熊本熊的日常

日常生活についての雑記

天然落語

2016年06月29日 | Weblog

落語は人間の業の肯定である、とは立川談志がよく言っていたことである。何をどう見るかという解釈の問題ではあるのだが、人間というものは不思議な存在だと思う。生まれてこようと思って生まれてきた人などいないだろう。命は与件であり、気がつけば自分がいるのである。それなのに権利だの義務だのと、そういうものが当然のものとして認められることを何の疑いもなく要求する。また、当然のこととして社会の仕組みを作ろうとする。確かに生存権というものを基礎におかないと秩序が成立しないのかもしれない。それにしても、いかに己の欲望を満足させるかという一事のために世間が動いているかのように見える。人間がどうあるべきか、社会がどうあるべきか、というような立派な考えは私には持ち合わせがない。ただ、「え〜、そうなのぉ?」と思っているばかりで右往左往していたら、ジジイになってしまった。たぶん、こうして右往左往しながら死ぬのだろう。

ところで、今日は東急の株主総会に出席してきた。一昨年に次いで2回目の出席である。前回同様、質疑応答がおもしろかった。約1時間15分ほどの間に以下の15人の株主から質問や意見があった。前回のこともこのブログに書いたが、株主総会というよりは利用者集会のような内容である。自分がどういう立場でこの場にいるかなど考えもしない。ただ「株主総会」に出席している「株主様の私」ということだけだ。だから株主となっている企業の価値がどうこうというよりも「株主様」なのに「優遇されていない」不満を大勢の前で表明したいだけなのである。極め付けは出席者番号1197の質問とも意見でもない単なる文句だ。「私が電車のドアに挟まれた」ということが何だというのだろう?別の質問の回答にもあったが、この企業は旧国鉄系を除く上場鉄道事業者のなかで最も時価総額の大きい、いわば我が国を代表する鉄道会社だ。そこの株主総会での質疑応答がこれである。先日、都知事が笑い話のようなことで辞任したが、民主制というものは「主」となる「民」の中身によって善政にも衆愚政にもなるのである。司馬遼太郎の小説を読むと日本という国はたいしたものだと感心してしまうのだが、現実は名もないひとりひとりの滑稽噺や人情噺の集積でしかないように思う。たまたま今があるだけだ。

そういえば、先日イギリスでEU離脱を問う国民投票があり、離脱することが決まった。離脱派と残留派とが僅差ということもあり、離脱することに決まってから改めて混乱が生じているようである。こんなことなら、そもそも国民投票などしなければよかったようなものだが、どこの国も似たり寄ったりだということだろう。たまたま今日、ロンドンで勤務している日本人の同僚と仕事のことでチャットを交わしていたら、余談としてこんなことを書いてきた。

2016/06/29 17:18 同僚:ところで日本でもニュースが相当流れていると思いますが、英国はBrexitで世論がすっかり分裂し、政治は空白に陥っています。。。

私はこう返した。

2016/06/29 17:18 私:日本は常に空白なので、あまり驚かないですけどね

すると

2016/06/29 17:19 同僚:あ、そうです。日本みたいな感じです。

なにがあろうとなかろうと、現実は粛々と進行するのである。自分が生きている現実がどういうものかをしっかり認識した上で、自分の生活を粛々と生きるよりほかにどうしようもないのである。そこを踏み外して発言したり行動したりすると妙なことになる。つまり、それが落語にも通じるのだと思うのである。

以下、株主総会での質疑応答の概要:

Q1 出席者番号630 安全について 鷺沼在住 混雑に不満 ホームドアを早急に設置して欲しい これは命の問題である

A1 現在2020年全線完了を目指し対応中 東横線については今年度中に全体の半分を完了予定
田園都市線はドア配置が異なる編成が15あるため6ドアから4ドアへの車両切り替えを早急に進めるほか、ドア配置が異なる 場合でも対応できるようなものも実験中

Q2 856 (1)現在単位株数が1000株だが、これを100株とか500株に引き下げたほうが投資しやすくなって株価も上がるのではないか? (2)株主優待のタダ券枚数が保有株数と比例していないが、比例させたほうが公平ではないか? (3)蒲蒲線の進捗は?

