万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海埋め立て問題-中国の”合法”は国際法では違法

2015年06月01日 15時22分49秒 | アジア
岩礁埋め立て「合法で正当」=米の立場に断固反対―中国
 昨日、アジア安全保障会議の席で、人民解放軍の孫建国副総参謀長が説明した南シナ海の埋め立て強行の言い訳には、驚きを禁じ得ません。平然と、埋め立ては、”合法で正当”と言い放っているのですから。

 そもそも、南シナ海において、中国は、岩礁に関する権利を主張している国の一国に過ぎず、埋め立て海域は、国際社会において中国による領有が認められているわけではありません(中国は、南シナ海に九段線を引き、マレーシアあたりまで管轄権を一方的に主張している…)。係争地でこそあれ、”合法的”に埋め立てを強行する権利などないのです。ですから、仮に中国が、今後とも埋め立てを続行し、軍事基地を建設しようとするならば、第一に、領有権を主張している他の諸国との交渉による合意、あるいは、司法的手続きで解決すること(フィリピンが常設仲裁裁判所に提訴し、ベトナムとマレーシアも大陸棚限界委員会に申請を行っている…)、かつ、第二に、国連海洋法おける岩礁ではなく島であることが認められる必要があります。島でなければ、領海、領空、EEZ…を設定できませんし、軍事基地化などもっての他なのです。今のところ、中国の言い分とは、”争う余地のない歴史的及び法的証拠により支えられている”というものですが、歴史的にも、法的にも、中国の主張は証明されておりません。と申しますか、歴史的にも法的にも証拠が存在しないのが現状なのです。こうした状態にあって、中国が埋め立てを”合法で正当”と言い張るとしますと、それは、国際法に対する重大な挑戦であり、無法者と見なされても致し方ありません。中国の言う”合法で正当は”は、国際法では”違法で不当”なのですから。

 埋め立ての目的に軍事使用が含まれることを遂に認めたように、中国の戦法は、常に”既成事実化”です。仮にこのような前例が造られますと、南シナ海のみならず、全ての公海は、中国によって浸食されかねないと思うのです。

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コメント (2)
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