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イモリの再生能力を追う

2018-06-18 10:43:24 | 自然
トカゲに似た両生類のイモリは、脚やあごがちぎれても元に戻り、心臓や脳、目の一部を切り取っても再生する能力を持っています。

この能力は他の動物と違って、大人になっても低下しませんが、その仕組みは長らく謎のままでしたが、筑波大学など日本の研究チームで少しずつ明らかになってきました。

私はもう20年以上前ですが、当時イモリ研究の第1人者である九州大学の先生からいろいろ話を聞いたことがありました。この先生は特に眼球の再生に注目し、ヒトの網膜への応用を研究されていました。

私は再生医療という観点から自然の再生能力の高いイモリの話を聞いたのですが、どうもイモリは老化しないようだという話になりました。そこでイモリの寿命を聞いたところ、一般には数年といわれているようですが、先生が飼育しているイモリは30年近く生きているというのが印象に残っています。

さてイモリの話ですが、両生類の多くは子供(幼生)のころは高い再生能力があるものの、変態して体の仕組みや姿形が変わるとその能力を失ってしまいます。例えばオタマジャクシは生えてきた脚を切っても元に戻りますが、カエルになるとこぶのような肉の塊ができるだけとなります。どうもイモリだけが特別で大人になっても何度でも再生できるようです。

イモリの足を切ると、イボのような「再生芽」がまずでき、そこから新しい脚が生えてきますが、外見の変化は大人も子供も同じですがその中で起きていることは大きく違うようです。

子供のイモリの体には、幹細胞という特殊な細胞がありいくつかの種類があります。それぞれ筋肉や骨など決まった種類の細胞となりますが、こういった幹細胞が傷口付近に集まって筋肉や骨などの決まった細胞に変わり脚が再生します。オタマジャクシもほぼ同じ仕組みとされています。

ところが大人のイモリでは幹細胞の役割少なく、筑波大学の研究グループは、遺伝子改変技術で筋肉の細胞に目印をつけて調べました。切断部分付近では、多数の核を持ったチューブ状の筋肉の細胞が変化してバラバラになり、成熟していない細胞に変化しました。

これは「脱分化」と呼ばれる現象で、この脱分化した細胞が再生芽に移動して増殖し、これらを材料にしてチューブ状の筋肉の細胞ができてきました。切断という刺激をきっかけに遺伝子の働きが変化し、脱分化が起きた、つまりiPS細胞と似たような現象が起きるようです。

先行する網膜の研究では、再生に関係する遺伝子が特定されつつあり、研究グループはPax6という遺伝子が網膜の再生に欠かせないことを突き止めています。また最近では再生と特殊な赤血球の関係も報告されています。

こういった研究が哺乳類などに応用するには大きな壁があるようですが、再生医療という観点からも面白い研究と思われます。


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