庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

第四章 ライズアップ

2005-01-01 12:09:00 | 大空


 キャノピーのインテークから空気を取り入れて翼型を作り、滑空状態にすることをライズアップといいます。PPGのキャノピーに限らず全ての「翼」は、対気速度(大気との相対的速度)を持つことによって揚力を生み出し、滑空することが出来ます。グライダーの性能によって最低滑空速度(失速速度)は多少異なりますが、およそ秒速3m程度と考えて良いでしょう。つまりグライダーに対して最低3mの風が無ければ、大きい布袋であるキャノピーはグライダーになりません。だから、ライズアップにとって最も重要な要素は、やはり風です。無風の時は、人間が動いて、つまりキャノピーを動かせて風を作ってやらなければなりません。

 
  フォアハンド・ライズアップ

 (無風か、風が弱い時)
 ブレークコード、Aライザーの上部を左右等しく持って両腕を斜め後方に広げ体全体で左右均一の力で引きます。エンジンユニットが後方に位置するPPGではパラグライダーのように両肩の位置に腕をそろえて前に押し出すようなライズアップは行いません。

 Aライザーから伸びるAラインは、キャノピーのリーディングエッジを前方に引き出すことになり、インテークから空気が流れ込み、内圧によって翼型を作ります。ライザーはハーネスに繋がっているわけですから、腕を伸ばした時にハーネスにもテンションを感じるように、ライザーの持つ(上下位置)を自分の体形に合わせて決めます。

 左右のライザーテンションが偏っていたり、体がどちらかに傾いていると、グライダーも傾いて上がろうとするからうまくいきません。また、セットアップの段階で風軸(風の方向に真っ直ぐ向く)が合ってなくてもむつかしくなります。風に正対すること、ライザーを等しく引くことがャCントです。

 キャノピーが頭上に来るまでライザーは重いですが、頭上に来て滑空を始めるとすっと軽くなります。そのままにしておくと、オーバーシュート(キャノピーが前に落ちる)することがありますから、軽くなった瞬間に、少しフレア(ブレーク操作)を当ててグライダーを頭上に保つようにします。キャノピーは常に対気速度を必要としていますから、無風の時や弱風の時に滑空状態を保つためには人が前進し続けて、風を作ってやらなければいけません。

 
  リバース(バックハンド)・ライズアップ

(風が3m以上の時)
 3m以上の風があれば、グライダーは滑空することが出来ます。風が自らキャノピーをはらませようとしてくれるから、ライズアップはぐんと楽になります。グライダーが小さく、体重のある人は、風速6m程度までフォアハンドライズアップが使えるでしょう。しかし、リバースライズアップをマスターすれば、ライズアップの成功率は飛躍的に向上します。

 リバースライズアップは、フォアハンドの要領で基本的なチェックをした後、片方のライザーを束ねて持って、頭の上を通過させて、グライダーの方を向きます。こうすればキャノピーの挙動や、ラインの絡み、テンションのかかり具合など、全て目で確認出来ます。しかも、人間は押す力よりも引く力の方が強いので、体重やグライダーの大きさにもよりますが理論的には通常滑空速度(秒速8m前後)程度の風まで、ライズアップが可能になります。リバースライズアップにはライザーとブレークトグルの持ち方で数種類の方法があるので自分の好みで使い分けると良いでしょう。

 まず、クロスハンド。これはフロントハンドで準備した体勢そのままで後ろを向く方法。ライズアップが完了して前に向きかえった時、何も変更する必要が無いので、無用な混乱をすることがありません。

 次にダブルハンド。これはクロスハンドの応用で、両腕を平行になるように右手で左のライザーを左手で右のライザーを持ちます。もともとライザーはクロスした状態になってわけですから、真っ直ぐ手近にあるライザーをつかめば良いのです。注意する点は、ライザーがねじれた状態になっていると、前に向き直った時にブレークコードがライザーを回ってしまうこと、両腕がふさがっているのでライズアップの途中での修正が難しいということです。最後に、シングルハンド。これは片手で二本のライザーを持つという方法。空いた片方の手でブレーク操作が出来るので、少なくとも50%の修正が出来るのが利点です。

 その他応用編として、ブレークコードを片手にまとめて持つ方法、全く持たないでDライザーを使う方法などがあります。ブレークコードの持ち直しなどでグライダーをコントロールできなくなる時間を作らないこと。このャCントを押さえれば、自分に最も合った方法を選択すれば良いでしょう。
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