18日には「1周年です」という内容を書き込むつもりだったのですが、その日はPC立ち上げる余裕もなく、必死に「デーモン聖典」の妄想話を書いておりました・・・もう過ぎちゃっていることに気づいたのは⑦をUPしたときでした・・・。
とりあえず、自分で祝ってみよう!めでたい!ドンドン・パフパフ~
明日は阿鼻叫喚状態かと思われますので、土曜にじっっっくり「デーモン聖典」最終回について、叫びたいと思います・・・
3週間後。ウェザーヘッドの戻ることになった忍は、すぐにアメリカ行きの辞令を受け、慌しくニューヨークへ引っ越した。住居はリンデルツ家の別邸を使うことにした。ニューヨーク市中心部から車で1時間、緑豊かな郊外の町に、ウェザーヘッドの本部研究所と、リンデルツ家別邸はあった。その別邸から2キロほどしか離れていない一軒家をもなたちのために借りた。来週には彼女たちもやって来る予定だ。<o:p></o:p>
窓の外は整えられた庭だったが、わずかな月明かりでは、その美しい花々もほとんど見えない。<o:p></o:p>
忍は出窓に腰かけて、ぼんやり窓の外に視線を投げていた。<o:p></o:p>
「……忍」<o:p></o:p>
ドアが開いて、廊下の明かりが暗闇の部屋に射し込む。はっとして忍はドアの方を見やった。<o:p></o:p>
「どうした?明かりもつけないで」<o:p></o:p>
「いえ、なんでも」<o:p></o:p>
忍が降りようとするのを制して、ヘルムートはやはり電灯はつけないで、彼のもとへやって来た。ヘルムートは忍の横に腰かけた。<o:p></o:p>
「何を悩んでいる?」<o:p></o:p>
「悩んでいるわけでは……。これからどうなっていくのかと…考えていただけです」<o:p></o:p>
「後悔しているのか?」<o:p></o:p>
「……何を?」<o:p></o:p>
忍は、白く浮かぶヘルムートの顔を見やった。ヘルムートはいつも通りのほのかな微笑みを浮かべている。<o:p></o:p>
「君はりなを愛していたし、りなも君を愛していた。君は私が地球を破壊するのを止めるだけで、私とやり直したいなどと言わなければ、成長し始めた彼女がやがて成人すれば、彼女と結ばれただろうに?」<o:p></o:p>
「………!」<o:p></o:p>
パン、と思い切りヘルムートの頬を平手打ちして忍は、早足でドアにドアに向かった。<o:p></o:p>
「忍……!」<o:p></o:p>
ヘルムートに腕を掴まれ、彼の方を向かされる。<o:p></o:p>
「…どうして怒らないんです……!」<o:p></o:p>
「ああ、すまない。痛みは感じないし…君に感情をぶつけられるのは気持ちいいしね。昔の君は、私を嫌うばかりだったから」<o:p></o:p>
「……」<o:p></o:p>
力を抜いてうつむいた忍を、ヘルムートは抱き寄せた。<o:p></o:p>
「……そんな考えは、浮かびませんでした。確かに僕は、彼女がとても大切だった。愛していた…。だけどあのとき、僕はあなた以外のことは考えられなかったんです。……信じてください。僕はちゃんと、承知の上で、あなたとここにいるんです」<o:p></o:p>
「君にとっては、いろいろな人生や関係を捨てることをね。鎖持ちの我々は、独占欲の塊だから」<o:p></o:p>
赤龍の結界の中で、赤龍は忍に確認した。K2と彼が戦って彼が喰われれば、忍は彼から解放される。このチャンスは二度とないだろうと。<o:p></o:p>
「私は嫉妬深くて独占欲が強い。私を受け入れれば、私はお前をがんじがらめにするだろう。私以外を愛したり大切に思ってはいけない。つまり恋人を作ることも結婚することも、こどもを持つこともできない。それでもいいのか?」<o:p></o:p>
「……ああ。あなたはりなを殺そうとし、僕を殺そうと思った。でも、そこまであなたを追いつめて苦しめたのは僕だ。だから……覚悟している」<o:p></o:p>
そう忍は答え、彼らは結界を出て地球に戻ったのだ。<o:p></o:p>
「捨てるのではありません。それらよりもあなたの『聖典』であることを選んだだけです」<o:p></o:p>
「忍……」<o:p></o:p>
ヘルムートは、忍の頬にキスをして体を離した。<o:p></o:p>
「もう遅いから休みたまえ。ここのところ引越しや雑用で疲れているだろう?明日も仕事だし」<o:p></o:p>
