翌日15日は快晴。海に面したホテルの窓からは、朝日とその光が海に反射して、
「め・・・目が開けてられん・・・っ」
くらい眩しい。ベランダに出るとなにやらいい匂いが。調理場で魚を焼いているのだろうか。
バイキング形式の朝食会場へ行くと、その原因が判明。ベランダで従業員さんがバーベキューコンロでさんまを焼いていた・・・。
「・・・確かに、ネットで見たとき、『朝はさんま1匹つき!』とか書いてあったが・・・」
「さんまが焼きあがりましたよ~。食べ放題ですから何匹でもおかわりしてください~」
朝からさんま食べ放題・・・しかも今、目の前で焼きたて。うまそうはうまそうなのだが、私は朝はあまり食べられないのだ。
「ううむ、夜だったらおいしくいただくのだが・・・」
なので、私もYも残念ながらさんまはパス。しかし、焼いている従業員さんの日焼けした笑顔が眩しいぜ・・・って、そうか。こうして朝日ががんがん当たるベランダで毎朝さんまを焼いているせいで日に焼けてしまったのだな?!
部屋へ戻り、のたのたと出かける身支度を整えていたら、Yがテレビを見始めた。
「仮面ライダー・・・?」
「そう。毎週見てるの」
一般人そうに見えて、さりげなくオタクなヤツだ・・・。
「・・・なんか、オタク向けだね・・・。メイドとして潜入?このメイド服は男向けサービス?ライダーのデザインも変わってるねー。左右で違うじゃん」
「この男の子とこの男の子、2人が合体して1人のライダーに変身するんだよ」
「合体・・・!2人で1人?!・・・な、なんていやらしい設定なの・・・!」
思わずYとともに最後まで見入るワタクシ。
なんだか出発時間が遅れたが、今日はあまり回る予定ではないのでまあいいか、と私の運転で出発。まずは再び石巻市に戻り、昨日暗かったので撮れなかった駅周辺の石ノ森キャラを探すのだ。
駅前の市営駐車場は、駐車1時間だったか2時間だったかは無料となっていた。ラッキー
さすがに朝は駅ということもあって人がいる。望遠付きのでかいカメラを持ってうろつく男発見。仲間だ・・・
石巻駅は、そこ自体石ノ森仕様。駅舎の窓が009のステンドグラス風になっていたり、上にジェットがいたり。電車を待つ暇そうなおじさんたちの好奇の目をものともせず、Yは激写しまくる。
「フランソワーズがいたよ。並べば?撮ってあげるよ」
「やだよ!(おっさんたちの目の前じゃん!)君こそ撮ってやるよ!」
ワタクシは断固拒否。
Yが撮りまくっている間暇していたら、猫が擦り寄ってきた。
「おお、かわいいヤツめ。首輪してるなあ。この辺の子かしらん」
満足したらしいYと駅前の観光物産センターに入ると、自動ドアだったので一緒に入ってきてしまった。
「あれ?ここで飼われてるのかなあ?」
店員さんに訊いたら、捨て猫か迷い猫で、この辺でうろうろしてるとのこと。
「何?こんな懐っこくてカワイイヤツが?ううっ、旅先でなければお持ち帰りするのに・・・!」
と涙を飲むワタクシを尻目に、友人は目当てのサバ缶を大量買いしていた。石巻は港町で、ここで作るサバ缶は「金華サバ」(金華ハムのようにおいしい、という意味であろう・・・)と呼ばれているらしい。彼女はそのためにわざわざ荷物などほとんどないのに、キャリーバッグで来たのである・・・!
次は登米市にある石ノ森章太郎記念館へ向かった。三陸自動車道に乗ったのだが、ナビのデータが登米ICまで開通する前の古いものだったらしく、途中からナビ上は田んぼの中を走っていることになり、沈黙・・・。
「こらっ、登米に着いたらナビしろよ!」
という私たちの願いも虚しく、IC周辺の道も新しくできたもののため、やはり沈黙。
「ど、どっち行けばいいの?つーか私、今どっちへ向かって走っているの?」
幸田はとんでもねー方向音痴である。自動車道に乗ってから、天気は曇り、時折雨もぱらつくようになったため、太陽もどの方向にあるかわからなくなってしまったのだ!
「そっちじゃない。たぶん逆」
「逆?!」
Uターン・・・。Yが地図を見ながら指示し、しばらくするとナビも「400メートル先、左方向です」と、「オレはちゃんと仕事してるぜい」とでもいうようにアナウンスを始めた。
「て・・・てめー、遅いんじゃーっ」
登米街道に入れば1本道。ところどころ看板もあり、迷うことなく到着。こっちは萬画館に比べてマイナーすぎて客なんかいないだろう、と思ったが、中年男女(私たちよりも10以上年上っぽい・・・)のグループがいた。
「どう見ても石ノ森ファンには見えないけど・・・」
「年齢的にはうちらより合ってるんじゃないの?」
そう言われてみれば、石ノ森さん(言いにくいなー。私にとっては「石森章太郎」の方がなじみがあるからなー)の活躍時期って、私らが生まれるはるか前からだもんな・・・。
こちらは石ノ森氏の生まれ故郷ということで、作品よりも生い立ちとかの方がメイン・・・かな?
