3月 22日

2020-03-21 14:36:17 | Weblog
                    春蘭・ほくり・ほくろ・はくり


     春蘭が咲き出て春をうたがはず          細見綾子


     人送り来て春蘭に屈みたる            矢野孝子


     春蘭の擡ぐ花芽や紅ほのか            近藤きん子


     指ほどの春蘭ひらく古窯址            伊藤範子


     春蘭の和紙のごとくに花芽透く          中根多子


     春蘭の蕾ふくらむうすみどり           中山ユキ


     春蘭の塩漬け甘き香を放つ            山本悦子



          



     ドア開ける度び春蘭の匂ひ立つ          稲畑汀子


     春蘭や酒仙住みにし深廂             鷹羽狩行


     春蘭や実生の松にかこまれて           星野立子


     春蘭の影濃くうすく昼しづか           桂信子


     春蘭や小瀧の多き裏高尾             水原秋櫻子


     春蘭を掘つて薬師の裏の山            森澄雄




          
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3月 21日

2020-03-20 14:11:15 | Weblog
                    草餅・蓬餅・草団子・母子餅


     草餅の黄な粉をこぼす毛越寺           細見綾子


     草餅を土産に妻の帰り来し            栗田やすし


     生き生きと老い草餅を二つ食べ          櫻井幹郎


     老い母の尽きぬ話や草の餅            矢野孝子


     草餅に伊吹の蓬搗きこめる            清水弓月


     草餅の青き匂ひや母偲ぶ             奥山比呂美


     家毎に祀る地蔵や草の餅             磯田なつえ


     ふるさとの草餅母の指のあと           金原峰子


     大和路や旅の終りの蓬餅             河合義和


     円空の寺に草餅焼く匂ひ             林 尉江


     草餅の黄な粉こぼせり法衣膝           山 たけし


     七輪で焙りて売れり草の餅            森 靖子


     柴又や殊に色濃き草団子             伊藤克江



          



     奈良は日の溢るるところ草の餅           岡本眸


     たてまつる八十路の母に蓬もち           及川貞


     月越しの咳抜けにけり蓬餅             水原秋櫻子


     草餅に草の香つよし小糠雨             林 翔


     いつまでも淡海の冷やよもぎ餅           藤田湘子


     ふるさとや粗にして甘き草の餅           上村占魚



          
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3月 20日 春分

2020-03-19 19:08:37 | Weblog
                    大根の花・花大根


     大学の庭の大根花咲けり              沢木欣一


     春雷を二三日して大根花              細見綾子


     大根の花咲く十坪ほどの庭             栗田やすし


     花大根山二つ越え祖父の墓             栗木登代子


     花大根大寺の畑埋めつくす             武藤光晴


     南吉のきつねの話花大根              江本晴子


     灯台へ続く小径や花大根              菊池佳子


     花大根濡らす岬の怒涛かな             岡野敦子


     花大根咲き紫に日暮たる              中山ユキ


     ポンプ井戸残る畑や花大根             横井美音



          



     夕月は母のぬくもり花大根             古賀まり子


     花大根海女の磯畑一つかみ             鈴木しげを


     二十の戀五十の戀や花大根             石塚友二


     夕暮れて白の冷えゆく花大根            五十島典子


     岬への単線をどる花大根              林 翔


     ほろ苦き恋は忘れず花大根             鈴木真砂女




          


     
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3月 19日

2020-03-18 15:08:54 | Weblog
                    雪柳・小米花・こめやなぎ・えくぼ花


     墓にさせば早やも散りけり小米花        細見綾子


     雪柳花みちて影やはらかき           沢木欣一


     咲き満ちて揺れやまぬなり雪柳         下里美恵子


     青竹に雪柳挿す勝手口             佐藤とみお


     ジョギングの膝に触れたり雪柳         奥山ひろ子


     暮るるほど白濃くしたり雪柳          櫻井幹郎


     降り出しの雨に匂へり雪柳           平松公代


     窯垣の小径ここより雪柳            神尾朴水


     昏れてより白極まれり雪柳           吉岡やす子



          



