ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

酒は害があるのか、アルコールと認知症との関連

2022-11-20 10:32:19 | 健康・医療
私の周りでは母や叔父さんなど認知症となった人を多く見てきました。

古くからの友人のS君が数年前から認知症の兆候が出ており、心配していたのですが最近電話で話すことがありました。通常電話のような刺激があるとしっかりするものですが、S君は数字をメモすることができていないようでした。近々お見舞い?に行ってみようかと思っています。

この認知症についてアルコールとの関連についての意見が出ていました。身体に害を及ぼすものとして良くタバコが取り上げられますが、脳に限っていうとアルコールはタバコより害があるというのが基本のようです。

喫煙者は認知症になりやすいといわれるのは、タバコに含まれる有害物質が血管を傷つけ生活習慣病を悪化させるためで、脳に間接的に悪影響を及ぼすとしています。

アルコールはダイレクトに脳に影響します。精神活動を活発にする大切な物質としてアセチルコリンがありますが、アルコールはこの働きを低下させ、記憶系を障害するという結果が動物実験で出ています。

副次的な影響もあります。コロナで酒類提供の自粛要請が出された期間、自然とアルコール摂取量が減り、気が付いたらやせていたのが、それが解除されてまた体重が増えたというような例があるようです。

これはアルコールのカロリーというよりは、アルコールと一緒に取る食事が問題です。酒を味わいながらだと何時間も飲んで食べてしまい、塩分や脂肪、糖分の摂取量が増え栄養バランスも偏りがちになります。偏った食生活はビタミンやミネラルの不足を招き、その結果副次的に脳へ影響を与えます。

アルコールは睡眠の質も悪化させます。寝つきこそいいものの、アルコールの入眠作用は数時間で切れ、代謝物質のアセトアルデヒドの覚醒作用で深い眠りが減り浅い眠りが増えます。またアルコールは利尿作用があるので、夜間に尿量の多い状態「夜間多尿」を招きます。

睡眠の質の低下は認知症を起こしやすくすることは、研究で明らかになっています。アメリカで行われた大規模研究で、60歳の脳を酒を飲むかどうかで萎縮具合を調べています。すると酒の量に比例して、萎縮が増えていることが分かりました。

アルコールの害についてあまり言われてこなかったのは、アルコールが身体に与える影響がタバコと肺ガンの関係ほどストレートではなく、医学的なエビデンスが弱かったからのようです。実際少量飲酒は認知症予防に有効だというデータも過去には発表されています。

ただしここでは物忘れが気になるっている様なら、まずは酒をやめることが良いとしています。これは認知症とアルコールの関係についてのやや偏った見方のような気がします。こういった意見もあるという程度で、あまり気にする必要はなさそうです。

最新研究で分かった「生まれと育ち」の残酷な事実

2022-11-19 09:32:50 | 自然
子供の将来にとって「生まれと育ち」はどちらが重要なのかという問題は、古くから研究されています。

昔は一卵性双生児の研究により、遺伝と環境の問題をいろいろ調べていました。2016年以降、遺伝と学歴に関する研究が急速に進んでいるようです。学習能力や学力は客観的に把握できませんので、ここでは最終学歴を能力の代わりに使っています。

行動遺伝学における遺伝研究の中心的手法は双生児法でした。双生児法によってどんな能力についても、遺伝の影響が50%はあるということが明らかになっています。

また体重の遺伝率は90%以上だということは分かっていますが、これは環境を変えても体重を変えるのは一般的には難しいということを示しています。しかし個人にぴったり合ったダイエット法に出会って、体重が劇的に減ることはあり得ないとまではいっていません。

2000年代初頭には、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法が登場しました。GWASは異なる個人間のゲノム全領域について、遺伝的な変異のある場所と表現型との関係を調べるというものです。

それを使って「こういう遺伝的変異があると、表現型にこのくらい影響がありそう」ということをポリジェニックスコアという点数で表します。

病気以外の表現型についても、GWASで明らかにしようという試みは行われていましたが、2016年くらいまではあまり成果が上がっていませんでした。

ところが学歴に影響を与えていうと思われるSNP(スニップ、一塩基多型)がいきなり1200個以上も見つかり、SNP一つひとつの効果量は微小なものですが、足し合わせると12%にもなったのです。

