6つの作品からなる短編集。どこからでもさらりと読めます。
どれも読みやすくて、人生の機微に触れる作品。地味で目立たない市井の人、その人たちにもドラマがあるのでした。
誰でも、普段付き合う人は限られているし、人生はたった一度だけ。別の世界を覗き、別の人生を紙の上で辿ってみると、少し視界が開ける気がする。小説を読む楽しさはそれに尽きるわけで、丁寧に描写していれば、それでもう十分と私は思う。変な仕掛けなど必要ないのです。
彗星が地球とぶつかる最後の日々の静かな暮らし。SF仕立てで面白かったけど、それだからと言って、世界は平和にはならないと思う。やはり最後まで戦争したり、欲をむさぼったり、の方がありそう。
別な人生のだいご味は、また別の長い作品で期待しよう。この人の作品では「歩兵の本領」が印象に残っている。リアルな自衛隊内の様子。ずいぶん前の作品だけど、お勧めです。