ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

100%生分解可能なスニーカーを作製

2021-08-26 10:25:45 | その他
最近は環境に配慮し、資源を無駄にしないという「サスティナブル」という言葉が注目されています。その一環として「生分解性」という性質が非常に優れたもののように取り扱われています。

自然の素材のみで作られたスニーカーが生まれたというニュースを見ました。これはスニーチャーと呼ばれる靴ですが、ソールは天然ゴムと菌糸体が使われ、アッパーは犬の抜け毛で紡いだ糸を、オンデマンド編み機で立体的に編んでいます。

作者はドイツのデザイナーですが、クッション性と通気性、それと伸縮性と耐水性、断熱性能も備えているものです。このスニーカーを詳しく紹介するのが目的ではありませんので、この程度にしておきます。

このスニーカーは100%生分解性を謳っていますが、生分解性がそれほど重要なものでしょうか。生分解性とは自然界に住む微生物によって、資化・分解されることで、天然資源というのはすべて生分解性となっています。

現代においてプラスチックが便利なものとして登場し、これが微生物によって全く分解されないことが、当初はメリットとして広く使われてきました。

近年このプラスチックが海に流出し、マイクロプラスチックとなって海洋生物の生態系に悪影響を及ぼすようになり、プラスチック削減が一部で推奨されています。またプラスチックの処理は燃やすしかありませんので、この時の二酸化炭素放出も問題となっています。

このような問題が入り組んでおり、複雑な状況がプラスチック削減となっているようです。もし海洋に流出しているプラスチックに生分解性があれば、マイクロプラスチックの問題は生じないかもしれません。

しかし微生物によって緩やかに分解されても、結局炭素は二酸化炭素となって放出されます。つまり生分解性は二酸化炭素削減にはならないのですが、どうもこの辺りが誤解されているような気がします。

プラスチックをすべて生分解性のものに置き換えたとして、10分で燃焼させるとすべて二酸化炭素となります。これを微生物を使って1年間で分解したとすると、その時に出る二酸化炭素の総量は、10分で燃焼させたときとほぼ同じになるはずです。

そもそもプラスチックによる海洋汚染は、ヒトが川や海に捨てることによって生じるものです。つまり人災であってプラスチックが悪いわけではありません。それなのになぜプラスチック削減運動となるのでしょうか。

プラスチックを紙袋に代えても、同じ重さであれば(紙の方が重くなりますが)、生分解であれ燃焼であれ、排出される二酸化炭素はほぼ同じはずです。

地球にやさしい天然資源という言葉は、単なるイメージであり実質は何もないといえるでしょう。

放置すると重症化する「鼠径ヘルニア」のはなし

2021-08-25 10:25:31 | 健康・医療
今では「鼠径ヘルニア」ということをあまり聞きませんが、昔は脱腸といわれかなり多かった気がします。

それでも日本には年間推定13万人の患者がいるようですので、かなり一般的なのかもしれません。鼠径ヘルニアは大腸や小腸、卵巣、膀胱などの臓器が、腹部筋肉の隙間から皮膚の下に飛び出してしまう病気です。

下腹部と太ももの境目にあたる鼠蹊部にふくらみができて見つかる場合が多いようです。三つの筋肉が重なっている鼠蹊部には、筋肉の隙間ができやすくなっています。

重いものを運ぶなどして腹圧がかかったり、加齢で筋肉量が落ちたりすると、隙間から腹膜が出てきて臓器が飛び出してきます。患者の8割以上が男性で、自然に治ることはありません。立ち仕事の多い人やおなかに力を入れることが多い肥満気味の人よく咳をする人が要注意です。

最初のうちはお腹に力を入れると飛び出し、力を抜いた時や指で押すと引っ込みます。仰向けに寝たときも臓器が背中側へ動くので元に戻り、ふくらみがあまり目立たないこともあるようです。

しかし放置していると次第に膨らみが大きくなり、痛みも出てきて日常生活に支障が出てきます。悪化すると飛び出した臓器が周囲の筋肉に締め付けられて元に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という状態になり、血流が妨げられて組織が壊死してしまうことがあります。

腹部にかなり強い痛みが出て、嘔吐などの症状が現れ、緊急の手術が必要になります。手術は隙間をナイロン製の医療用メッシュでふさぐのが一般的で、最近は腹腔鏡による手術が増えています。

