絵本作家ワンダーランド
絵本の原画展に行くのはずいぶん久しぶりのことです。
画家の筆のタッチまでじっくり見ることができる原画と、絵本として印刷されたものがこんなに違うなんて、とショックを受けたのはもうかなり前のこと。当時はまだ京都に住んでいて、丸善で原画展があるとよく見に行きました。
原画が気に入って絵本を買っても、その絵本から原画で感じた感動は得られず、がっかりしたこともしばしば。当時の私は、たぶん「絵本」としての完成品よりも「一枚の絵」として魅力を感じていたのでしょう。
原画の魅力は、なんといっても画家の仕事ぶりをこっそり覗いているような気分になれることではないでしょうか。筆づかいや画材、修正のあと、色むらなどなど。あっ、こんなところに下書きの線が見えてる、とか、ホワイトのあとが残ってる、なんて発見すると、ちょっとうれしかったりして
この「絵本作家ワンダーランド」は、かなり見応えがあって大満足!
私の好きなバーニンガムやバートンの『小さいおうち』、エッツの『もりのなか』に『クリスマスまであと九日』。ル・カインの作品まで見ることができました。
バーニンガムは大胆な色合いの絵を描いているようにも見えますが、ペンで描かれた線はとても繊細でした。バンサンの鉛筆で描いたデッサンの生き生きとした確かな線。子どもの絵のように大胆で自由なタッチの荒井良二さんの作品の色の美しさ。
最近絵本と遠ざかっていた私には、今回初めて知った作品もたくさんありました。
アンジェラ・バレットの繊細なタッチにはため息がでたし、自由奔放なサラ・ファネリのコラージュは見ていて楽しくなりました。
一番気に入ったのはアンネ・エルボー。『すきまのじかん』の淋しげな人物や、哀愁をおびたブルーにとても惹かれました。帰りに10枚ほど絵葉書を買い、そのうち彼女のを3枚選んだのですが、子どもたちもそれが気に入ったようで2枚持っていかれてしまいました 絵本を買っておけばよかったと後悔・・・
実は『すきまのじかん』とどっちにしようか、迷って買ったのが酒井駒子さんの『金曜日の砂糖ちゃん』なのです。彼女の絵は本の表紙などで見たことはあったのですが、原画を見て衝撃を受けました。印刷になると平面的なのに、原画だと奥行きがあって、黒い背景に白で描かれた少女がとても神秘的で、みずみずしく感じられるのです。この少女の表情にすっかり心を奪われてしまったのでした
なんだか一度に見るのがもったいないような原画展で、今はただ図録をながめてため息をつくばかり・・・。
藤田嗣治展
「絵本作家ワンダーランド」だけでも充分見応えがあったのに、せっかく京都へ来たのだからと「藤田嗣治展」まで行ってきました。
以前なにかの絵画展で見たとき、こってりとした油絵ばかりの中、彼の淡々とした油絵がとても印象的でした。藤田嗣治というと、やはり乳白色の肌をした女性を思い浮かべます。
今回生誕120年を記念して、パリ時代から晩年までの代表作約100点を展示したということですが、彼の作風の変化には驚きました。まるで画家の人生をたどっているようで圧倒され、見終わったあとは正直疲れました
初期のモディリアニ風の細長い人物画から、乳白色の肌をもつ裸婦像になり、その後中南米を旅行してからは濃密な色調にかわっていきます。驚いたのは戦争画もかいていること。裸婦像からは想像もつかないような暗い色調の写実的な戦争画でした。
そして晩年は宗教画や子どもを題材とした絵を描いています。宗教画も西洋の画家とは趣の異なる独特な絵で、不思議な雰囲気を醸し出していました。子どもの絵も、「かわいい」というより「妖しい」というほうがぴったりで、眉のない無表情な顔の子どもたちに妙にぞくぞくしてしまいましたよ
絵を見に行ったあとは刺激を受けて興奮状態で、絵筆をもったら自分にも描けそうな気がするんですけど、いざ絵筆を持ったらどぉ~んと落ち込みそうで・・・ だいたい、絵筆なんて長いことさわってないしなあ。
絵描きさんに必要なのは、たぶん根気なんでしょうね(漫画家でも)。それって私が一番ニガテなことだったから、向いてなかったんだろうなあ・・・
でも、いつかは(時間がとれるようになったら、って無理?)また絵筆を手にして、アクリル画や油絵にも()挑戦してみたいものです。
絵本の原画展に行くのはずいぶん久しぶりのことです。
画家の筆のタッチまでじっくり見ることができる原画と、絵本として印刷されたものがこんなに違うなんて、とショックを受けたのはもうかなり前のこと。当時はまだ京都に住んでいて、丸善で原画展があるとよく見に行きました。
原画が気に入って絵本を買っても、その絵本から原画で感じた感動は得られず、がっかりしたこともしばしば。当時の私は、たぶん「絵本」としての完成品よりも「一枚の絵」として魅力を感じていたのでしょう。
原画の魅力は、なんといっても画家の仕事ぶりをこっそり覗いているような気分になれることではないでしょうか。筆づかいや画材、修正のあと、色むらなどなど。あっ、こんなところに下書きの線が見えてる、とか、ホワイトのあとが残ってる、なんて発見すると、ちょっとうれしかったりして
この「絵本作家ワンダーランド」は、かなり見応えがあって大満足!
