万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の”同意なき仲裁批判”は的外れー国内法では当たり前

2016年07月08日 10時16分39秒 | 国際政治
国連事務総長、中国外相と会談 南シナ海問題を協議
 オランダのハーグに設置されている常設仲裁裁判所での裁定を12日に控え、国際社会における中国の活動も活発化してきております。昨日は、中国の王毅外相が、北京で国連の藩事務総長と会談したとも報じられています。
 
 共同記者会見で、国連の事務総長が、王毅外相による国際仲裁批判を隣で黙って聞いているとしますと、これもまた国連の存在意義からして大問題なのですが、王毅外相の主たる批判点は、”対話を拒み、当事国の同意を得ずに一方的に強制的な仲裁手段を推し進めたことは法治の精神に違反する”というもののようです。しかしながら、この批判、的外れとしか言いようがありません。何故ならば、同意なき裁判こそ、”法治の精神”の本質的な部分であるからです。

 法の支配のみならず、たとえ法治主義にあっても、法とは、当人の同意なくして強制的に適用されるものなのです。例えば、”他者の土地を侵奪してはならない”とする法が存在し、この法の下で各自の権利が保障されている状態にあって、ある人が、隣家の土地を侵奪する事件が発生したとします(本件の仲裁では、領有権帰属そのものは裁定の対象とはなっていませんが…)。この場合、侵奪した側の同意がなければ裁判を開くことができない、となりますと、永遠に隣家の土地は奪われたままとなります。侵奪した側が、自らの行為を裁判に付すことに同意するはずもないからです。これでは法秩序は保てませんので、裁判には、必ずしも当事者、特に、違反者側の同意を要しないのです。しかも、本件の仲裁手続きは、国連海洋法条約において正当な手続きとして定められた平和的な紛争の解決手段の一つです。

 仲裁は平和的な紛争の解決手段でありながら、中国は、フィリピンの提訴を一方的であると責めていますが、武力を以って南シナ海を”中国の海”に囲い込もうとしている中国の方が、よほど一方的であり、他国に対して強制的です。また、国連への加盟、並びに、国連海洋法条約の締約国となるに際して、国際法の順守には既に合意しているはずです。”同意なき仲裁批判”は、法秩序というものの本質を理解していない中国の危うさ、あるいは、異質さを、むしろ露わにしたのではないでしょうか。

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