つまりゲノム検査の結果によって、個人レベルの学歴について10%以上まで説明可能になってきたということです。世界各地にはゲノム情報とともに各種の身体的・生理的特徴、生体サンプル、生活状態などの情報を大規模に収集しているバイオバンクと呼ばれる研究事業があります。

こうしたデータベースには学歴も基本情報として登録されており、それらを合わせると100万人以上のデータになります。さらに2022年の最新の論文では、サンプルがさらに300万人に増え、その説明率は16%にまでなっています。

注目を集めたのはアメリカの行動遺伝学者の研究で、簡単にいえば遺伝的なポリジェニックスコアが高いほど良い学歴となっているという結果です。ここでは社会経済状況などを考慮しても、ポリジェニックスコアの高い生徒は難しいトレーニングに取り組むとしています。

現在のところポリジェニックスコアによる効果量は16%程度で、私の感覚としては個々のばらつきは大きいような気がします。ここでは将来赤ちゃんの時に遺伝子検査をすれば、最終学歴の予想が付くというような結論となっています。

これはあくまで行動遺伝学者の意見であり、私は環境の影響も大きいと思っていますが、赤ちゃんの将来予想を遺伝子でできる世界はあまり良いとは言えないような気もします。

生分解性プラスチックの原料合成技術

2022-11-18 10:36:04 | 化学
プラスチックは身近で有用なものとして大量に使用されていますが、海洋のプラスチック汚染問題などが出ており、レジ袋有料化など本質と無関係なほとんど意味のない対策が行われています。

このプラスチックの問題は、分解されるまでに非常に長時間かかることも一因であり、天然で分解される生分解性プラスチックが注目を集めているようです。

大阪公立大学は2022年9月に、太陽光と炭酸ガスを利用して生分解性プラスチックの原料である3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功したと発表しました。現在生分解性プラスチックの原料の中では、特にポリヒドロキシ酪酸(PHB)が注目されています。

このPHBは3-ヒドロキシ酪酸を重合することで得られる物質で、水に不溶で強度のあるポリエステルとして包装材などによく使われています。

大阪公立大学の研究チームは、再生可能エネルギーである太陽光と地球温暖化の原因の1つとなっているCO2を活用して合成することができれば、CO2を削減しながら生分解性プラスチックを作る方法となり、地球のプラスチック問題と地球温暖化の問題の両方に貢献できると考えました。

その結果太陽光を利用した光酸化還元系と2つの酵素を組み合わせて、CO2を結合させたアセトンから約80%の高収率で3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功しています。

具体的には光合成細菌中にアセトンカルボキシラーゼ(AC)と3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)という2種類の酵素を発現させ抽出し、色素と触媒で構成される光酸化還元系に加えた結果、CO2とアセトンを結合させACの働きでアセト酢酸を生成し、それをHBDHの働きで3-ヒドロキシ酪酸に変換することができました。

しかし残念ながら私はこの反応はあくまでの実験室での成功であり、企業化することはできないと思っています。まずポリエステルなどが包装材に使われる理由は安価であることが最大の要因です。

今回開発された原料の合成法は、色々メリットがあるものの多くの問題があり、決して安価に製造できる工程ではありません。確かに原料としてはアセトンとCO2という安価なものですが、使用する2種の酵素を細菌から取り出すのにかなりコストがかかってしまいます。

さらにこういった酵素反応を行うには基質濃度(原料)を高くすることができません。多分石油化学であれば、1トンの反応器で300キロ以上の生成物ができますが、こういった酵素反応では数キロもできないでしょう。

これだけを見てもこのプラスチック原料は石油化学の100倍以上のコストがかかってしまうのです。実は私は有機合成に酵素を使うという研究をかなりやっていました。

この記事を書いて当時を思い出しましたので、そのうち昔話を書いてみます。

インフルエンザ流行の季節、今季は大流行するのか

2022-11-17 10:34:12 | 健康・医療
気温も下がっており、インフルエンザが流行するシーズンとなってきました。ここ2年間はほとんど流行することがありませんでしたが、今季はどうなるでしょうか。

まずここまでの感染者数を見ていきますが、時事通信がまとめた詳細な表が出ていました。ここには10月の1週から4週と11月1週の過去5年間の患者数が出ています。

10月の1週から4週までは流行した2018年では約1000人、19年は4000人であったものが、流行の無かった20年21年では10人程度で今年は100人近くになっています。直近の11月第1週では、2018年が1029人、19年が4682人、20年が32人、21年が23人で、今年は270人と若干増加していることは確かです。

