万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は南シナ海に”習近平ライン”を敷くのか?

2015年06月26日 09時26分30秒 | 国際政治
中国、越漁船2隻を拿捕=南シナ海
 中国の埋め立て強行によって緊張が高まる南シナ海。24日まで開かれていた米中協議でも、自制を求めるアメリカ側の要求に対して中国側は全く耳を貸そうとせず、”南シナ海に危機はない”の一点張りであったと伝わります。

 中国の頑なな姿勢は、遂に南シナ海における実力行使として表面化しています。昨日、ベトナム外務省報道官が発表したところによれば、中国船によって2隻のベトナム漁船が同海域で拿捕され、一隻は解放されたものの、残る一隻は拿捕されたままなそうです。同国政府は、早期の解放を求めていますが、中国は、同海域に一方的に”主権と領域”を設定する方針を貫く構えを見せておりますので、解放の見通しは不透明です。拿捕された海域が公海であれば、海賊等ではない限り、特定の国が自国の行政権を行使して他の国の船舶を拿捕できるはずもなく、国際法違反であることは明白です。また、南シナ海は紛争海域ですので、各国が主張するEEZが重なる海域で拿捕されたとしても、一方的な行政権の行使には問題があります(6月26日22時修正)。この中国の行為、海上主権宣言に基づいて、一方的に排他的軍事・経済水域を敷いた韓国の”李承晩ライン”を思い起こさせます。13年間に及ぶ国際法違反のライン設定によって、328隻の日本漁船が拿捕され、日本人拘留者は3929人、死傷者は44人を数えたに留まらず、日本領であった竹島も強奪されました。こうした惨劇が、南シナ海において繰り返されようとしております。今日、中国が一方的に南シナ海に敷こうとしている排他的水域は、さながら”習近平ライン”と名づけることができるかもしれません。

 中国の脅威の本質とは、その身勝手極まりない行動を容認すると、国際社会の法秩序が根底から覆されるところにあります。南シナ海に”習近平ライン”を出現させてはならず、国際社会は、何としても、中国を国際社会の共通ルールである国際法に従わせなければならないと思うのです。

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コメント (2)
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