の力では
どうにもならなかった時代
そんな時代に翻弄されつつ
懸命に生きた遊と斉道
現世では添うことが出来なかったけど
来世では必ずや!

満開の雷桜を
遊と斉道が
揃って愛でる機会がなかったのが
象徴的と云うか何と云うか…