言葉のチカラこぶ——『いい言葉塾』

言葉はコミュニケーションの基本。伝えたいことは「言葉のチカラ」できっと伝えられる。もっとうまく伝えられる。

ある料亭の再生物語 <第1部>(その3)

2011-06-15 10:32:21 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)


「ある料亭の再生物語 <第1部>(その3)」


ふだんから寡黙な板長であったが、この時ばかりは日頃から思っていることがあったのだろう、
スムーズに意見が出てきた。

「自分は千樹に小僧から奉公させてもらって今の自分があります。暴れん坊のどうしようもないガキの自分を引き取ってもらって、ここまで育ててもらった恩は、まだ返せてはいません。自分は千樹あっての自分です。営業を続けると言うのなら、残ります。最後まで奉公させていただきます。出ていくなんて考えたことはないです。
実際何度か東京の有名な料亭やホテルなどから誘いを受けたことはありました。今まで黙っていてすみません。
心が揺れた誘いもあり、悩んだことも何回かあります。でも今ここにこうして自分はいます。これからも自分はここにいます。どんなことがあっても」
その言葉を聞いた女将の目からは涙が光るのが見えた。
もちろん社長の目にも確かに涙があった。
「しかしこんな状態では、逆に自分のような古臭い者が居座っていては悪いという気もしないことはありません。自分のような者がいるから何か新しいこともできないんじゃないかと思うときもあります」
「いや、板長、絶対にそんなことはない。板長の腕があるから、今までこんな時代になっても千樹が保ってこれたんだ」
社長が板長にいたわりの目を向けて言った。

「あ、ありがとうございます、社長。でもこんな自分には何のアイデアもありません。もっと若い奴の意見を聞いてやってください」
「そうか、ありがとう。じゃあ他の人にも聞いていこう。鬼頭さん、どうだ」
大番頭の鬼頭は、とつとつと話し始めた。
「ここでは一番古いわたしは、以前の栄えた時分の千樹がただ懐かしいだけで、もしここがなくなるんでしたら、そっと隠居になるつもりでいます。幸い二人の娘もとうの昔に嫁いでおりますし、なんの憂いもありませんから。後はみなさんで話し合ってください。私はみなさんの意見に従いますので」
「そんな悟ったような言い方をする歳でもまだないだろう、鬼頭さん」と社長がまだ頑張れるだろうというように諭した。

「いえ、ホントにもう私なんか、時代遅れの見本のような者で」
「馬鹿なことを言うな。まだ頼りにしてるんだ、おれは」
「もうそんな話はおしまいにしてください。これからは前を向いた話がしたいわ」
女将さんが、もうそんな話はごめんだというように口を開いた。

「どう順番に言ってください。みんな、今言いたいこといわないと、後からあれこれ言っても知らないから。内田さん」
名前を言われた中居頭の内田さんはしばらくうつむいていたが、おもむろに話しだした。
「私は中居頭といってもパートですからあまり経営のどうのこうのって言える立場じゃないですけど、次いでだから言っちゃいます。私、前から思ってるんですけど、今までのお客さん、こんなこと言っちゃ悪いですけど、あまり好きなお客さんは、たくさんいません。どちらかと言うと嫌いな方が多いぐらいです」

その言葉を聞いても女将さんは驚かなかった。
「だってみんな偉そうにしてるだけで、それってみんなお金がたまたまたくさん持ってるからっていうだけのことでしょ。だいたい偉そうにしている人はそうなんですよね。たまにはそんなこと鼻にかけない勝呂さんみたいなお客さんもいますけど、少ないですよね。それにそんな人に限って会社の景気が悪くなるし………。ですから、私ならそんな人をもう相手にしないで、もっと、なんて言うか、この千樹を愛してくれるお客さんを相手にした方がいいんじゃないかって、そう思います。かといってじゃあどんなことをすればいいか、今すぐにはちょっと何とも言えませんけど。やっぱり働いている私たちも、できたら喜んで働きたいし、そしたらその笑顔がお客さんにも伝っていくんじゃないかしら、そう思うんですけど。すいません、えらそうなこと言って」

「いや、その通りだよ、内田さん。ぼくもうんざりなんだよね、ホントは。何かお金にお辞儀しているみたいで。やっぱりお辞儀はお客さんにしたいよね」
社長も今まで感じていたのか、その言葉に大きく頷いた。