     小米花殖えゆく産衣みなましろ         福永耕二


     雪柳ふぶくごとくに今や咳く          石田波郷


     忌の近し触れてひえびえ小米花         鍵和田釉子


     野良猫の揺らして通る雪柳           脇本幸代


     日時計のちようど十二時小米花         三苫時子


     雪柳怺へ性なく散り急ぐ            西村和子




          
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3月 18日

2020-03-17 12:59:53 | Weblog
                    薺の花・ぺんぺん草・三味線草


     パン買ひに三味線草の近道を           細見綾子


     十字架の丘にペンペン草茂る           河原地英武


     花なづな牛が鼻づら寄せて嗅ぐ          下里美恵子


     花なづな検番過ぐる昼の猫            武藤光晴


     花薺鳴らしてみたり休耕田            松原和嗣


     田一枚埋め尽したり花薺             磯田なつえ


     屈み見るペンペン草に小さき影          牧 啓子


     無住寺に三味線草の吹かれをり          山下帰一


     花薺土手に碇の錆び深し             鈴木美登利


     花薺の風生る碧の住居跡             市江律子


     氷見線の鉄路に沿ひし花なづな          夏目悦江




          



     芭蕉稲荷ぺんぺん草の揺れ通し          鍵和田釉子


     田はじめの遅れ薺の花ざかり           森田公司


     花薺われらにひとりの母大事           鈴木貞雄


     雲水の影から影へ花なづな            藤田湘子


     稚ない兵士ぺんぺん草へ死に絶える        穴井太


     庵を出でて道の細さよ花薺            河東碧梧桐




          
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3月 17日

2020-03-16 13:21:59 | Weblog
                    彼岸・彼岸入り・彼岸寺・讃仏会


     浄土教(浄土思想)の考えから真東から上がる太陽が真西に
     沈む日を彼岸の中日に据えた前三日後三日を彼岸の期間であり
     その中日を春分・秋分の日となしています
     入日を真西(西方浄土)に拝み先祖の供養と自分の極楽浄土への
     到達を願う日と考えられます
     仏教国は多く有りますが彼岸の考え、法要は日本独自のものです



     こけし師の酒飲みてゐる彼岸かな          沢木欣一


     ぜんまいをねんごろに煮て彼岸入          細見綾子


     父母の墓訪はず過ぎたる彼岸かな          栗田やすし


     供花持つて船待つ女彼岸寒             中村修一郎


     歌麿の春画積まれて彼岸寺             岸本典子


     帰るたび母小さくなる彼岸かな           関根切子


     彼岸会の女三人寄席に入る             片山浮葉


     うらがへる高き法螺の音彼岸寒           中斎ゆうこ


     彼岸会の庫裏に白緒の下駄並ぶ           相澤勝子


     彼岸入り天窓の和紙新しき             山下 護


     大屋根に雀の遊ぶ讃仏会              谷口千賀子


     彼岸茶屋たれたつぷりの串団子           奥山比呂美


     彼岸僧見てきたやうに地獄説く           森 靖子



          


     沼に沿ひ杖を漕ぎゆく彼岸婆            秋元不死男


     四ッ手網すみずみ乾く彼岸かな           吉田鴻司


     兄妹の相睦みけり彼岸過              石田波郷


     よべばこたへありて彼岸へ渡し舟          富安風生


     安房なれや彼岸の供華も金盞花           清崎敏郎


     会釈して影の縮まる彼岸婆             岸田稚魚




          

     


     
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3月 16日

2020-03-15 17:09:04 | Weblog
                    辛夷・幣辛夷・姫辛夷・やまあららぎ・田打桜・四手こぶし


     和名「辛夷」は中国ではもくれんの事を言うようです
     辛夷はモクレン科モクレン属の植物ですから当然なのでしょう
     遠目で見てはすぐには分かりずらい辛夷と白木蓮ですが
     木の高さが5メーターを越していればほぼ辛夷でしょう



     山に辛夷田打ちはじまる北陸路          細見綾子


     雨上がりたる本陣の花辛夷            栗田やすし


     鍵の手の残る宿場や花辛夷            奥山ひろみ


     紬織る手機の音や花こぶし            小島千鶴


     木曽馬の瞳に映る花こぶし            下山幸重


     天竜を見下ろす古刹花辛夷            多々良和世


     天険に統合校舎辛夷咲く             神尾朴水


     師の句碑の除幕祝ひや花辛夷           武藤光晴


     花こぶし咲き満雨の寒山寺            松本恵子


     院長に抱かるる赤子花こぶし           山下喜久


     五箇山やつぼみ犇めく幣辛夷           巽恵津子


     雲晴れて富士山麓のしでこぶし          小田二三枝


     牛臭き風にほぐるる幣こぶし           上杉美保子



          

     辛夷は花びらの6枚 幣辛夷は9~30枚といろいろで
     “シデコブシ”という名前は、花の咲いた姿がひらひらとする、しめ縄などに付ける四手
    (幣)というお飾りに似ているところから付いた名前です



