庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

虫を描く

2006-11-13 12:00:54 | 自然
昨夜のNHKアーカイブスはPCで予約録画しておいたのだが、あんまり面白くて結局深夜の放送を最後まで見てしまった。

15年前のプライム10で放映された「私は虫である~昆虫画家の小さな世界~」と40年近く前の、「日本の自然・小さな世界 昆虫」。

 

「昆虫記」のファーブルを生涯唯一の師匠とする熊田千佳慕は当時80歳。現在も95歳で健在。もと農家の納屋だった借家に奥さんと二人で暮らしている。家賃26000円のボロ家は樹木や花々で一杯のほとんど小さな森のような庭に囲まれている。彼はこの家から半径1kmを出ることは年に数回しかない。45年間一度も外泊したことがない。

その容姿、生活風景を見て・・・私は即座に画壇の仙人・・・熊谷守一を思い出した。



熊田は写実の極致、熊谷は抽象の極致・・・お二人の画風は全く異なるが、その生き様は驚くほど似ている。共に、自分が本当に好きなことを正直にやっているということ、人生の悲しさを知っていること、小さき生きものたちに寄り添っていること、何時間でも飽きることなくその生態を観察しつづけること、世評を意に介さないこと、清貧の生活に満足していること・・・。 

その超俗的な生き方は、俗世に漬かって忙(せわ)しない私の日常などとは程遠い世界のように見えるが、実は、極めて近いところにあるような気もする。この宇宙のあらゆる現象は、どうやら相反するものを基本に成り立っているからである。
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