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新型コロナにBCGの効果は訓練免疫

2020-05-19 10:23:28 | 健康・医療
結核の予防接種である「BCG」が、新型コロナに対する抵抗力を高めているのではないか、という研究が注目を集め、このブログでも紹介しました。

この効果について新たな「訓練免疫」という概念が提唱されています。前回書きましたように、BCG接種とコロナの感染者数や死亡者数は、偶然の一致というよりははるかに良い相関をもって効果が出ていますが、この理由はうまく説明されていません。

これまでもBCGを接種した子供は、感染症の死亡率が低い傾向が見られたり、幼児期のBCG接種が成人期以後の肺ガンのリスクを下げたり、膀胱ガンの進行を抑えたりするという効果を各国の疫学研究者が報告しています。

このメカニズムを解き明かすうえでカギとなるのが、2012年と2018年にオランダの研究チームが発表した報告で、BCG接種で自然免疫が強化されたことを示唆しています。

自然免疫は外来の病原体が侵入すると、常に同じ強さで働くというのが定説でしたが、2度、3度と感染を繰り返すとそれを記憶し、ある程度は強くなりそうだという事が分かってきました。

「自然免疫」は外から来た病原菌と最初に戦う免疫で、その情報を基にウイルスなどに個別に対応して強力に排除するのが「獲得免疫」です。ワクチンは獲得免疫を付けることが狙いで、自然免疫は常に初見で病原体と闘うと考えられてきました。

ところが実際にはBCGが自然免疫と獲得免疫の両方を活性化している可能性が浮上しています。オランダの研究チームは、BCGが自然免疫を強化する現象を「訓練免疫」という新たな概念で提示しました。

BCG接種を受けた人の血液に含まれる「遺伝子スイッチ」の状態を調べたところ、1回の接種で免疫細胞の活性化を狙う「サイトカイン」を分泌しやすくなるようなスイッチが入り、自然免疫がパワーアップした状態になることを突き止めました。

獲得免疫は自然免疫が強化されると動きやすくなり、そこに特異抗原が存在すると、特異的な獲得免疫が始動しやすくなるという事から、BCGがウイルスが存在する中では獲得免疫も動かした可能性があるようです。

オーストラリアやオランダでは、医療関係者らにBCGを接種して新型コロナの感染を防げるかどうかを確かめるための臨床試験が始まっています。

こういった訓練免疫の効果がどの程度あるかは分かりませんが、日本では感染者のほとんどはBCGを接種しているので、ワクチンほどの効果はないのかもしれません。

それでもBCGのような物質が、免疫を活性化するのであれば、新たな予防・治療薬開発の手掛かりとなるのかもしれません。


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