１月 ５日

　　　　　　　　　　　　　　（　小寒・寒の入・寒　）


寒晴れや白きこけしの肌に触る　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


寒に住む鼻柱のみ光らして　　　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


人里に水の音する寒の入り　　　　　　　　　　　　　　　　細見綾子


わが十指われにかしづく寒の入 　　　　　　　　　　　　　　岡本眸


石切の音小寒の谷の中 　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐藤 由比古


剣道のたたんと進む寒の入 　　　　　　　　　　　　　　　　正木ゆう子


房州の目刺売りくる寒の入 　　　　　　　　　　　　　　　　和気永子


小寒の夜半きらきらと洗車場 　　　　　　　　　　　　　　　塚本邦雄


小寒や枯草に舞ふうすほこり 　　　　　　　　　　　　　　　長谷川春草


名古屋城青く耀やく寒の入 　　　　　　　　　　　　　　　　横田昌子


とぼしては油惜しむや寒の入 　　　　　　　　　　　　　　　石田波郷

１月 ４日

　　　　　　　　　　　　　（　四日・羊日・侘助　）


三ケ日早や過ぎ四日遅々と過ぎ 　　　　　　　　　　　　　　　　星野立子


酒そはぬ四日の夕餉すましけり 　　　　　　　　　　　　　　　　山田佐々子


四日はや釣堀常の日だまりに 　　　　　　　　　　　　　　　　　徳永佐和女


帰る子を四日の駅に見送れり 　　　　　　　　　　　　　　　　　船坂ちか子


餅網も焦げて四日となりにけり 　　　　　　　　　　　　　　　　石塚友二


四日より山にひびけや湯揉唄 　　　　　　　　　　　　　　　　　石田波郷




侘助に風立つゆふべもの食べに 　　　　　　　　　　　　　　　　鍵和田釉子


侘助や褪せし葉書の男文字 　　　　　　　　　　　　　　　　　　谷口桂子


侘助や茶席につづく鳰の水 　　　　　　　　　　　　　　　　　　池田蝶子


侘助を植ゑて晩年用新居 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴木鷹夫

１月 ３日

　　　　　　　　　　　　　　　（ 　正月三日・蝋梅　）


三日晴れ日輪海の空をわたる 　　　　　　　　　　　　水原秋桜子


神官の妻の眉濃き三日かな 　　　　　　　　　　　　　寺井谷子


誰も来ぬ三日や墨を磨り遊ぶ 　　　　　　　　　　　　　殿村菟絲子


男また眠つてしまふ三日かな 　　　　　　　　　　　　夏井いつき


三日はやもの書きといふ修羅あそび　　　　　　　　　 鍵和田釉子


長崎の坂動き出す三日かな 　　　　　　　　　　　　　有馬朗人


広重の富士や三日の駿河湾 　　　　　　　　　　　　　田中きよ子


三日はや木に書く文字の音すなり　　　　　　　　　　 飯田龍太






箱根路を韋駄天下る三日かな

１月 ２日

　　　　　　　　　　　　　　　（　二日・初夢・宝船　）


　☆　写真は農業祭での野菜の宝船です


大いなる鯛釣り上げし初の夢　　　　　　　　　　　　栗田やすし


青空へもぐら顔出す二日かな 　　　　　　　　　　　　沢木欣一


初夢やさめて匂ひの残りゐる　　　　　　　　　　　　細見綾子


山彦も山を出ることなき二日 　　　　　　　　　　　　鷹羽狩行


豊作の藁にて編めり宝船 　　　　　　　　　　　　　　森山暁湖


初夢の杜甫と歩いてゐたりけり 　　　　　　　　　　　吉田鴻司


初夢に弟が来て父母が来て 　　　　　　　　　　　　　菖蒲あや


調教馬二日の馬場をひた走る 　　　　　　　　　　　　佐藤信子


雨音はすでに夢路か宝船 　　　　　　　　　　　　　　水原秋桜子


初夢の二階より師に呼ばれけり 　　　　　　　　　　　岡本眸






ラーメン屋昼賑はへる二日かな　　　　　　　 丹羽康碩


電動の獅子咥へくる初神籤　　　　　　　　　 武藤光


ポケットに挿して破魔矢の鈴鳴れり　　　　　 関根切子


舟で着く蜑一族の初詣　　　　　　　　　　　 都合ナルミ


笹の葉のふれ合ふ音も淑気かな　　　　　　　 岸本典子

２０１４年 １月 １日

　　　　　　　　　　　　（　１月１日・新年・元旦　）


みなさま、あけましておめでとうございます　ｍ（－－）ｍ
今年も皆様とって幸せな一年になりますようにお祈りいたします


静かさや辺戸の岬に初日かげ　　　　　　　　　　　　栗田やすし


群羊の一頭として初日受く　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


琴唄の八重の潮路に初日さす　　　　　　　　　　　　 細見綾子



恭賀新禧一月一日日野昇 　　　　　　　　　　　　　　　正岡子規


初日さすまつくらがりの町工場 　　　　　　　　　　　　平畑静塔


湯気のたつほかに音なきお元日 　　　　　　　　　　　宇多喜代子


一月一日棒立の箒かな　　　　　　　　　　　　　　　 　四ッ谷 龍








打ち寄する辺戸の白波淑気満つ　　　　　　　 　　　　福田邦子


鯨来る沖の明るし初景色　　　　　　　　　　　　　　　都合ナルミ


榾くべて火の音うれし初竈　　　　　　　　　　　　　　下里美恵子


病む母の唇に福茶のひと雫　　　　　　　　　　　　　　矢野孝子


教へ子の恋破れしと賀状くる　　　　　　　　　　　　　谷口千賀子


新日記先づ一行は母のこと　　　　　　　　　　　　　　丹羽康碩


初鏡父似の眉をととのふる　　　　　　　　　　　　　　伊藤範子