A2 単位株数は2018年10月までに100株に引き下げる計画で現在作業中 併せて株主優待のタダ券配布も見直す 蒲蒲線は国土交通審議会において優先順位が引き上げられたと認識しており、できるかぎり早く実現するよう努力する

Q3 449 駒沢大学駅付近に在住 60年以上東急を利用 (1)混在によるダイヤ乱れが常態化している 対応を考えて欲しい (2)株主のメリットがない タダ券の乗車券は振替輸送の対象外 駅員乗務員の教育もしっかりして欲しい

A3 (1)田園都市線の混雑がひどいことは認識している 大井町線の能力増強などの対応はしている 来年は小田急の複々線化工事が完了する予定であり、小田急の利便性向上により客の一部がそちらへ流れる影響はあると認識 今年5月においてダイヤ通り運行された日は5日間だけ ドアに荷物が引き込まれることで遅延が発生することが多いので、ドアに引き込み防止シールを貼る予定 抜本的対策はないが、こうした細かな対策を積み重ねていく
(2)タダ券を振替輸送の対象にすることは考えていない

Q4 196 東横線と田園都市線をそれぞれ20年利用 (1)東急でんきの現況は? 東急カードによる支払いで割引が受けられるとのことで手続きをお願いしたが未だに完了していない (2)株価対策

A4  (1)東急でんき契約数は48000世帯 目標は年度内10万世帯 東急グループとの連携、ポイント、イッツコム割引などで契約促進中 名義変更については東電とのデータのやり取り等があり時間がかかっていると思われるが具体的対応はお客様センターで行う
(2)現状で当社は時価総額において私鉄トップ 株価は会社への期待と認識し、そこに応えるべく企業価値向上に努めている 自社株買いは昨年、一昨年とも各100億円実施したが、今期は投資を優先した

Q5 2585 スマホが迷惑 やめさせる施策はないのか?

A5 危険は認識している。車内マナー向上のアピールを考えたい 当社単独ではなく民鉄協会としても取り組みたい

Q6 743 三軒茶屋に勤務 この秋にエレベータの着工 インターホンの位置がわかりにくい 係員の数を増やして欲しい 2018年度計画だが前倒しでお願いできないか 総会議事録を公開して欲しい

A6 インターホンの位置は早急に対応する 係員の増員については検討する 工事スケジュールは他の地下埋設企業者との交渉があるので確約はできないが前倒しできるよう努力する 議事録は法令に従って対応している

Q7 1524 エスカレーターのマナーを徹底させて欲しい

A7 エスカレーター歩行の危険については認識している マナーとしては「歩かないでください」ということになるが強制できるものではない

Q8 391 (1)廃止になった桜木町駅のようなところのバス代替路線に対する考え方 (2)生涯独身率という点から見た不動産事業の考え方

A8 (1)廃線後のバスについては十分対応しないといけないと考えている (2)住宅ニーズの多様化は念頭に置いている 高齢単身者も増加しており、そうした諸々に対応したメニューを考えている 例えば駅近賃貸、介護付有料老人ホーム、住み替え促進など

Q9 989 通勤利用 引き込まれ事故が他社線に比べて多いと感じているが、対策をどう考えるか?

A9 事故が増えているのは事実 直接原因は混雑であり、カバンなどがドアに押し付けられることによって生じる 対策として摩擦を低減させることがあり、帯状シールを貼る

Q10 770 資料49ページに無形固定資産が約300億円とあるが、これはどういうものか?保有価値のあるものなのか?EUの問題など激動があるなかで身軽なほうがよいのでは?

A10 内容の主たるものはソフトウエア80億円、借地権180億円 事業に必要なもの

Q11 1664 長期保有株主を増やす対策は?

A11 電車割引等の追加を考えている

Q12 1197 九品仏駅で電車のドアにはさまれたが、これはどういうことか?

A12 車掌の確認が不十分であったと思われる

Q13 649 社外役員から見た東急の印象は? 期中のアドバイスにはどのようなものがあったのか?

A13 社長が代わりに回答する 社外役員はそれぞれの専門分野から様々な意見やアドバイスをいただいている

Q14 1600 役員の年齢ガイドラインはあるのか? 社外役員に85歳という人がいるが大丈夫なのか?

A14 社外役員については年齢や性別などのガイドラインはない 企業価値を高めるのに有用な人という基準でお願いしている

Q15 1393 社内に女性取締役がいないが、今後の対応は?

A15 私鉄のなかでは女性の役職者は多いほうではないかと思う 採用においても女性が3割を占めており、管理職の15%が女性になっている 東証と通産が選出している「なでしこ銘柄」にも4年連続で選ばれている女性が比較的働きやすい会社だと認識している 子会社には女性社長もいる