日課の一つに「精妙なる素振り」というのがあるのですが、これがいつまでたっても難しい。
一本歯の下駄でさらに踏ん張れない体の状態で行うので、より良い稽古になります。
若いころにやっていた素振りというと、いわゆる剣道素振りで、重い木刀を思い切り後ろまで振り上げて、刀背が自分の尾骶骨に着くらいまで振りかぶり、次に前に切り下げて地面の直前まで木刀を降ろす。。
この動きを何百回もやってとにかく膂力(りょりょく:腕っぷし)を鍛えたものです。
これは体育的観点から見ると、大変有効で素晴らしい鍛錬となります。
でも、精妙な武術を志す場合、いわゆる剣術の素振りということで、恐ろしいほど精妙で巧緻なる素振りを脱力の極限をもって、ゆっくりと行わなければいけません。体育素振りとは全く違う世界です。
肩は聳(そび)やかさず、腕の力は一切使わずに背中にある肩甲骨を真ん中に寄せる動きで腕を上げる。90度の真上まで上がればそれでいいのです。といいますか、体の構造上90度より後ろにはいきません。
前にも90度(水平)までです。やはり体の構造上それより下にはいきません。
これで使えるの? はい。精密にまっすぐな太刀筋を、肩甲骨の動きだけで実現できると、この動きを止めようとした相手には、一般的には体感できにくい力(勁力)が浸透するので、腰や膝から崩れてしまいます。そしてこちら側には全く力感がなく、とても不思議な感覚で相手を制御できるのです。
そのあとはどうすの? はい。あとは、横隔膜や、仙骨や股関節やひざ下などの腱をうまく操作することによって相手を制御することが可能です。これは今回の素振りの稽古の範囲ではなくなります。
え?これでいいの?なんでお箸を持ってるの?
木刀ではなく、お箸を持っているのは、木刀の柄を無造作に握ってしまうことを防ぐ稽古です。
手掌腱膜を収縮させて親指と人差し指で微妙なねじりと、静止と挟み込みの動きを加えて、掌に余裕を持たせた持ち方が正しい剣の持ち方です。こうすると手首が常に柔らかく、上記の勁力を相手に伝えやすいのです。
少しでも力んでしまうと、刃先が左右にぶれてしまいます。これをダメな例として「小刀刻み(しょうとうきざみ」というそうです。こうなるとせっかく出来上がった勁力が分散してしまい、意味を成しません。
箸での素振りのあとに、小刀や、普通のサイズの木刀で稽古をいたします。
とにかく一切の力んだ力は使いません。指の力は使わず、掌の腱(手掌腱膜)を使い、手首は極力柔らかく、腕の力は一切使わないで、肩甲骨の操作だけでの素振りです。
たかだか、90度の角度の素振りですが、まあ、本当に難しいのです。とにかく脱力脱力、そして精密でまっすぐな太刀筋を実現する稽古です。
脱力がいかに難しいことか、、、毎日毎日考えさせられます。でも、うまくいったときには本当にうれしく、大いなる達成感を感じることができます。
精妙な武術の稽古は、、これがそのまま鍼治療の時の鍼の操作とお灸の火を消すときに人差し指と親指でつまむようにかぶせるときの精妙な力を使う稽古になるのです。
時々この運動場に散歩に来た外人さんに「オー!ストレンジサンダルサムラ-イ。。」いわれます。そこで「わしはチョップスティックサムライだ!(ハシ侍だ!)」と答えてすたすたとその場所を去ってゆくのです。
「さや侍」という映画がありました。。
いい映画です。
今日は"素振り"の文字に目が行き早速読ませていただきました。長年居合道の稽古をしてましたが、稽古中、先生から力抜け、腕の力はいらないとさんざん言われました。脱力の意味はわかってもどうすればいいのかわからず、合気道を少し習ったことがあります。頚椎症と椎間板ヘルニアで刀が持てなくなりもうやめてしまいましたが、武道武術のことが書いてあるブログを見ると立ち寄ってしまいます。
サンフランシスコの料理の記事も楽しいのでフォローさせていただきました。
さて、逆流性食道炎には六君子湯、高血圧には七物降下湯がよく使われます。しかし、漢方薬はご存知のとおり、一人一人の体質によって、全く異なるものが処方されるのが常です。必ず問診、できれば触診をきちんとしてくれる治療家を選んでください。