万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国憲法第9条の憲法解釈の基準は国際法では?

2015年06月10日 14時57分04秒 | 日本政治
安保法案「憲法と整合」=中谷防衛相、「適応」発言を訂正―衆院特別委
 安保法案については、憲法学者による違憲意見が相次いだことから、”現行の法案は違憲である”とするイメージが広がりつつあります。しかしながら、そもそも、憲法の解釈は、何を基準とすべきか、と言う問題が問われていないと思うのです。

 日本国憲法は、国内法である憲法において、国の防衛や安全保障に関わる制約を置いている稀な憲法です。ドイツやイタリアなどの憲法にも侵略戦争を禁じる条文を見ることができますが、日本国憲法の第9条では、”戦争”に対して”侵略戦争”といった明確な限定化がなされていません。このため、条文の解釈の幅は、完全無防備論から無拘束論まで、極めて広くならざるを得ないのです。憲法の条文の文言が曖昧であり、解釈の幅が広い場合、憲法解釈は、一体、何を基準にすればよいのでしょうか。ここで考えるべきは、防衛や安全保障の分野における国家の行動に関する規範は、基本的には、国際法によって律せられていることです。一国だけで戦争が闘われることはあり得ず、防衛や安全保障の分野には、必ずや相手国が存在します。つまり、防衛や安全保障は、敵味方となる双方の国家や陣営に対して等しく法的な拘束力を有する法こそが適用される分野であり、一国レベルの”自主規制”は、意味がないのです。他の諸国に見られる”侵略戦争の禁止”も、侵略認定の問題は別としても、国際社会の一般原則として侵略を禁じている国際法と合致しております。そして、国際法に合致している限り、個別的自衛権であれ、集団的自衛権であれ、主権国家の防衛の権利を損なうこともないのです。

 このように考えますと、日本国憲法第9条は、国際法を基準として、国際法が禁じる戦争を放棄していると解釈すべきであり、安保法案も、国際法に違反しない限り、合憲とすべきではなのではないでしょうか。そして、憲法解釈の広さが日本国の安全を脅かし、かつ、国際平和への貢献の妨げとなるのであれば、憲法改正に正面から取り組み、憲法と国際法との明確なる整合化を図るべきと思うのです。

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コメント (2)
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