腹部に小さな穴を3カ所開け、そのうちのひとつから腹腔鏡を入れて観察しながら、他の穴から入れた手術器具で腹膜を切り体の内側からふさぎます。開腹手術にくらべて切開する部分が小さく、身体への負担も少ないとされています。

隙間が小さい人や妊娠出産の予定がある人は、メッシュを使わず隙間を縫い合わせて閉じることもあります。ほかに腹膜を切らずにメッシュを入れる方法などもあるようです。

1か月ほど静養すれば運動も可能で、発症前と変わらない生活ができるようになります。ただし確率は低いものの、腹腔鏡手術も回復手術も生殖機能が失われるリスクが伴うとされています。

以上が鼠径ヘルニアの概要ですが、発症初期はほとんど症状がありませんので、若干の違和感程度のようです。前述のように自然治癒することはないようですので、気づいたら早めの受診が必要な病気といえそうです。

核酸医薬を脳内に効率よく到達

2021-08-24 10:25:37 | 
東京医科歯科大学の研究チームが、細胞内の特定の遺伝子に直接作用する「核酸医薬」を脳や脊髄内の神経細胞に直接届ける手法を開発したと発表しました。

神経難病の治療には、神経伝達物質やホルモンのように働いたり、逆にこれらの働きを抑えたりする役割を果たす「低分子薬」が使われてきました。しかし症状を抑えたりする対症療法にはなるものの、根本的な治療はできませんでした。

近年は病気の原因となる細胞の表面にあるタンパク質にだけ結合して阻害する「抗体医薬」や、タンパク質を作り出す細胞内遺伝子を調節するDNAやRNAを人工的に合成した核酸医薬によって、根本治療につながることが期待されています。

しかし血管と脳の間は「血液脳関門」と呼ばれる脳血管内皮細胞で隔たれており、小さい分子や特定の栄養分は通過できますが、既存の抗体医薬や核酸医薬は分子が大きく通過できませんでした。

このため脳内の神経細胞に届けるには、患者の負担が大きい脳脊髄液への注射が必要で、神経難病への応用が課題となっていました。私のように創薬研究をしていると、膜の透過性は非常に大きな問題となっていました。

私が一時取り組んだのは、抗生物質の中にアミノ糖系と呼ばれる非常によく効く種類があるのですが、これが全く腸間膜を通過しません。つまり飲んでも吸収されず注射しか投与法がないのです。

そこで体内で外れるような物質を結合させ、腸から吸収されるような変換を試みたわけです。それほど長期間やったわけではありませんが、それでも10%ぐらいは吸収されるものを作ることができましたが、このくらいの吸収率では薬として使うことはできず断念しました。

さてこの研究チームは、核酸医薬をDNAとRNAを組み合わせた2本鎖で設計しました。そこに脳関門に取り付いて侵入しやすいコレステロールを結合させることで、通過させられることを発見しました。

マウスを使った実験では、静脈内に投与すると、脳内の各部位で狙った遺伝子の発現を70〜95%抑制することができたようです。

従来の核酸医薬は、DNAかRNAのいずれかの1本鎖か、RNA2本で構成されていました。研究チームが開発した2本鎖の核酸医薬は、細胞内に入ると標的の遺伝子と結合し、切断して機能を失わせ従来より効率よく作用しました。

例えばアルツハイマー病では、原因とされる異常タンパク質が神経細胞内に蓄積し、脳細胞が死滅して発症するとされています。この異常タンパク質を作り出す遺伝子を壊せば、発症の抑制や症状の改善につながる可能性があります。

ただし今回の研究成果は、核酸医薬という膜を通過しない物質を入れることができたという基礎的なものですので、これをどう治療に使うかは今後の課題と言えそうです。

世界と比較した日本のコロナの現状

2021-08-23 10:28:58 | 時事
日本での新型コロナの感染者数は、ピークが見えない状況が続いていますが、世界でも猛威を振るっているようです。

政府も緊急事態宣言やまん延防止措置を拡大していますが、結局ワクチン頼みの感がぬぐえません。日本のワクチン接種は、厚生労働省による認可の遅れが影響し、G7の中でも遅れていると感じます。

世界各国の新規感染者数、新たな死亡者数、ワクチン接種率などの比較データから、日本の状況を考えてみます。

まずワクチン接種率ですが、アメリカ51.4%、イギリス60.9%、フランス53.0%、イタリア57.4%、ドイツ57.5%のなかで日本はまだ37.9%となっています。

