怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

今野敏「探花・隠蔽捜査9」

2022-12-07 08:06:34 | 
シリーズをずっと愛読している隠蔽捜査の最新刊。シリーズナンバーは9ですが、派生で3.5と6.5が入っているのでシリーズでは11作目。警察庁のキャリアだった竜崎伸也は息子の不祥事で警察庁大臣官房から大森警察署長に異動。そして今回からは神奈川県警の刑事部長として活躍する。

それにしてもキャリア官僚というのは異動が多い。それも都道府県をまたぐような異動なので、慣れるまでが結構大変なはずで、この小説でも神奈川県警に赴任して同じ警察と言えども土地柄とか配慮しなければいけない点が違い、加えて部下も同僚もほとんど知らない人ばかりで、戸惑う姿が描かれている。
私も38年間で15回異動しているが、それまで全く知識のない部門に異動になった時は職場で話されている言葉が分からない(専門用語を略語で話している)し、周りは知らない人ばかりで無知をさらけ出して聞くしかない環境には困惑したものです。誰かが冗談を言ってみんな笑っても私だけ分からないで分からないまま愛想笑いしていたのでした。気分的には敵地に1人で落下傘で降り立った気分で、ほとんど話したことがなかった過去に職場が一緒だった人が妙に頼もしく思えたものでした。もっともみんな訳が分からない上司をたててくれて、気心が分かるとそれなりにうまく溶け込んだのすが、異動後の最初の緊張感はいつも半端なかったと言うのが実感でした。竜崎の戸惑う姿はすごく分かります。
今回の舞台の神奈川県では事件が横須賀で起きるのですが、横須賀と言えば米軍基地があって米国軍人が絡むとなると安保体制の中の日米地位協定とかナーバスな問題があって警察も腰が引けている。部下も参事官の阿久津や捜査第一課長の板橋などの今回から関わる部下は今までのメンバーと違って気心も分からずどれだけ信じて任せていいか悩ましい。向こうも竜崎が何をするのか何を考えているかが分からないので様子を見ながらの雰囲気がある。
原理原則に忠実で空気を読まないで信じたことをまっすぐに行う竜崎もさすがに部下の人となりと状況を探りながらという感があります。
今回は同じ神奈川県警の警備部長に同期キャリア組でハンモックナンバー1番の八島圭介が赴任してきてライバル視してくる。
因みにこの本の題名の「探花」というのは中国の科挙最終試験の合格者で、トップを「状元」、2番目を「傍眼」、3番目が「探花」と言い、竜崎は3番目だったと言うことです。「傍眼」は何と竜崎と深い因縁のあるこのシリーズでもおなじみの警視庁刑事部長の伊丹という設定です。
この八島が事件に微妙に絡んでくるのですが、お約束通り竜崎の前でぎゃふんと言わされます。
横須賀と言うことで米軍も絡んできて、米軍から特別捜査官が派遣され捜査本部で事件捜査に従事するのですが、マスコミが騒ぐのを恐れてみんな引いてしまうのですが、竜崎が押し切ります。
同時並行で竜崎の息子がポーランドの留学先で逮捕され行方不明という話が持ち上がり、捜査の合間に外務省とも連絡を取って情報収集もしなくてはいけない羽目に。結局この話は最後には無事解決するのですが、これは話を盛り上げる横道ですね。
事件の方は目撃者の話の矛盾をついていく中で着々と捜査が進展して解決していきます。その過程で竜崎が福岡県警、千葉県警、警視庁と直接トップ交渉して協力を依頼してスムーズに動かしていくのですが、一気呵成に読ませます。
それでも被疑者がプレジャーボートで逃走するのですが、3か月前に会社に入った人間が社長と釣り仲間でボートの鍵まで預かって自由に使えるのは如何な設定か。福岡県警で写りの悪い防犯カメラの写真を送っただけで人着出来ると言うのも出来すぎでは。まあ、もう一度読み返してあらさがしをするといろいろ出てきそうですが、そんなことを立ち止まって考えさせる間もなく一気呵成に読ませてしまいます。
一緒に写っているもう1冊の「ランチ酒」はシリーズ3作目。バツイチ、アラサーの見守り屋の祥子の話は今回も仕事あけにランチ酒を堪能しつつ見守りの必要な人々のそれぞれの事情が語られます。祥子の人生も波乱がありつつそれなりに進んでいき、新しい生活の予感が出てきますので、このシリーズまだまだ続編がありそうで楽しみです。

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