私の好きなバーニンガムやバートンの『小さいおうち』、エッツの『もりのなか』に『クリスマスまであと九日』。ル・カインの作品まで見ることができました。
バーニンガムは大胆な色合いの絵を描いているようにも見えますが、ペンで描かれた線はとても繊細でした。バンサンの鉛筆で描いたデッサンの生き生きとした確かな線。子どもの絵のように大胆で自由なタッチの荒井良二さんの作品の色の美しさ。
最近絵本と遠ざかっていた私には、今回初めて知った作品もたくさんありました。
アンジェラ・バレットの繊細なタッチにはため息がでたし、自由奔放なサラ・ファネリのコラージュは見ていて楽しくなりました。
一番気に入ったのはアンネ・エルボー。『すきまのじかん』の淋しげな人物や、哀愁をおびたブルーにとても惹かれました。帰りに10枚ほど絵葉書を買い、そのうち彼女のを3枚選んだのですが、子どもたちもそれが気に入ったようで2枚持っていかれてしまいました 絵本を買っておけばよかったと後悔・・・
実は『すきまのじかん』とどっちにしようか、迷って買ったのが酒井駒子さんの『金曜日の砂糖ちゃん』なのです。彼女の絵は本の表紙などで見たことはあったのですが、原画を見て衝撃を受けました。印刷になると平面的なのに、原画だと奥行きがあって、黒い背景に白で描かれた少女がとても神秘的で、みずみずしく感じられるのです。この少女の表情にすっかり心を奪われてしまったのでした
なんだか一度に見るのがもったいないような原画展で、今はただ図録をながめてため息をつくばかり・・・。
藤田嗣治展
「絵本作家ワンダーランド」だけでも充分見応えがあったのに、せっかく京都へ来たのだからと「藤田嗣治展」まで行ってきました。
以前なにかの絵画展で見たとき、こってりとした油絵ばかりの中、彼の淡々とした油絵がとても印象的でした。藤田嗣治というと、やはり乳白色の肌をした女性を思い浮かべます。
今回生誕120年を記念して、パリ時代から晩年までの代表作約100点を展示したということですが、彼の作風の変化には驚きました。まるで画家の人生をたどっているようで圧倒され、見終わったあとは正直疲れました
初期のモディリアニ風の細長い人物画から、乳白色の肌をもつ裸婦像になり、その後中南米を旅行してからは濃密な色調にかわっていきます。驚いたのは戦争画もかいていること。裸婦像からは想像もつかないような暗い色調の写実的な戦争画でした。
そして晩年は宗教画や子どもを題材とした絵を描いています。宗教画も西洋の画家とは趣の異なる独特な絵で、不思議な雰囲気を醸し出していました。子どもの絵も、「かわいい」というより「妖しい」というほうがぴったりで、眉のない無表情な顔の子どもたちに妙にぞくぞくしてしまいましたよ
絵を見に行ったあとは刺激を受けて興奮状態で、絵筆をもったら自分にも描けそうな気がするんですけど、いざ絵筆を持ったらどぉ~んと落ち込みそうで・・・ だいたい、絵筆なんて長いことさわってないしなあ。
絵描きさんに必要なのは、たぶん根気なんでしょうね(漫画家でも)。それって私が一番ニガテなことだったから、向いてなかったんだろうなあ・・・
でも、いつかは(時間がとれるようになったら、って無理?)また絵筆を手にして、アクリル画や油絵にも()挑戦してみたいものです。