内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

フランス国民議会選挙結果 ― 政局混迷の長期化は必至

2024-07-08 05:59:04 | 雑感

 今回のフランス国民議会選挙(下院、定数577)は、6月上旬の欧州議会選挙での極右政党「国民連合」の大躍進と与党連合の大敗を受け、その直後のマクロン大統領による「暴挙」と側近からも批判された国民議会解散宣言から、連日全メディアが情勢分析報道を長時間にわたって続けるなど、これまでにない注目を集め、今月26日に始まるオリンピック・パラリンピックなどすっかりその陰に隠れてしまった。
 飛ぶ鳥を落とす勢いの極右政党の政権獲得が現実味を帯びていたのだから、国民の注目度が高かったのは当然だが、結果としては、すでに日本の各紙も報じているように、左派連合「新人民戦線」が最大勢力となる182議席を獲得、ついで与党連合が168議席(解散前250議席)、「国民連合」とその共闘勢力は143議席にとどまった。
 第一回投票の結果を受けての左派連合と与党連合との選挙協力が功を奏したわけだが、これで何が解決したわけでもない。この結果は、国民の政治に対する強い不満を背景に今や党としての結束力ではフランスでもっとも強固な「国民連合」の強い押しに土俵際まで追い詰められた与党連合が、与党・極右に対する批判勢力である政策的には相容れない左派連合となりふり構わず手を結び、いわば二人がかりリで極右ひとりを土俵中央まで押し返したということに過ぎない。
 むしろこれで、これからフランスがどちらに向かうのか、さらにわからなくなり、政局の混迷は長期化するだろう。そもそも大統領による首相指名とその首相による組閣からして、きわめて微妙なバランス感覚が求められ、一応組閣できても、閣内での意見調整は難航し、政策立案にもそれだけ時間を要するだろう。
 なんのことはない。その割りを食うのはまたしても国民である。
 国立の大学教員として国家公務員でありながら、「移民」である私にはフランス国籍はなく、選挙権も当然ない。だから6月からの政治的喧騒を、その結果によっては自分の生活にも直接的な影響があるかもしれないと恐れながらも、それに対して何もできないという無力感と居場所のなさを痛感しつづけてきた。それは、フランスに棲息するかぎり、これからも続く。