有川さんは私の好きな作家のひとりですが、この本は読んでいませんでした。
昔の部下だった妙齢の美人から推薦されて、早速図書館から借りてきました。
舞台は児童養護施設「あしたの家」
新規採用され、希望に溢れ勇んで着任してきた三田村が主人公。
クールで厳しい指導教員の和泉、陰気な雰囲気だけど経験知識豊富で子供たちのことを真剣に考えている猪俣。規則に厳格で秩序第一の副施設長の梨田に、心も体もふくよかな施設長の福原。
そして生活態度も良好で職員との関係もいい「問題のない子」の谷村奏子と平田久志。
物語は新任の三田村が熱意はあるけど空回りしがちな日々から成長していく過程を、谷村と平田のそれぞれの課題を抱えつつ目指す進学問題を軸に進んでいきます。
児童養護施設の子供たちは、親に捨てられたかわいそうな子供たちと言うイメージが世間一般の理解だし、根が単純な新任の三田村も親に捨てられたかわいそうな子供の支えになりたいという気持ちで志望してきた。
だが施設に入ったおかげでいわれのない虐待を受けることもなく、食事もきちんと摂れ、学校にも行ける。結果として命を救われた子供たちは多いし、虐待死のニュースを見るたびに早く親から引き離し施設に入っていればと思う。施設には集団生活の窮屈さはあるだろうが、毒親に育てられるよりはうんと幸せだ。
さすが有川さん、イメージだけが先行して実態があまり世間に知られていない児童養護施設について、小説という形を取って分かりやすく、かつ説得力を持って施設の内実とそこに働く教員、入所している子供たちの喜びと悩みと葛藤が描き出されている。
舞台は社会福祉法人の運営で定員90名の大規模施設。実は児童養護施設には公立の施設もあって、私の友人とか同僚でも児童養護施設に勤務した人もいる。正直、三田村のようにピント外れかもしれないけど情熱を持って飛び込んだ訳でもなく、公務員試験を受けて専門知識も適性もないまま、たまたまの人事で配属された場合も多々ある。それでも組織人の性で与えられた職務を懸命に勤めていたのだが、そういう職員を子どもたちはどう見ていたのだろう。大きな組織の一公所と言うこともあって、職員は定期的に人事異動があり、今の方針だと長くても同一部門にいられるのは7年。やりがいを感じ子供たちのために一生懸命になっても、任期が過ぎればまた違う部署に行き、新たな部署で新たな自分に挑戦したいと思う人が多いのではないだろうか。期限が決められているから何とか頑張れると言う面もあるだろうし、施設での経験をいろいろなところで活かし、改善への方策を立案できる部署にでもいければ、人事異動はプラスになります。とにかく現場でいくら声を出してもなかなか現場の声が届かないのが現状ですから。ストレートな声ではなくても、この小説のようにエンターテイメントを兼ねて訴えた方が多くの人に伝わりますよね。
この小説では職員室に30ほどの机があると書いてあるけど登場人物は職員ではほぼ施設長、副施設長、猪俣、和泉、三田村だけ。子ども達では問題のない子の谷村と平田、そして若干問題がある子の杏里ぐらい。複雑な背景から問題を抱えていて職員を困らせている子ももっといるだろう(これも偏見かも?)し、職員でもたまたま配属されたけど問題職員で適性がない人とか全くやる気のない人とかいろいろな人がいそうですけど。
職員は仕事としてやっているので施設にいる90人の子供たちの家族にはなれないし、職員として集団生活の秩序を守らせなければいけないことも必要で、誰かが規則に厳格なわからずやを演じることも必要なんでしょうけど、そういう姿勢は問題のない出来る子ほど内心は邪魔くさいものに感じているのか。
読んでいて、どうしても上から目線で見てしまうと言うか、もし自分が配属されたらどうしただろうかと思ってしまい、今まで知らなかった児童養護施設の実態に目を開かされる思いで読むとともに、自分ならどうしたんだろうとい課題を突き付けられたみたいで、重い読後感でした。
このようなレヴューを書いているのでは教えてくれた美女に失望されそうですが、児童福祉の末端を汚していたその頃は世間一般と同様偏見に満ち知識不足だったと改めて自分自身を反省しました。今でも知識は不足していますけどね。
昔の部下だった妙齢の美人から推薦されて、早速図書館から借りてきました。
舞台は児童養護施設「あしたの家」
新規採用され、希望に溢れ勇んで着任してきた三田村が主人公。
クールで厳しい指導教員の和泉、陰気な雰囲気だけど経験知識豊富で子供たちのことを真剣に考えている猪俣。規則に厳格で秩序第一の副施設長の梨田に、心も体もふくよかな施設長の福原。
そして生活態度も良好で職員との関係もいい「問題のない子」の谷村奏子と平田久志。
物語は新任の三田村が熱意はあるけど空回りしがちな日々から成長していく過程を、谷村と平田のそれぞれの課題を抱えつつ目指す進学問題を軸に進んでいきます。
児童養護施設の子供たちは、親に捨てられたかわいそうな子供たちと言うイメージが世間一般の理解だし、根が単純な新任の三田村も親に捨てられたかわいそうな子供の支えになりたいという気持ちで志望してきた。
だが施設に入ったおかげでいわれのない虐待を受けることもなく、食事もきちんと摂れ、学校にも行ける。結果として命を救われた子供たちは多いし、虐待死のニュースを見るたびに早く親から引き離し施設に入っていればと思う。施設には集団生活の窮屈さはあるだろうが、毒親に育てられるよりはうんと幸せだ。
さすが有川さん、イメージだけが先行して実態があまり世間に知られていない児童養護施設について、小説という形を取って分かりやすく、かつ説得力を持って施設の内実とそこに働く教員、入所している子供たちの喜びと悩みと葛藤が描き出されている。
舞台は社会福祉法人の運営で定員90名の大規模施設。実は児童養護施設には公立の施設もあって、私の友人とか同僚でも児童養護施設に勤務した人もいる。正直、三田村のようにピント外れかもしれないけど情熱を持って飛び込んだ訳でもなく、公務員試験を受けて専門知識も適性もないまま、たまたまの人事で配属された場合も多々ある。それでも組織人の性で与えられた職務を懸命に勤めていたのだが、そういう職員を子どもたちはどう見ていたのだろう。大きな組織の一公所と言うこともあって、職員は定期的に人事異動があり、今の方針だと長くても同一部門にいられるのは7年。やりがいを感じ子供たちのために一生懸命になっても、任期が過ぎればまた違う部署に行き、新たな部署で新たな自分に挑戦したいと思う人が多いのではないだろうか。期限が決められているから何とか頑張れると言う面もあるだろうし、施設での経験をいろいろなところで活かし、改善への方策を立案できる部署にでもいければ、人事異動はプラスになります。とにかく現場でいくら声を出してもなかなか現場の声が届かないのが現状ですから。ストレートな声ではなくても、この小説のようにエンターテイメントを兼ねて訴えた方が多くの人に伝わりますよね。
この小説では職員室に30ほどの机があると書いてあるけど登場人物は職員ではほぼ施設長、副施設長、猪俣、和泉、三田村だけ。子ども達では問題のない子の谷村と平田、そして若干問題がある子の杏里ぐらい。複雑な背景から問題を抱えていて職員を困らせている子ももっといるだろう(これも偏見かも?)し、職員でもたまたま配属されたけど問題職員で適性がない人とか全くやる気のない人とかいろいろな人がいそうですけど。
職員は仕事としてやっているので施設にいる90人の子供たちの家族にはなれないし、職員として集団生活の秩序を守らせなければいけないことも必要で、誰かが規則に厳格なわからずやを演じることも必要なんでしょうけど、そういう姿勢は問題のない出来る子ほど内心は邪魔くさいものに感じているのか。
読んでいて、どうしても上から目線で見てしまうと言うか、もし自分が配属されたらどうしただろうかと思ってしまい、今まで知らなかった児童養護施設の実態に目を開かされる思いで読むとともに、自分ならどうしたんだろうとい課題を突き付けられたみたいで、重い読後感でした。
このようなレヴューを書いているのでは教えてくれた美女に失望されそうですが、児童福祉の末端を汚していたその頃は世間一般と同様偏見に満ち知識不足だったと改めて自分自身を反省しました。今でも知識は不足していますけどね。
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