     風摶つや辛夷もろとも雑木山           石田波郷


     満月に目をみひらいて花こぶし          飯田龍太


     辛夷咲き空の奥なる風の音            長谷川櫂


     辛夷咲く一樹のもとの苗代田           瀧澤伊代次


     千木の立つ家見えそめし辛夷かな         阿波野青畝


     少女期の真蒼な顔幣辛夷             川崎展宏




          
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3月 15日

2020-03-14 12:17:03 | Weblog
                   初桜・初花


     東京ではここ2~3日コロナウイルスの暗い話題にまじり
     靖国神社の標準木に1輪、2輪と咲きだしたとのニュース
     冷たい花待ちの雨に今日とはなりませんが開花宣言も間近です
     報道はもっと明るいニュースを拾って貢献して頂きたいものです



     咲かんとす葉のうすみどりなる桜         細見綾子


     肩かるく叩く励まし初ざくら           河原地英武


     降り出しの雨に色濃し初桜            下里美恵子


     三味の音にさくらほつほつ野文楽         都合ナルミ


     少し笑む父の遺影に初桜             倉田信子


     婚の荷の発ちて桜のほころびぬ          清原貞子


     夫の忌を二日過ぎたる初桜            菊山静枝


     初桜やはき日差しの宮詣り            橋本紀子


     二分咲きの桜の枝に鴉来し            鈴木澄枝


     初桜見んと医院へ遠廻り             森 妙子


     初桜米寿となりし姉見舞ふ            上田博子


     初花やコップ酒置く父の墓            雨宮民子


     スカイツリー見上ぐる空や花三分         武藤光晴



          



     むら鳥のさわぐ処や初桜             政岡子規


     初花のその一輪のうつむける           清崎敏郎


     一花よりみなぎる力初桜             稲畑汀子


     あけぼのの薄紙いろに初桜            千々松洵子


     初ざくら古り細りゆく帯巻いて          能村登四郎


     いちにちのはじまる冷えの初桜          岡本眸



          
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3月 14日

2020-03-13 13:44:31 | Weblog
                     牡丹の芽・芽牡丹


     武蔵野の土やはらかし牡丹の芽          栗田やすし


     牡丹の芽筆ほどといふしか思ふ          細見綾子


     早起きの妻のけはひや牡丹の芽          沢木欣一


     遠き日や綾子の庭の牡丹の芽           国枝隆生


     忌を修す母の牡丹の芽に屈み           都合ナルミ


     牡丹の芽影置くほどに伸びにけり         矢野愛乃


     菰解きて日ざしあふるる牡丹の芽         倉田信子


     臥す夫が牡丹の芽吹き問ふてをり         八尋樹炎


     人気なき山の御堂や牡丹の芽           松平恭代


     細竹で囲みて守る牡丹の芽            相澤勝子


     忌明けの雨にほつるる牡丹の芽          内田陽子



          



     鎌倉の古き土より牡丹の芽            高濱虚子


     支へ木も紐もこまやか牡丹の芽          岡本眸


     みほとけに上品下品牡丹の芽           六本和子


     牡丹の芽の覗かれてばかりゐる          石田郷子


     嫁ぐ子へ日の剥がれゆく牡丹の芽         林 翔


     一寸にして火のこころ牡丹の芽          鷹羽狩行




          
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3月 13日

2020-03-12 17:14:40 | Weblog
                      片栗・堅香子の花・かたつこ


     かたかごの花のさゞなみ青空へ          沢木欣一


     足のべて休む片栗の花あれば           細見綾子


     片栗の花を食べよと朝市女            栗田せつ子


     かたくりの閉ぢて西より雨もよひ         山 たけし


     かたかごの花に雨雲低く垂る           倉田信子


     かたくりの一寸出でてうつむけり         片山浮葉


     日の差してかたくりの花震へづめ         生川靖子


     堅香子に木洩日スポットライトなす        武藤光晴


     捨て窯の際に片栗群れ咲けり           熊澤和代


     堅香子や土間三畳の流刑小屋           安藤一紀


     片栗の一花(いっか)にカメラ集まれり      市川克代


     堅香子や付け睫めく黒き蕊            田畑 龍



          



     山窪に見しかたくりの湿り花           能村登四郎


     別れゐし子に逢ふごとくかたかごに        林 翔


     かたかごの花や越後にひとり客          森 澄雄


     めつむれば深山幽谷かたくり咲く         山口青邨


     かたかごを引つぱる風の吹きにけり        石田勝彦


     片栗の一つの花の花盛り             高野素十
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