食事のときに足を組む奴は嫌いだ。化粧が濃いのも嫌だし、爪をゴテゴテ飾りたてているのを見ると、一体真面目に生きる気はあるのかと呆れてしまう。酒がまわって危うくなるのは人としてどうかと思うし、手を叩いて大笑いするなどもってのほかだ。
今夜は友人と銀座へ食事に出かけてきた。それで、こいつがそのもってのほかの奴なのである。小さなビストロのカウンター席に腰掛けてワインと美味しい料理をいただきながら、たいへんに盛り上がった。途中からは店の人も交えて愉快に4時間近くを過ごした。それで思ったのが、何をしても許される奴というのがいて、どんなに頑張っても嫌われる奴というものいるということだ。
結局は育ちなのだろうか。私なんぞは下々のそのまた下々なので、どこか卑屈なところが拭いきれないと自覚している。その点、今日の連れは天真爛漫を画に描いたような奴で、多少お行儀が悪くても「ま、しょうがねぇな」と思ってしまう。外面が良いのでどこに連れていっても安心していられるというのもよい。私はカウンター席で店の人と話ができるところが好きなので、そういうところに付き合ってもらうのだが、誰とでもうまく話を合わせて楽しく過ごすことができるというのは一種の才能ではないかと思う。是非、そういう人徳にあやかりたいと思いながら、時々こうして愉快に時間を共にさせてもらっている。