鎌倉へ落語を聴きに出かける。鎌倉、と言っても最寄り駅は大船。かつて松竹の撮影所があった場所にある鎌倉芸術館が会場だ。初めて訪れる場所なので、時間に余裕を見ておいた。会場近くのカフェでランチをいただく。食事のメニューはカレーライスとピザくらいだが、ひとりで切り盛りしている店なので、こんな感じなのだろう。カレーライスを頂いたが、純カレーをベースにしたいかにも手作りというもので、たいへん心温まる味わいだ。コーヒーのほうは業務用のコーヒーメーカーで淹れたもので、こちらはいまひとつ。店内の隅に設置されている大型ディスプレイでは古い映画が音声抜きで流れている。夜はライブもあるらしく、そういう設置にできそうな作りになっている。この店が、ということではなく、この店を含めた全体の雰囲気がどことなく上品で、やはり鎌倉というのはそういう土地なのかと感じる。
落語の会場にはギャラリースペースもあり、3つが使用中だった。どれも地元の美術系サークルの作品展だ。気のせいかもしれないが、どれも作者が楽しみながら取り組んでいる様子が伝わってくるものばかりで、観ていて心地よかった。なにかと厳しい時代だからこそ、こんなふうに余暇や余業を楽しむ心の余裕をもっと多くの人が持つようになれば、時代のほうが温和になるのではないだろうか。少なくとも、問題が起こる度に野獣のような輩が暴れ回るような国に、自分の生まれた国はなって欲しくないものだ。
落語のほうは特段何がどうということはない。安心して聴いていられる噺家だ。ただ、やはりどこか決定的なものが欠けているような気もする。それはこれからの人生経験を経るなかで徐々に克服されるものなのか、そういう類のものではないのか、私にはわからない。
本日の演目
柳亭市楽 「子ほめ」
柳家三三 「浮世床」
柳家三三 「五目講釈」
(仲入り)
柳家三三 「真景累ヶ淵 豊志賀の死」
開演 14時00分
終演 16時05分
会場 鎌倉芸術館 小ホール