時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

百万の手

2008-02-11 | 読書



音村夏貴は
交通事故で父を亡くし
母と二人暮らし
その母の態度が
最近おかしい
と言うか…
行動や発言が異様
そのお陰で
過呼吸の発作が
とみに多くなってきている中学生
ついには
自分の部屋に鍵まで取り付け
母を拒絶するようになっている

今日も
そんな母から逃げ出すべく
二階の窓から脱出して
親友正哉の家へ向かうが
何と言うことか
政哉の家が火事になり
彼が焼死した
両親を助けようと夏貴の目の前で
燃えさかる火のなかに飛び込んでいったのだ
不審火だった
嘆き悲しむ夏貴の耳に親友の声が聞こえてきた
彼の遺した携帯から
そして画面には死んだはずの彼の顔が…
不審火の真相を調べてほしいと彼は言う
家のなかに火の気はなかったし
消火活動も終盤に近づいて
なお激しく燃え上がった不可解な火事だった
放火なのか?
なぜ正哉と彼の両親は
死ななければならなかったのか?
携帯から語りかける友人と
突如現れた
母の婚約者という男東と共に
夏貴が探り出した驚愕の真相は…?


一昨年あたり
クローン人間が
誕生したとかしないとか
そんなニュースが世界を駆け巡りましたが
この作品は
実は
日本で既にクローン人間が誕生し
数十年経過していたという
設定なのです

私が想像していたクローンに対する観念とは
また違った局面からの問題提起もあり
畠中恵さんの描く‘妖’ワールドとは
一味違った作風となっています

主人公は
こちらも病弱な子供です

携帯に思念を残し
現世に残った政哉と
政哉の妹かもしれない少女&その家族が
中途半端な感じでストーリーから消えてしまったのは
拍子抜けしてしまいましたが

当たり前にこの世に生まれ
当たり前に育つ
当たり前に生きるってことが
実は
とても奇跡に近い
ことなんだ

こうして
日々生きていられることが
どんなに素晴らしいことなのか
そんなことを
ふと思わせてくれる作品です

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