「私も内田さんに大賛成です」と声を出したのは、その内田さんの下で働いている中居の篠原さんだった。


<4>へつづく。
(このストーリーはフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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異業種をMR

2011-06-15 08:34:54 | 読んだ本から
こんにちは。
前橋の販促経営コンサルタント、藤田です。
今日もよろしくお願いします。



▲昨日わが家から見た夕景です。雲が多く、その中で夕陽が輝いていたので、思わずデジカメを持って外に出てしまいました。明日の晴を予感させる夕景でした。
風が北風になり、乾燥してきたのか、散歩していてもさわやかな風がむき出しの腕を撫でていきます。
夜になると、時たまピューと窓越しに聴こえる風の音はまるで冬の季節風のような感じでした。

そして今朝、やはり晴れましたが、すぐに雲が多くなってきました。

さて、と。
今日は何の話題にしようかな。

「MBAの称号を取得している人間よりも、屋台のラーメン屋さんから学べることの方が多い。」
これは私がひそかに、そして勝手に尊敬している現日本マクドナルドCEOの原田泳幸さんの本「ハンバーガーの教訓―消費者の欲求を考える意味 (角川oneテーマ21)」の中に書かれている言葉です。

要は、耳学問よりも現場力だ、ということですね。

私自身も感じることですが、どんなに本を読み、どんなにそれが優れていることが書かれてあっても、それを現場に持っていって実践するのは容易なことではありません。しかし、同じことが現場からもたらされたものであれば、すんなりと他の現場にもおさまることの方が多いようです。
もちろん学問や本を否定するわけではありません。
私もどちらかと言うとこちらに近い人間ですから。

しかし現場から上がってきた事柄を元に書かれたものや理論は、もともと実践されたものであるので、しっくりするということはあります。

私もかつては30年以上も、地方の広告業界にどっぷりと浸かってきましたので、それはよく分かります。
また一貫して私が働いてきたのが地方でしたので、中央での広告戦略などを聞かされても、地方ではまったく絵に描いた餅でしかないものたくさんありました。
しかし、クライアントにもたらされる情報は、ほとんどその中央経由です。

地方で行う広告戦略とはギャップがあると説得しても、なかなか受け入れてもらえないことも多くありました。
その割には予算だけはまったく地方でも超僻地のような予算しか出さないのに、中央と同じようなものができるだろうという、要求もけっこうありました。
その度にジレンマがあり、そっちの業界とこっちは違うんだよって、ひそかに悪態をつかざるを得ないようなこともありました。

それは中央への憧れを胸に隠しながらの、寂しい悪態でしかなかったのですが、今から思うと。

なんだか愚痴になってしまいましたね、今日は。
そんなことをいうはずじゃなかったのに、変なことに話がそれていきました。


話を元に戻しましょう。

経営の上部に行けばいくほど、現場をたくさん見てほしいということを本当はいいたかったんです。
さらには自分たちの働く現場以外にも、もちろん同業社の現場、さらにはまったくの異業種の現場も、時間をわざわざとって、見ることが必要です。特に異業種の現場を見ると、そこには思いがけないようなヒントがたくさんあります。そしてそのヒントをヒントとして感じることができるのが、経営に近い人ほど敏感だということです。

チェーンストア業界には『MR』という言葉があります。
マーケット・リサーチ、ですね。要は競合店を見るということです。

たいていのチェーンストアでは、バイヤーや担当者にわざわざ時間をとって、よその店を見にいかせます。そしてどんな発見があったのか報告させます。

しかしたいていのMRではそれでおしまい。ちょっとしたヒントを自分の現場に活かすのがせいぜいですね。
なぜか。それはMRする人間に経営の意識が希薄だからです。経営よりも自分の担当している部門と比較するだけにとどまり、自分よりも優れたことをしていると感じた運営を真似るだけとか、ちょっと自分なりに工夫するとかぐらいです。

しかし部門担当者としてはそれでMRの異議は達成されたと言えます。それでいいんです。
経営者かそれに近い人が、その報告を読んで納得する。それでMRは完結になります。
現場が少し変わるだけ。

トップのMRはそれではいけないでしょう。

同業種、競合店をMRするのは担当者の仕事にして、トップはできるだけ異業種を中心に見るようにしましょう。

異業種を見ることで、思わぬ発見があり、啓発があり、アイデアが湧いてきます。
何も感じないというのなら、それは早く経営者をやめた方がいいでしょう。
できるだけ好奇心を持って、異業種をMRしてください。

それでは今日はこれで。


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藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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