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女性ホルモンかく乱物質のメカニズムを解明

2021-11-08 10:20:20 | 健康・医療
九州大学の研究チームが、女性ホルモンである「エストロゲン」の受容体に結合してホルモンの働きをかく乱する有害環境化学物質の阻害メカニズムを解明したと発表しました。

この記事自身それほど興味ある内容ではないのですが、ここに出て来る「ビスフェノール」類は私にとって非常になじみある化合物です。私は最後に自分の手を動かして研究するために、企業研究所に行っていましたが、そこで高分子塗料の合成をやっていました。

その中で特に自動車などの電着塗料の主原料がビスフェノール類でした。これは構造的にもしっかりしており、高分子に組み込むと非常な強固な膜となります。私は自己析出型という特殊な塗料にこのビスフェノールを組み込み、新たな性質を持った高分子を研究していました。

こういった塗料はいわゆる下地塗装であり、表面には出ていませんのであまり環境に影響があるという発想はありませんでした。ここでビスフェノールが有害環境化学物質ということにやや驚いています。

ビスフェノールは融点もかなり高い個体ですので、空気中に浮遊することも無いはずですが、大量に使われていますので環境に影響するのかもしれません。

さて九州大学とアメリカソーク研究所の共同研究チームによる報告について紹介します。上述のようにプラスチックの原料であるビスフェノールAは有害環境化学物質の1種であり、エストロゲン受容体に弱く結合することが知られています。

研究チームもこれまでビスフェノールAFやCが、2種類あるエストロゲン受容体のうちα型を活性化して、β型を阻害することを報告していましたがそのメカニズムは不明でした。

今回の研究では、コンピュータを用いたドッキングシミュレーションからビスフェノールAFやCは、エストロゲン受容体β型が転写作用を発揮するときに結合する転写因子の結合を阻害する、転写因子結合阻害剤であることが予測されました。

これを受け変異体を用いた実験を実施し、実際にこれらの化学物質が転写因子結合阻害剤として働くことを確認しました。

研究チームによれば、今回の成果は女性ホルモンを阻害することだけに目を向けられていた、化学物質が複雑な作用を示すことを裏付け、新たな視点を与えることができたとしています。

こういったエストロゲンの阻害剤は、乳ガンの治療薬として可能性がありますので、α型も阻害する類似物質を見つければ、転写因子結合阻害剤という新しいメカニズムの治療薬開発につながるのかもしれません。

ビスフェノール類は、有害環境物質として知られていないような多くの種類がありますので、乳ガン治療薬の探索というのは面白い研究となるのかもしれません。


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