万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

NATOから学ぶ集団的自衛権の効果

2015年06月21日 15時20分53秒 | ヨーロッパ
 クリミア半島の強引な併合とそれに続くウクライナ内戦により、今日、NATOとロシアとの対立は先鋭化しております。本日の報道によりますと、NATOは、来年7月に正式発足を予定している速攻部隊に、フィンランドやスウェーデンといったNATO非加盟国の参加をも検討しているそうです。

 NATOが速攻部隊の設立に踏み出した理由は、旧ソ連邦の復活を目指すロシアによる拡張主義があることは否定し得ないことです。ロシア側の攻撃的な行動への防御反応として、NATOは、軍事力の強化と加盟国間の結束を固めているのであり、非加盟国の速攻部隊への参加は、対ロ包囲網の範囲を広げつつあることを示しています。そしてそれは、NATOに加盟していないフィンランドやスウェーデンの安全を保障することでもあるのです。冷戦崩壊後も、ロシアは、グルジアやウクライナに対して軍事介入を実行しましたが、NATOの加盟国に対する攻撃的な行動は控えています。NATOは、実際に、対ロ抑止力において集団的自衛権の効果を発揮してきましたし、今後は、その安全保障のネットを非加盟国にも及ぼそうとしているのです。こうした一連のNATO側の動きに対して、少なくともヨーロッパにおいては、”ヨーロッパが軍国主義化した”とか、”ヨーロッパが戦争を準備している”といった批判の声は聞えてきません。

 翻って今日のアジアの安全保障に目を向けますと、中国の軍拡と領土拡張主義が露わになりながらも、集団的自衛体制らしき安全保障のネットは未だにおぼろげな姿しか見せておらず、日本国内では、安保法案をめぐって集団的自衛権すら否定する論調が散見されます。今日、学ぶべきは、集団的安全保障機構の平時における抑止力と有事における合同軍事展開能力であり、現実の危機に対する対応の迅速性なのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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