万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日韓世界遺産登録協力-”百済”や”慰安婦”で対立が再燃?

2015年06月22日 14時50分51秒 | 国際政治
日韓、世界遺産問題ともに譲歩 慰安婦問題はなお隔たり
 日韓基本条約から50年という節目にあって、昨日は、”ご祝儀相場”とでも言うような日韓の協力合意が成立したそうです。両国とも、相手国の世界遺産登録に協力するという…。しかしながら、この問題、これで一件落着するとは思えないのです。

 報道によりますと、合意の内容は、日本国側が「明治日本の産業革命遺産」について韓国人の戦時徴用に言及する代わりに、韓国側は、登録に反対しないというものです。朝鮮半島からの戦時徴用は、戦争末期の僅か1年に過ぎませんので、明治期の遺産に敢えて書き込む必要はないのですが、ユネスコの世界遺産委員会での採決を避けるために、日本側が譲歩したとの見方が有力です(もっとも、韓国の圧力による譲歩によって書き込むぐらいならば、登録を見送るべきとする意見もある…)。その一方で、さらに気になる報道もあります。徴用工の記載に加えて、今後、日本国は、韓国の遺産登録にも協力するというものです。韓国が予定している遺産としては、「百済の歴史遺跡地区」の名が挙がっていましたが、百済問題は、古代史における日韓の対立点でもあります。韓国の歴史教科書では、”百済文化は日本文化の起源”であると教え、百済に日本人が居住していた史実も否定しているそうですが、日本国では、日本文化は、諸外国からの文化を吸収しつつも、独自の文化的発展を遂げてきたとし、実際に、その発展過程を遺跡や遺物から裏付けることができます(縄文文化、弥生文化、古墳文化…)。また、『日本書紀』には、百済には日本領があったと明記されており(『魏志』韓伝でも、『隋書』でも、半島南部は倭人居住地区としており、後には、任那日本府も…)、継体天皇の時代に、百済4県を割譲したと記されています。前方後円墳など、百済地区に日本様式の遺跡が残されているのもこのためであり、考古学的な発掘物は、日本の記述の正しさを裏付けているのです。こうした日韓の古代史をめぐる対立を考慮しますと、韓国が「百済の歴史遺跡地区」を申請するに際し、韓国の”歴史認識”を以って登録しようとした場合、日本側の反発は必至です。史実に反して、自国の文化の起源が、韓国に帰されてしまうのですから。

 日韓の世界遺産登録の協力が、日本国による韓国の”歴史認識”の無条件なる承認と、世界遺産制度を通した史実としての”世界史化”を意味するとしますと、この譲歩は、後世に禍根の残します。しかも、韓国は、中国と共に”慰安婦”を世界記録遺産に登録するための活動をも開始しております(まさか、この登録でも日本国は協力?)。結局、日韓の記録遺産登録をめぐる協力は、百済問題や慰安婦問題においてご破算になるのではないかと思うのです(これらの問題では、日本側は、決して譲歩できない…)。

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コメント (2)
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