時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

藁の楯 14

2013-05-25 | 読書
ちっぽけなアンプ製造業から身を興し
世界に冠たる電気メーカーを
頂点とする
巨大企業グループを創り上げた男
蜷川隆興…

元・経団連会長である経済界の
大物中の大物
まともな大人なら
その名を知らぬ者はない
と言うほどの
立志伝中の事物
その孫娘蜷川知香が惨殺された

犯人は
清丸国秀

7年前
西野めぐみという少女を殺害した罪で服役
その仮出所から数ヶ月後
再び
同様の出口で蜷川知香を殺害…

この男を殺してください
御礼として10億円お支払いします

                 蜷川隆興


蜷川隆興は
逃亡中の清丸国秀に復讐すべく
全国紙の全面広告やインターネットサイトを通じ
一億二千万人に
清丸殺害の協力を依頼した
その記事により
福岡で潜伏していた清丸が
福岡県警福岡南署に出頭した

これを受け
警察庁の上層部は
日本警察の威信を守るため
清丸を無事に警視庁に移送するため
犯罪人の移送としては異例ではあるが
清丸に警護(SP)をつける事になり
警視庁警備部警護課の機動警護課の銘苅一基警部補と
同所属の後輩・白岩篤史巡査部長が選ばれ
クズの弾除けになることになった
また
警視庁捜査一課の刑事であ
る奥村武警部補と神箸正貴巡査部長も同行し福岡に発った

福岡に着いた警視庁の護送メンバーは
清丸が
留置場で警察官に襲われ
手当てを受けている
九州中央病院にかけつけた
看護師による
清丸殺害を防いだ銘苅らは
福岡県警捜査一課
関谷賢示巡査部長と合流し
警視庁への護送が始まるが…

命を懸けて
「人間の屑」の楯となることに
どんな意味があるのか
警察官としての任務
人としての正義
その狭間で
男たちは別々の道を歩き出す…



映画は
駄作とまでは申しませんが
カンヌ国際映画祭コンペティションに
公式選出するほどの作品ではない!

but
三池崇史氏は
正式招待されたとは申せ
恥ずかしげもなく
第65回カンヌ国際映画祭
ミッドナイトスクリーニング部門に
『愛と誠』を出品しちゃうような
クレイジーな方なので
どうぞ
勝手にってな感じです

付け加えるならば
気持ち的には
万が一にも
あの場にいたら
自分の国籍を
ひた隠しにすると思う…


肝心の原作ですが
原作がこれなら
映画も
しゃ~ない

もともと
人間描写とか
人間の
深層心理を掘り下げると言うより
派手なアクションを描きたかったとか?
ハリウッドの
B級映画的な雰囲気を意識したのか…

日本はね
法治国家ですからね
こんな事は許される事じゃないですよ
まぁ
しかしね
こんなレベルの低い事を
本気にする国民は一人もいないんじゃないですか?


と言う
危機管理なまったくなってない
官房長官の発言とは裏腹に
10億目当てに
一般ピープルや極道系のみならず
警察官・機動隊員までもが
見事なまでに
豹変する
人間の心理を
うまいこと題材にしたもんだ!

感心はすれど

誉田哲也氏の
『ジウ』なんかに比べると
内容に重厚性を感じないし
松岡圭祐氏の
『千里眼』シリーズほど
スケール小さいし…

如何せん
尻つぼみ…

或る意味
クライマックスとも言える
銘苅と隆興との対峙が
なんと電話…

プロローグに登場した
サライヤなる人物が
総勢
一億二千万人参加の
鬼ごっこ的
殺人ゲームを企画したようなんですが

善と悪の堺はどこにあるのか
正義の定義とは
そもそも
正義と言う解釈は
誰から見たモノなのか

立場によって
正義が不正義として認識される
その不確かさ
不透明さのなかでおこる
人間の葛藤や矛盾を
もそっと
掘り下げて欲しかったかなぁ~

エピローグで
再びサライヤが登場しますが
この人物が
何気に
キーパーソン?
こやつは
メフィストフェレスか!?

チェス盤に
ばら撒いた駒の如く
右往左往する人間の姿を
一貫して
人間とは違う高みから
冷静に傍観している感じで
誰よりも
印象に残るキャラクターでした