アメリカでは3回目の接種が始まろうとしていますが、日本では今月中に国民の半数が、来月中に6割が2回の接種を終える見通しとされています。

こういった中で、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は以下のようです。アメリカ290.3人、イギリス306.4人、フランス246.8人、イタリア71.8人、ドイツ39.2人であり、日本は92.2人となっています。

これを見ると一時いわれていた、ファクターXにより日本は感染者が抑えられているという説は、もう当てはまらないような気がします。

一方新規感染者のうちどれくらいの人が亡くなっているか、すなわち新規感染者に対する新規死亡者の割合を見ると、G7を始めとする主要国との比較で、日本は低い水準に抑えられています。

直近1週間の新規死亡者数の割合は、アメリカ0.49%、イギリス0.32%、フランス0.33%、イタリア0.55%、ドイツ0.29%に対して日本は0.12%となっています。

この数値は8月18日時点ですが、ワクチン接種が世界で最も進んだといわれるイスラエルで0.29%と、日本の倍以上の数値を示しています。この「新型コロナによる死亡率」が日本では低い水準になっている背景には、いくつかの要因が考えられます。

まず高齢者へのワクチン接種が進んでいるという可能性もありますが、これは各国あまり差がなさそうです。最近メディアでは医療崩壊的な報道が多いのですが、やはり日本の医療体制が世界でもトップクラスというのは確かなようです。

自宅療養者の急増が報じられていますが、医療を必要とする患者には何とか適応できているといえるのかもしれません。ただし日本の医療体制が逼迫し、危機的状況が続いているのも確かのような気もします。

この「0.12%」という低い水準を維持するためには何が必要かを考える時期と言えるでしょう。たぶんパラリンピックは予定通り開催されるので、新規感染者を抑えるのはさらに難しくなってきそうな気がします。

このまま1日2万人を超える感染者が出ているようでは、この0.12%を下げるどころか徐々に上がりそうな気もしています。


認知症の40%は予防が可能

2021-08-22 10:26:00 | 健康・医療
このブログでも認知症をよく取り上げていますが、私の周りでも多く歳をとると最も気になる病気のひとつです。

私の母は80歳前後で発症し、自宅で介護していましたので詳しく経過を見ていました。母は89歳で亡くなりましたが、こうした人格が徐々に壊れていく経過を見ていると、本当にかかりたくない病気といえます。

現在の日本では2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると推測されており、その治療・ケアは社会の大きな課題となっています。根本的な治療法がない現状で、認知症をいかに予防するのかという問題は、世界中で注目されている研究テーマです。

世界的な医学誌の国際委員会が2020年に「認知症の12の危険因子」を発表し話題になりました。私は認知症特にアルツハイマーは、アミロイドの蓄積によって起こるのであれば、特に予防法や危険な因子があるとは思いませんが、紹介します。

認知症の予防には、1.発症を防ぐための「一次予防」、2.早期診断により進行を遅らせるための「二次予防」、3.認知症になっても住み慣れた地域で役割を果たし、自分らしく暮らせるための「三次予防」という3段階の考え方があります。

この国際委員会のレポートでは、認知症の40%ほどは修正可能な危険因子によるものであり、それら12の危険因子を改善することで理論上は認知症のおよそ40%が予防可能としています。

危険因子は45歳未満では「教育不足」、45〜65歳では「難聴」「頭部外傷」「高血圧」「過度の飲酒」「肥満」、66歳以上では「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「大気汚染」「糖尿病」を挙げています。

12の危険因子のうち、予期しにくいものや環境的なものを除くと、主に生活習慣病に関わるものとなっています。

高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病が危険因子になることは分かっているため、まずは生活習慣を改善してこういった病気を予防する事、あるいは病気が分かった時点で適切に治療することが重要としています。

その他も科学的根拠に基づいた認知症発症リスクの軽減について多くの研究が行われてきました。2009〜2011年にかけてフィンランドで行われた「フィンガー研究」があります。

高齢の人の生活習慣に介入することで、認知機能障害を予防する可能性を調べる研究で、1260人の高齢者を対象に食事指導、運動指導、認知トレーニング、生活スタイル指導が行われました。

その結果介入によって軽度の認知機能障害の進行を抑制することが可能であることを証明したのです。

確かに私の義父は車の運転をやめさせたところ、認知症が急激に進行したことがありますが、生活習慣病が認知症と関連があるというのはあまり納得できない気がします。