柏崎といえば、今は原発だが、その昔は物流の中継拠点として栄えたそうだ。そういう歴史的背景があって、近代まではさまざまな蒐集家がおられたのだという。そんな物持ちが自分のコレクションを公にしたものとして、木村茶道美術館がある。敷地は起伏に富み、高台の上に美術館の建物がある。展示規模は小さいが、ここの特徴は所蔵の茶器でお茶を頂きながら、茶器や茶室のしつらえについて説明を聴くことができるようになっている。所蔵品をこうした形で公開することは、限定された期間に限定されたものだけを使って行っているところは他にもあるが、ここのように常設イベントのようにしているところは珍しいのではないだろうか。これは、道具は使ってこその道具、というこの館の創設者の考えで開館当初から行われているのだそうだ。この国には至る所に、主義主張を持ったギャラリーや個人美術館がある。以前にも書いたが、こういうものの層の厚さがその土地の文化について何事かを雄弁に語っているように思う。
ところで今日、初めてこの地でお目にかかった人がいるのだが、会ったときに不思議な感覚に襲われた。どこかで以前に会ったことがあるような気がしたのである。初対面の挨拶をした瞬間からずっと自分の記憶を手繰り寄せているのだが、どうにも思い出せない。それが隔靴掻痒の感がしてどうにも落ち着かない。相手の経歴のようなものを伺う限り、接点など全く無いのである。不思議なこともあるものだと思う。