万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海仲裁判決ー誰が公海を防衛するのか?

2016年07月15日 09時44分17秒 | 国際政治
日本政府に申し入れ=判決順守要求に反発―中国
 本月12日に下された南シナ海仲裁判決は、国際社会に対して緊急に取り組むべき課題を提示することにもなりました。それは、”誰が公海を防衛するのか?”という問題です。

 当裁判では、中国が主張してきた「九段線」の違法性、ならびに、スプラトリー諸島の岩礁の地位が争われました。判決の結果、「九段線」の違法性が確定し、満潮時に水没しない幾つかの岩礁には領海設定の資格は認められたものの、”スプラトリー諸島においてEEZを設定できる”島”は存在しない”とする判断が示されたのです。

 この判決により、スプラトリー諸島の周辺海域は、どの沿岸諸国のEEZにも含まれない公海部分が、ぽっかりと出現することとなりました。そして、中国が自国の国内法である「領海法」に基づいて管轄権を及ぼし(EEZの権利も主張…)、防空識別圏の設定まで視野に入れて軍事施設の建設を進めている現状に鑑みますと、公海の水域が、中国によって、”侵略”、あるいは、”不法占拠”されている状況であることになります。このことは、将来においても、全世界の公海において同様の事態が発生する可能性をも示しております。

 ある国によって他国の領域が侵害された場合には、被害国の政府によって個別的、又は、集団的自衛権が発動されると共に、国連の集団的安全保障体制の枠組みにおいて侵害が排除される可能性はあります(常任理事国が拒否権を行使する、あるいは、決議が不成立な場合を除いて…)。しかしながら、公海については、国家のようには侵害排除を任務とする常設の機関は存在しておらず、国連安保理等や有志国で対処するしかなくなります。この問題は、もはや二国間関係に留まらないことを中国政府は理解すべきですし、国際社会もまた、公海防衛について対策を急ぐべきであると思うのです。

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コメント (4)
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