「ええ。あなたは?」<o:p></o:p>
「私は片付けなければならない仕事が残っているので、このまま続けるよ」<o:p></o:p>
ヘルムートは、結局「ヘルムート」としてリンデルツ・グループ会長職を続けていた。「ヘルムート」がデーモンだったことを知っているのは、リンデルツ・グループの幹部の中でもさらに一握りの者と、SMIC新代表に就任したクロムウェル卿だけだ。<o:p></o:p>
ゾフィーからの提案は、赤龍には当分「ヘルムート」でいてもらうという、驚くべきものだった。<o:p></o:p>
「とにかく!リンデルツ・グループ主要15社のうち5社の役員を兼務して、グループ会長でもあるヘルムートが急死しましたじゃ、困るのよ!今は病気療養中ってことで私が代行ってことで何とかなってるけど、長引けばコントロールが効かなくなって、後継者争いで業績が落ちるのは目に見えているわ。それも痛手だし、何よりリンデルツ家が経営権を失うことにもなりかねない。それは絶対に阻止しなければ。そのためには、私が家督を継ぐまでの時間が必要なの。能力があるのならデーモンでも使うわよ!言ってる意味、わかるわよね、忍?」<o:p></o:p>
「え……」<o:p></o:p>
忍は隣りのヘルムートを見やった。ヘルムートは微笑みを崩さず黙って見返す。<o:p></o:p>
「しかし……」<o:p></o:p>
「10年でいいのよ。そうしたら私が引き継ぐわ。忍、あなたからヘルムートに言ってちょうだい。今更放り出すなんて無責任よ!」<o:p></o:p>
と言われても、行動原理が違うのだからしょうがないじゃないか…と迷う忍に、ヘルムートは言った。<o:p></o:p>
「君が望むのなら、構わないが。もっとも、リンデルツの権力を保持するというのは賛成だ。りなたちのことを考えるとね」<o:p></o:p>
「……いいんですか?」<o:p></o:p>
「退屈しのぎにはなるよ。君といる時間が減るのは不満だが、君が慣れるまでは少し距離をおいたほうがいいだろう」<o:p></o:p>
そんなわけでSMICの記念式典で代表交代が発表されてから、ヘルムートはまずは病床からのメールや電話により指示というかたちで仕事への復帰を開始した。ヘルムートが完全に会長職に復帰したら、ゾフィーは大学に戻るつもりだという。<o:p></o:p>
まるで昔に戻ったようだ。リンデルツ当主のヘルムート、学生のゾフィー、ウェザーヘッドに勤める自分──。けれど、まだ2年と経っていないのに、昔とは何もかも違ってしまった。自分はヘルムートが「ヘルムート」でないことを知っている。家族のように愛しく思った少女たちはいない。今、自分の傍らにいるのは、恐ろしくも哀しい生き物である「赤い龍」。<o:p></o:p>
「ヘルムート……?」<o:p></o:p>
休みたまえ、と言いながら、ヘルムートの両手は忍の肩を掴んだままだった。<o:p></o:p>
「忍……」<o:p></o:p>
ヘルムートが顔を寄せる。<o:p></o:p>
「……愛してるよ」<o:p></o:p>
彼は忍の口を唇で塞いだ。<o:p></o:p>
本当に自分が彼を愛せるのか、どんなふうに愛せるのかはわからない。だけど今、自分の不用意な言葉が彼を殺してしまうのが怖いと思うのは、彼に惹かれ始めている証拠だ。<o:p></o:p>
(忍、私は君が望むなら、君の死の瞬間まで待つと言った。君といる時間は至福の時だ。できる限り多くのこの時間と君の記憶が欲しい。だから君に無理に言わせたりしないから安心したまえ。だが、君が言葉を呑み込むのが苦しいというのなら、こうしてあげるよ)<o:p></o:p>
ヘルムートはその言葉を守って、愛していると告げても返答を求めない。言葉を封じるためというには長すぎる口づけを受けながら、ずっとこのまま封じられていたいと忍は願った。自分の生の最後の瞬間──死が彼と自分を分かつその時まで。
2007.6.20
だ…駄作!途中までは良かったんだけど、赤龍と忍の「ずぶ濡れラブラブシーン」を書いたら息切れしてしまった…特にこの最後の章はダメダメだぁ
うっかり書き始めたこの話、そんなに長くなるとは思わなかったけれど、終わってみれば400字原稿用紙換算で70ページ。ばかか、私は…
「デーモン聖典」最終回を目前に、今は判決を待つ被告か、処刑を待つ受刑者の心境です…読みたいけど読みたくないような…。どっちにしても、妄想する楽しみがひとつ減ってしまうんだよなー