庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

海からの贈りもの 前書き 2

2019-06-08 21:50:00 | 創作
母がこれを書いたのは、フロリダのガルフ海岸のキャプティバ島の砂浜近くにあった小さなコテージに滞在中のことである。多くの人達が、その小屋が何処のどれであったかを知りたがった。しかし、フロリダの友人が最初にその場所を見つけた時にはすでに、とうの昔にその小屋は無くなっていたと話していた。長いことその話しが本当だと知りながら、それでもなお、私は母が1955年に著した「海からの贈りもの」一冊を持って、最近の一週間をキャプティバ島で過ごした。ただ単に私自身に「穴を通すため」(注)に。私がメキシコ湾の海岸で探していたのは作家の小屋ではなく、作家の死やその後に残された遺産の経過、公にされた家族の歴史に関係する祝事や行事、そして私的な私たち家族についての暴露話や議論の幾つかについて調べるためであった。私は再び、助けを求めて彼女に目を向けていた。(前書き3につづく)
(注)原文の"Reeve"は、筆者の名前「リーブ」と、動詞としての"reeve"「ロープなどを穴に通して固定する」という意味をかけている。






贈海からのりもの 前書き 1

2019-06-08 21:49:00 | 創作
母は五十年以上前にこの本を出したが、私は本書をその後五十回は読んだように思う。これはあながち誇張ではない。「海からの贈りもの」が初めて出たのは私が十歳の時で、今回の版で私は六十歳である。恥ずかしながら告白すると、私は二十歳代になるまで、この本を読んだことがなかった。もっとも、こういうことは私に限らず、作家の子供たちにとって珍しいことではない。今では少なくても年に一回、時には二回以上読むこともある。一年間の、また人生のあらゆる季節に、この本を読む。しかし、この1955年の母の書物が新鮮さを失ったとか、そこに含まれている智恵が、私の人生や、時と共に私が学んできたことに適用できなくなったと感じたことは一度もない。 
https://www.youtube.com/watch?v=Ot4xMgf9Kc0&t=12s


海からの贈りもの 前書きの謎

2019-06-08 21:42:00 | 創作
アン・モロー・リンドバーグの "GIFT FROM THE SEA" は、吉田健一の70版を超える『海からの贈物』、1994年には落合恵子の『海からの贈りもの』として末{が出ている。私が何回か読んだのは吉田氏のだが、最近サラッと目を通した落合さんのは、いかにも女性的な言葉使いで味があった。末ヘ原典とは別の創作物であり、訳者の数だけ作品がある。

「50周年記念版」の原典は何年か前にKindle版で読んだ。それには作者の末娘で作家のリーブ・リンドバーグさんの前書きがあり、オーディブルで聞ける彼女自身の肉声も、3カ所のわずかな違いを除いて同じ内容である。ところが、先日手に入れたハードカバー本を見てみると「60周年記念版」になっていて、同じ2015年出版にもかかわらず、前書きの内容もリーブさんの年齢も10年の違いがある。

60歳と70歳。女性の年齢を10も違(たが)えばちょっと大きな問題ではないか・・・と思って、今は70を超えているはずの彼女の声を、YouTubeの講演で確認した。その知的な快活性に変化はない。しかし、やはりオーディブルの声よりも若干歳を経ている感じがする。

この「謎」はそのうち解けるとして、この「前書き」の末獅ンることにした。本文を味読する上で参考になるかもしれない。全部でわずか1000語余りの内容だ。元より祖訳・拙訳で、たぶん途中で話しがあちこち跳ぶだろう。数回で終える予定。