万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIBはマーシャルプランと真逆では?

2015年06月30日 17時41分00秒 | 国際経済
AIIB創設決定、国際社会の信頼が鍵
 昨日、加盟50カ国の代表が設立協定に署名したAIIB。ところで、最近、AIIBは、”中国版マーシャル・プラン”との説が唱えられていることを知りました。

 今日のAIIBと第二次世界大戦後にアメリカが実施したマーシャル・プランは、インフラ資金を要する諸国への巨額の資金を提供という側面においては、共通点があるように見えます。しかしながら、この両者、真逆としか言いようがないのではないかと思うのです。第一に、マーシャル・プランには、アメリカによる反共政策の意味合いがあり、欧州諸国の経済復興を経済面から支援することで、西側自由主義国陣営を強化するとなることが期待されていました。一方、中国共産党が主導するAIIBは、共産主義とは言わないまでも、中国共産党の支配力を融資対象国に広げる目的が見え隠れしています。第二に、マーシャルプランの主たる支援方法は、無償の贈与でした(凡そ総額の80%)。有償借款は全体の10%程度であり、年利は2.5%、返済期間は33年という借り手に有利な条件でした。でこの点、AIIBの”儲け主義”が既に指摘されているように、経済支援というよりは、相手国の資金不足に乗じた融資事業による”高利貸し”です(外貨調達手段との見方も…)。第三に、マーシャル・プランでは受け入れ国がOEECを設立し、西側陣営として、加盟国間の結束を固めるましたが、AIIBのメンバーには、欧州諸国とロシア、イスラエルとイランといったように、政治的対立する諸国が顔を揃えるております。さらに、第四として、マーシャル・プランは、加盟国間の貿易自由化のステップともなりましたが、AIIBでは、加盟国の自由貿易に関する行動については音沙汰なしです。AIIB発足後の中国は、マーシャル・プラン後のアメリカのように、”世界の消費地”になるのでしょうか(ならないのでは…)?

 これらの他にも相違点はあるのですが、少なくともAIIBを”中国版マーシャル・プラン”と見なすのは無理があり過ぎます。”中国版マーシャル・プラン”が、仮に、中国によるイメージ作戦であるとしますと、”宣伝に偽りあり”と云うことになるのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする