万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

さらに遠のく日本国のAIIB加盟-内部改革は無理

2015年06月17日 15時08分08秒 | アジア
中国に事実上の「拒否権」…AIIB設立協定
 昨日、中国主導で設立されるAIIBの設立協定の骨子がおよそ固まり、最終案の内容が明らかとなりました。報道によりますと、中国が、事実上の拒否権を持つ仕組みとなるそうです。

 中国が握る事実上の拒否権とは、議決手続きとして、重要案件の成立には議決権の25%の賛成を要するとされたため、出資比率で30%を占める中国が反対すれば、議案が不成立なることによります。拒否権の対象となる重要案件としては、理事会の構成変更、増資、総裁選出などが挙げられていましたが、議決手続きの変更や新規加盟国の承認も当然に”重要案件”となることでしょう。また、創設メンバー国には、特別に議決権を上乗せするとも報じられております。日本国は、AIIBの不透明性や中国の政治的な意図への警戒感から参加を見送りましたが、AIIBへの参加を主張する人々は、内部からの改革を訴えて参加を促してきました。AIIBの国際機関としての不備や問題点は、日本国が参加すれば内部改革で解決できると…。こうした淡い期待は、今般のAIIBの協定内容によって打ち砕かれてしまったようです。上述した仕組みでは、たとえ日本国が相当額の出資を以って加盟したとしても、日本国の議決権は低く抑えられるでしょうし、中国が、拒否権を手放すはずもなく、しかも、中国の利益となる案件のみに融資が集中する可能性もあります(日本国にとっては政治・経済的リスクとなる…)。欧州諸国の多数が参加して協議しても、中国主導を崩し、不透明性を改善できなかったのですから、況してや、日本国が加盟したところで、内部改革などできるはずもありません。

 AIIB設立協定からしますと、やはり、日本国の参加見送りの判断は正しかったようです。仮に、”バスに乗り遅れるな”とばかりに早々と加盟を表明していたとしますと、今頃、日本国政府は、国民からの批判の矢面に立たされていたのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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