万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

複雑なる日独関係-ドイツが中国を偏重する理由

2015年06月29日 14時56分00秒 | 国際政治
 最近の日独関係を見ておりますと、どこか、ぎくしゃくした雰囲気が漂っております。この両国間の不調和音、メルケル首相訪日の際にもその発言をめぐる一騒動があったように、どうやら”歴史問題”も関連しているようなのです。

 第二次世界大戦において両国が枢軸国陣営を形成したこともあり、かつては、日独双方ともに、ある種の親近感を抱いておりました。戦後間もない頃にヨーロッパを訪れた日本人の多くは、旧敵国民として冷ややかな視線を投げかけられることも少なくなかったのですが、ドイツ人だけは、戦争を共に戦ったとする意識からか、比較的好意的であったと伝わります。ところが、第二次世界大戦をヒトラー率いるナチス・ドイツの責任に帰したドイツの戦争の総括と、それに基づく戦後教育は、ドイツ人の対日感情にも暗い影を落とすことになりました。ナチス・ドイツを全否定するスタンスからしますと、その悪しきナチスと手を結んだ日本国もまた、”悪の枢軸”の一国と見なさざるを得なくなるからです。戦後教育世代が国民の大半を占める今日では、戦後直後の盟友感情は薄れてゆきます。東西ドイツ再統一後は、旧東ドイツが残した共産主義イデオロギーによる懲罰論の影響が、反日ドイツ人を増やしたことでしょう。しかも、戦後ドイツの歴史観は、日本国はナチスと同レベルに極悪でならねばならないわけですから、自ずと、中国や韓国の”歴史認識”と一致してしまうのです。この結果、ナチスの全面否定に駆られたドイツが、一党独裁、領土拡張主義、自国民優越主義、自国民弾圧(チベット、ウイグル人…)…などにおいて、ナチス・ドイツと共通する要素を最も多く備えている中国に接近するという、皮肉な現象が起きているのです。

 さらに日独関係を複雑にしているのは、戦前の日本国は、ナチスに並ぶほど極悪ではなかったことです。敗戦色濃きドイツに対して最後まで同盟を破棄しなかった日本国の律義さに、かのヒトラーでさえ感嘆したと伝わります(迫害を受けていたユダヤ人の多くも救っている…)。日独間の蟠りが解ける日を待ちつつ、せめてドイツには、現在の中国が内包しているナチス的要素から目を背けず、その先に如何なる悲劇が待ち受けているのかを、歴史の教訓から見抜いていただきたいと思うのです。悪しき体制は、周辺諸国を、全世界を、そして、自国民をも不幸にすると…。

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コメント (6)
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