万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米世論調査―調査してほしかった超大国中国が支配する未来への評価

2015年06月24日 15時08分40秒 | 国際政治
5割超、同盟国防衛を支持=中国と武力衝突の場合―米世論調査
 米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨日発表した世論調査の結果によりますと、同盟国が武力攻撃を受けた場合、アメリカは同盟国を防衛すべきか、という設問に対して、米国人の56%が同盟国防衛を支持したそうです。アメリカの同盟国である日本国といたしましては、まことに心強い限りです。

 その一方で、中国に対する質問では、将来、中国がアメリカに代わる超大国になるとする予測が多数を占めたとも伝わります。超大国化に否定的な回答を示したのは、調査を実施した40の国・地域のうち、米国、インドネシア、フィリピン、日本、ベトナム、ブラジル、ウガンダのわずか7カ国であったそうです。13億の人口と、減速したとはいえ、比較的高い経済成長率が報告されていることからしますと、アメリカを凌ぐ中国の超大国化は、当然の成り行きに思えたのでしょう。しかしながら、当調査においては”超大国”の定義が曖昧であり、”超大国”が軍事力、経済力、国際社会における指導力など…何れに重点を置いた判断なのか判然とはしません。そして、何よりも、中国の超大国化に対する評価を問う設問がないのが残念なところです。中国は、一党独裁体制の共産主義国であり、人権侵害国家であると共に、主権平等、民族自決、紛争の平和的解決…といった国際社会の原則を無視しております(中国の属国となるリスク)。無法国家とでも言うべき国が”超大国”の座にあって国際社会に君臨する未来を、それぞれの国や地域の人々は、果たして望ましいと考えているのでしょうか。この点こそ、将来の国際社会を占う上で重要です。人間とは、予測される結果が望ましくないと考える場合には、それを避けようと行動するからです。

 当調査が、同盟国に対する攻撃の可能性と中国の超大国化の両設問を同時に設定したのは、中国が超大国化の過程でアメリカと軍事衝突することを予測してのことと推測されます。そして、仮に、アンケートで中国の超大国化の”結果”に対する評価が問われたとすれば、それは、多くの諸国が、人類の未来を共産国家中国に託すことを拒絶していることを示すことになったのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申しあげます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする