怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

宮城谷昌光「呉越春秋・湖底の城」

2022-06-02 07:14:27 | 
とうとう全9巻読み終えました。
ハードカバー1冊ほぼ300ページ近くなの全部読み通すと2500ページを越えます。

久し振りの長編小説制覇で、読み終えた達成感があります。
春秋時代に熾烈な争いを繰り広げた呉と越。ほとんど知識はないのですが、「臥薪嘗胆」という言葉は学校で習ったので知っています。
呉王の夫佐と越王の句践が主人公ですが、この「湖底の城」でも最後のクライマックスは肝を嘗めて敗戦の恥辱を忘れずにいた句践が見事呉を撃破して復讐を果たす戦いです。でもそこまでたどり着くのに長い。夫佐も句践もなかなか物語に登場してこない。
前半の主人公は楚の重臣の次男坊の「伍子胥」。魅力的な人物で知恵と胆力で苦境を切り抜けていき、有意な人物を見出し、人脈を広げて大活躍。
楚の王室の内紛の中で父と兄を殺され、復讐を誓った伍子胥が点々と放浪する中で、楚と敵対する国の呉に落ち着き、呉の王子闔慮を補佐して王とさせ、腹心の部下として内政、外交に辣腕を振るい、さらに軍師として「孫子の兵法」で有名な孫武を登用して、楚に挑んだ戦いで完膚なきほど打ち破り滅亡の淵に追い詰めていく。孫子の兵法の要点は戦う前の徹底した情報の収集であり、敵を知り己を知れば百戦危うからず。戦争は戦場での戦いだけでなく国力の総力戦なので、まさに富国強兵の準備が肝要。クラウゼビッツの戦争論の先取りの先見性はすごい。
伍子胥の活躍もあって、呉は破竹の勢いはとまらず、さらには越との戦いにも勝利するのだが、ここからは呉越の熾烈な戦いが長く続く。すでに6巻は過ぎようとしているのですが、ここからいよいよ臥薪嘗胆の物語が展開していく。
後半は越の重臣となり、外交を担う范蠡が主人公になり、そこから見る呉と越の駆け引きと争いで話は進んでいきます。
一方、呉王夫佐は有能で国民に人気のある伍子胥を遠ざけ、無駄ともいえる外征を繰り返し国力を損なっていくのだが、対する越王の句践は、范蠡と太夫種を両輪に国力の涵養に努め、最後は呉を撃破して、夫佐を死に追いやり、その後諸国を従え覇王となっていく。
それにしても宮城谷さんの中国小説は、登場人物の名がやたら難しい。どう読んだらいいのか分からない字も多いし、係累の名前は似ているので何が何だか分からなくなる。地名も難しいし、土地勘がないので位置関係がよく分からない。一応付属で簡単な地図がついているのですが、もう少し大きいものでないとなかなか理解できない。ついでに主な登場人物の一覧もつけてもらうとありがたかったのですが、それはない。暫く登場しない人が突然重要な役割で出てくることもあって余裕があれば自分でメモを取りながら読んでいくといいかもしれません。
でも物語の中に入り込めば、もう少し春秋時代の歴史に対して予備知識があればとも思いますが、そんなこと関係なく多少人名地名が分からなくても、物語の魅力に引き込まれて、途中で中断することが出来ず、のめりこん行けます。実際1冊読み終えるとすぐ図書館に走って行き次の巻を借りてきてと読み進めて行きました。
それにしても当時の王室の権謀術策蠢き、骨肉相食む姿は権力の恐ろしさを顕わにしています。自らの征服欲を満たすために民のことを考えずに外征を繰り返し、無駄に国力を衰亡させていく王とか大国に挟まれ懸命に生き残りを計る小国とかの姿は、現代にも通じるものがあって、人間はどんだけ進歩したのかと嘆息したくなります。
時間がある人は中国春秋戦国時代の歴史を概略頭に入れてから準備万端ですので、今こそぜひ手に取って読みだしてください。でも最初は読み方の分からない漢字、親しみのない人名、地名を適当にスルーしつつ我慢して読んでください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 錦鯉「くすぶり中年の逆襲」 | トップ | 今度はふくらはぎ… »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事