著者は米国の裕福な家庭で生まれ育った人だが、日本の文化に憧れ、日本人の画家と結婚して谷中で長屋暮らしをしているそうだ。日本にはこの本が書かれた時点(1999年)で既に20年ほど暮らしており、その眼で見た日本文化論である。と、書いてしまうとお決まりの薄っぺらな独断偏見書き散らかし、と先入観を持つ人も少なくないかもしれない。しかし、文章に情緒的な空回りがないわけではないが、著者がしっかりとした哲学を持って生きていることがよくわかる。そういう人の言葉だからこそ、些細な日常生活のなかの出来事に、生きる意味とか人生についての深い洞察が感じられる。もちろん、全部が全部納得できるわけではない。そこには個人の考え方の違いというより、やはり超え難い文化の壁を感じることもある。ただ、そうした違和感が本書の持つ価値を損じるものではない。時に耳の痛い指摘もあり、己の思考や行動を反省する材料も豊富に散りばめられている。思考の刺激に良い本だと思う。
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