ARFも仲裁判決に触れず=議長声明で―南シナ海問題
今月12日に示された南シナ海問題に関する仲裁判決に対して、中国は、あくまでも拒否する姿勢を見せております。国際法秩序に対する重大な挑戦なのですが、南シナ海仲裁裁判には二つの側面が含まれており、両者の区別は、国際社会が一致して中国に法の順守を求める上でも重要です。
第一の側面とは、法に照らした違法性の審査です。本件では、中国が一方的に主張するところの’歴史的権利’の違法性、即ち、「九段線」の違法性が国連海洋法条約に基づいて、審査されました。結果として、「九段線」は否定され、中国は、南シナ海全域に対する主権的権利を主張し得なくなったのです。この判断は、当然と言えば当然の事であり、国連海洋法条約では、領海、EEZ、大陸棚等の権利について詳細な規定を置いており、これらの規定に違反した権利を認めるはずがありません。中国は、国連海洋法条約の締約国となると同時に、同条約が定める範囲以上の権利を主張することは、違法行為となったのです。「九段線」に関する違法性の判断は、常設仲裁裁判所であれ、国際司法裁判所であれ、如何なる司法機関が判断しても、同一の結論に達することでしょう。
それでは、第二の側面とは、どのようなものなのでしょうか。第二の側面とは、法の創造です。今般の仲裁判決では、島と岩の区別に関する判断も示されています。島と岩の区別については、国連海洋法条約では明記されておらず、各締約国がそれぞれの解釈の下で領海、EEZ、並びに大陸棚を設定してきました(ただし、大陸棚については、大陸棚限界委員会が設置されている…)。第一の側面とは違い、判断の基準となる法文が存在しておらず、こうした問題を司法判断に付す場合、仲裁裁判官の裁量の幅が広くなるという問題が生じます。仮に、今般の仲裁判決に先例拘束性が認められるとしますと、いわば、法の創造、即ち、立法行為としても理解されることとなるのです。
第一の側面として示された中国が設定した「九段線」に対する違法性の判断については、その結論は動かし難く、国際社会は、法の支配を確立する上でも、一致団結して中国に判決内容の誠実な履行を求めるべきです。その一方で、第二の側面については、議論の余地が残されています(ただし、仲裁判決は、将来、法改正が行われない限り、当事国に対しては法的拘束力あり…)。英米法系の諸国は判例に法創造力を認める傾向にありますが、大陸法系の諸国の多くは制定法主義を採用していますので、島と岩の区別については、立法による明確化を要するとする主張がなされる可能性があるからです(条約改正等…)。
今般の仲裁判決では、区別の根拠として4つの基準が示されてはいますが、国際的なコンセンサスを要する問題ですので、後者の問題に関しては、今後、改めて国際社会全体で議論して然るべきではないかと思うのです。
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今月12日に示された南シナ海問題に関する仲裁判決に対して、中国は、あくまでも拒否する姿勢を見せております。国際法秩序に対する重大な挑戦なのですが、南シナ海仲裁裁判には二つの側面が含まれており、両者の区別は、国際社会が一致して中国に法の順守を求める上でも重要です。
第一の側面とは、法に照らした違法性の審査です。本件では、中国が一方的に主張するところの’歴史的権利’の違法性、即ち、「九段線」の違法性が国連海洋法条約に基づいて、審査されました。結果として、「九段線」は否定され、中国は、南シナ海全域に対する主権的権利を主張し得なくなったのです。この判断は、当然と言えば当然の事であり、国連海洋法条約では、領海、EEZ、大陸棚等の権利について詳細な規定を置いており、これらの規定に違反した権利を認めるはずがありません。中国は、国連海洋法条約の締約国となると同時に、同条約が定める範囲以上の権利を主張することは、違法行為となったのです。「九段線」に関する違法性の判断は、常設仲裁裁判所であれ、国際司法裁判所であれ、如何なる司法機関が判断しても、同一の結論に達することでしょう。
それでは、第二の側面とは、どのようなものなのでしょうか。第二の側面とは、法の創造です。今般の仲裁判決では、島と岩の区別に関する判断も示されています。島と岩の区別については、国連海洋法条約では明記されておらず、各締約国がそれぞれの解釈の下で領海、EEZ、並びに大陸棚を設定してきました(ただし、大陸棚については、大陸棚限界委員会が設置されている…)。第一の側面とは違い、判断の基準となる法文が存在しておらず、こうした問題を司法判断に付す場合、仲裁裁判官の裁量の幅が広くなるという問題が生じます。仮に、今般の仲裁判決に先例拘束性が認められるとしますと、いわば、法の創造、即ち、立法行為としても理解されることとなるのです。
第一の側面として示された中国が設定した「九段線」に対する違法性の判断については、その結論は動かし難く、国際社会は、法の支配を確立する上でも、一致団結して中国に判決内容の誠実な履行を求めるべきです。その一方で、第二の側面については、議論の余地が残されています(ただし、仲裁判決は、将来、法改正が行われない限り、当事国に対しては法的拘束力あり…)。英米法系の諸国は判例に法創造力を認める傾向にありますが、大陸法系の諸国の多くは制定法主義を採用していますので、島と岩の区別については、立法による明確化を要するとする主張がなされる可能性があるからです(条約改正等…)。
今般の仲裁判決では、区別の根拠として4つの基準が示されてはいますが、国際的なコンセンサスを要する問題ですので、後者の問題に関しては、今後、改めて国際社会全体で議論して然るべきではないかと思うのです。
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