ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

灰谷 健次郎さん

2006-11-24 | 読むこと。
灰谷 健次郎さんがお亡くなりになりました。

灰谷さんの作品をそんなにたくさん読んだわけではありませんが、大人になって初めて読んだ児童文学が『兎の眼』だったので、とりわけ印象に残っているのです。
大学生の頃だったか、働き出してからだったか、どういういきさつでこの本を読もうとしたのか、もうすっかり忘れてしまいましたが、とにかく泣きながら読んだ初めての本でした。

その後大阪で勤めていたときに、同僚のYさんから『ひとりぼっちの動物園』をいただきました。部署も違って、それほど親しくもなかった彼から、これもどういういきさつでこの本をもらったのか忘れましたが(まあ、飲み会でそんな話が出たのだろう、とだいたい想像はつきますが)、これも読んでいるうちに泣いてしまい忘れられない一冊になりました。(この本は今でも本棚にあります。Yさんにはお返しに、シルヴァスタインの『ぼくをさがしに』を贈りました)。

そして次に読んだのが『太陽の子』。この頃になると、児童文学というものが子どもだけのものではないのだなあ、とうっすらと気づき始め、今江祥智さんなど好んで読んでいました。そして、森絵都さんの『カラフル』に出会い、それから児童文学、ファンタジーへとのめりこんでいき今に至っているわけです。

だから、灰谷健次郎さんは私にとって児童文学の入口になってくださった方、と言えるかもしれません。
児童文学が、単に道徳や勧善懲悪を教えるものではなく、また子供向けに現実をオブラートに包んだような中途半端なものでもなく、生きることの厳しさや、命の大切さ、人々のやさしさを、子どもにも大人にも理解できるよう表現したものなんだ、ということを教えてもらったような気がするのです。

子どもたちが次々と自ら命を絶つこの時代に、灰谷さんの作品はもっともっと読まれるべきなのかもしれません。そういう私も、子どもたちにはまだ1冊も彼の作品を薦めたことがありません。私自身もそうですが、どうしても現実を忘れさせてくれるワクワクした本を読みがちで、真正面から「生きること」を描いた作品には手を出しにくいのです。
でも、これからいろんなことを経験していくであろう子どもたちには、ぜひ読んでほしいと思っています。

『ひとりぼっちの動物園』を開いたら、こんな文章に出会いました。


あなたの知らないところに
いろいろな人生がある
あなたの人生が
かけがえのないように
あなたの知らない人生も
また かけがえがない
人を愛するということは
知らない人生を知るということだ


ご冥福をお祈りします。

コメント (2)
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