「ああ、満足した。私の目的は果たしたよ。あとはどこへでも君の行きたいところにつきあうよ」
「へーへー」
というわけで、次は中尊寺を目指す。おお、観光っぽいぞ!
途中、昼食のため一関市に立ち寄る。ここはお餅をいろいろな食べ方をするらしい。一関駅近くのパーキングに車を置き、これまたあらかじめ調べておいたお店へ。しかし、朝しっかり食べたせいかYも私もあまりお腹が減っておらず、最初に食べようと思っていた9種類のお餅のセット(ごま、えび、納豆、ずんだ・・・などなど)はとても入らね~、と単品で注文。私は雑煮を食した。
中尊寺境内をうろうろしていると、薬師寺堂があった。目にご利益があるという。
「私、この頃視界の隅がチラチラして気になるんだよね・・・。緑内障じゃないかと思ってホントは検査受けたいんだけど・・・」
「うちの母、緑内障で失明するかもって言われてるんだよね・・・」
と、2人してお守りを購入。なんかこの「め!」というそれだけ!のシンプルこの上ないデザインが気に入ったかも・・・
駐車場に戻ってきて、ふと気がついた。駐車場の上に、「奥州藤原歴史物語 夢館」という看板があった。うろ覚えで申し訳ないが、「奥州藤原四代の栄華をロウ人形で再現!」とかなんとかアオリがあったような。
「ロウ人形・・・?」
私の勘が、あやしい・・・と囁いた。しかも駐車場からエスカレーターで行けたりして。
「あやしい・・・怪しすぎる。こういうところには行かねばなるまい!」
「ま、いいけど・・・」
というわけでもうエスカレーターの入口からしてなんとなく怪しい雰囲気満載のロウ人形の館へ向かった。予想通り、客は私たち以外しかいない。
中はもうそのまんま、奥州藤原氏の興りから滅亡までの重要場面をリアルなロウ人形で再現したもの。着物が美しいですな。しかし、リアルすぎて1人で回るのはちょっとイヤンな感じだ。
「ちょっと、ここに立ってみなよ」
「何?なんかあるの?」
Yはにやにや笑った。
「ほら、この人形の腕が落ちてきたら、ちょうど首刎ねられる感じ?」
それは馬に乗った武者が、刀を振り下ろそうとしていた場面だった。
「おめ~な~。おめーもここに立ってみろ!」
「やだよー(笑)」
そんな怪しいところですが、いやいや、じっくり説明文も読んで回れば、うろ覚えの日本史を思い出せること請け合い。『炎立つ』の世界ですよ。(私、読んだはずなのにちっとも頭に入っていないのはなぜだ・・・。高橋さんにしちゃー今いちとか思うのは、N○Kも大河ドラマに選ぶほど真面目でオーソドックスな作りのせいか?!)
館を出てから、「○○様ご一行歓迎」とかいう札がたくさんあったのに気がつきました。私らが見終わったときにちょうどトイレ休憩の団体さんがわっと入ってきたしね。(でも見学はしてなかったよ~)「誰がここ来るのかね~(←自分たちのことは棚上げ)」などと言ってすみません(笑)
車に戻ると雨が降り始めた。今日はもう宿に行くだけなので、傘使わずにすんでよかったなー、と走り始めるが、この日の宿は花巻。結構距離がある・・・。
東北自動車道を走る頃には本格的な降りで、あっという間に空も暗くなってしまった。花巻南ICを降りて花巻温泉郷へ向かったが、ワイパー高速で動かしてもあまり役に立たない土砂降りの上に道も暗く、はっきり言ってほとんど前が見えません!状態。
「暗いよー、見えねーよー、うわーん、まだ着かない?!」
「だってうちらの宿、温泉郷の中でいちばん奥だよ・・・」
「えっ、そうだった?!」
だって、「花巻温泉郷は花巻南ICから車で20分」ってなってたから、近いなーって思ったんだよ。でもよく考えたら、温泉郷の入口まで20分で、そこから倍の距離がある宿は、40分以上かかるに決まってるじゃないか!アホめ・・・。
へとへとになってホテルに到着。車を入口につけて荷物を下ろしたら、従業員さんが車を駐車場に持って行ってくれた。
しかし、苦労した甲斐があって、きれいで料理もおいしくて温泉もいろいろあって、いい宿でした。露天風呂は土砂降りだしめちゃ寒いしで、屋根のあるところしか入れなかったけど。(根性のある人は用意してある傘さして行っていたが)
予定はゆったりのはずだが、意外と移動に時間をとられた2日目はこれにて終了。明日は小雨程度になるといいなあ・・・。
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