年齢差の恋愛が前面に押し出された予告編と アカデミー主演女優賞に輝いたケイト・ウィンスレットの“体当たりの演技”が取り沙汰される今作ですが、実は 彼女に本を読むマイケルが主人公であり、彼の目線で感じるべき作品であろうと思います。
『愛を読むひと』(7/3 劇場にて)
原題:THE READER
原作:ベルンハルト・シュリンク
制作国:アメリカ ドイツ(2008年 / 言語 英語)
監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:ケイト・ウィンスレット(ハンナ・シュミッツ)
レイフ・ファインズ(マイケル・バーグ)
デヴィッド・クロス(青年時代のマイケル・バーグ)
レナ・オリン(ローズ・メイザー/イラナ・メイザー)
アレクサンドラ・マリア・ララ(若き日のイラナ・メイザー)
ブルーノ・ガンツ(ロール教授)
ケイト・ウィンスレット自身は この映画をラブストーリーと位置づけている様だけど...そりゃぁ確かに ハンナにしてみれば そうなのかも知れませんが、これは マイケルという一人の男性の 長くて険しい大人への階段を描いた物語ではないかしら...と思うのです。
青春時代のひと夏の思い出で終わるはずだった年上の女性との関係が、数年後 彼女がユダヤ人の虐殺に関わっていた事で被告となっている裁判を傍聴した事により、彼女との関係は 単なる過去の出来事ではなくななってしまう。そして、ある責めを負いながら その後の人生を歩む事になっていく...
マイケルは 裁判を傍聴する中で、ハンナにとって有利となるある事実に気が付くのだけれど、彼女自身がそれについての公表を望んでいないのは明らかであり、また 学生という立場の彼が戦犯であるハンナを背負い込むという事がどういうことであるか...。
雪だるま式に 悪い方へ悪い方へと転がっていくハンナの人生は、『
ダンサー・イン・ザ・ダーク』を彷彿とする。共に、無知が故に 自分自身で どんどん不運を招き入れてしまう。だからといって、書いてもいない文章の罪を被らなくても...とも思うのだけど、私自身が彼女だったら...私が家族を持たずに独りで人生を歩んでいたとしたら...私は 意固地なところがあるからなぁ...ハンナと同じ様な選択をしているかもしれないなぁ...と思わなくもない。
マイケルは、自分の全てを娘に語ることで ハンナから卒業する事が出来ただろうか。出来れば、ドイツ人の役者でドイツ語の作品として観たかった。また趣が違ったのではないかしら。
ナチス絡みの物語に ブルーノ・ガンツが良識ある教授役として出ているのが ちょっと面白い。