コロナ禍となった2020年、21年は感染対策や海外からの流入が無かったため、ほとんど流行しなかったと分析されています。今年度はすでに学級閉鎖が出たり、海外での大流行などからコロナとインフルエンザの同時感染も懸念されているところです。

専門家によると過去2年間流行が無かったため、免疫力の低下が懸念されるとしていますが、これはおかしな意見と言わざるを得ません。一般にワクチンによって免疫を獲得すれば、その効果はほぼ一生続くものがほとんどです。

またコロナワクチンで感染予防ということが強く叫ばれていますので、感染予防効果があると誤解が広がっているような気がします。あくまでも免疫システムの構築は、重症化の予防(すぐに治る)であって感染予防ではありません。

インフルエンザワクチンを毎年接種するのは、インフルエンザウイルスの変異が激しく、抗体認識部位まで変異してしまうためという特殊事情があるのです。

私のような高齢者になれば、生きてきた70余年の間にほとんどのインフルエンザの型に感染している可能性があり、すでにどんな型にも対応する免疫は確立しているはずと思っています。

しかし現実は高齢者ほどワクチン接種に積極的であり、本当に必要な若者が接種していないというおかしな現象が起きています。少し話は変わりますが、感染力の強いウイルスが存在すると、他の感染が起きにくくなる「ウイルス干渉」という現象があります。

現在コロナの第8波が来そうな状況ですが、感染力の強いコロナウイルスが広がればこのウイルス干渉によってインフルエンザの流行規模は小さくなる可能性は高いような気がします。

繰り返しになりますが、コロナワクチンは4回、5回と多重接種を進めていますが、これでコロナの感染者数が減少しないことは明らかで、ワクチンで感染予防ができるということは幻想にすぎないと証明されているような気がします。

インフルエンザワクチンも高齢者ではなく、若者に接種を進めるような施策が必要ではないでしょうか。

「複雑系科学」によって人間の意識を解明できるのか

2022-11-16 10:44:29 | その他
人類の文明の数千年の歴史の中で、近代科学はわずか数百年ですが素晴らしい成果や業績を上げています。

それでも近代科学には限界があり、人間の「意識」についてその本質を明確に説明できていないという指摘があります。その理由として現代の科学が、「唯物論的科学」だからであるとしています。

すなわち現代の科学は、この世界の本質は「物質」であり「生命」や生物も「意識」や心や精神もすべて、物質が複雑な物理的・化学的な相互作用を生じた結果生まれてきたものであるという立場、すなわち「唯物論」に立っているとしています。

これは言葉を換えればすべてを「物質」の性質で説明する「物質還元主義」の立場であるとも言えます。

その結果「唯物論的科学」は、「意識」というものもすべて物質が生み出したものであるとする立場に立ち、意識や心、精神というものも人体の中の「脳」という部位の神経細胞が起こす化学的・電気的な相互作用によって生まれてくるという立場に立っています。

私はここでいう物質還元主義にどっぷりつかっており、これを否定するものではありません。この唯物論的科学は、肉体が消えれば意識も消え、死後に意識が残ることはない、従って「死後の世界」などないとの明確な立場に立っています。

多くの人は現代の科学のこの考えを「絶対の教義」のように受け入れてしまっています。この理由は現代においては「科学」が最大の影響力を持つ宗教になっているからとしています。しかし現代の科学はすでに何十年も前から限界に直面しているようです。

現代の科学が直面するのは、「要素還元主義」の限界です。この要素還元主義とはある対象の性質を理解するためには、まずその対象を小さな要素に「分解」し、それぞれの要素を詳細に分析し最後にそこで得られた分析結果を「統合」すれば、その対象の性質がすべて解明できるという考えです。

しかし近年その限界が明らかになってきたことから、新しい科学手法として「複雑系科学」が注目されているようです。この複雑系科学がどんなものかは、現在の唯物論的科学を否定するものとしか記載がありませんので良く分かりません。

どうもかなり宗教的意味合いが強いように感じました。科学と宗教というと相対するもののようになっていますが、現代はそれが近付いているような気がします。科学は実験結果に基づく考察ですが、宗教は人の考えに基づく行動といえます。

ここで宗教論を述べるつもりはありませんが、科学が宗教の教義を解明しつつある時期といえるような気がします。

たぶんここでいう「意識」の問題も脳科学が進展すれば、唯物論的科学で十分説明できる時期は来ると考えています。