万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮は自滅するのか?

2017年02月24日 15時32分25秒 | 国際政治
【金正男氏殺害】「北朝鮮は無礼だ」東南アジア友好国との関係に亀裂 炭鉱などに労働者派遣して搾取
 マレーシアの空港における金正男氏暗殺事件は、マレーシア当局の捜査によると、北朝鮮政府による犯行とする見方が強まってるそうです。メディア各社も関連記事を盛んに報じておりますが、中でも驚かされるのは、金正男氏のみならず、金正恩氏に関しても暗殺情報があることです。

 金正恩氏暗殺説の根拠として挙げられているのは、近影として公表された写真です。これらの写真の多くは、以前に撮影された金正恩氏の写真と比較すると耳の形状等において違いがあり、”影武者”である可能性が極めて高いというのです。仮に、本物ではないとすると、その理由は、凡そ二つほどシナリオが想定されるそうです。

 第一の推測は、既に金正恩氏が暗殺されてしまっており、その事実を隠すために、”替え玉”を用意したというものです。仮に正恩氏暗殺が事実であれば、正男氏の暗殺は、北朝鮮が切羽詰まった状況にあった故の犯行である可能性を示しています。つまり、正恩氏の死亡が明らかとなればトップ交代は不可避となりますので、後継者として正男氏が北朝鮮入りを果たす前に事前にその可能性を摘んでしまったというものです。このシナリオでは、暗殺を隠蔽してきた北朝鮮の”影の権力者”が暗殺を計画し、実行に移したことになります。

 第二の推測とは、金正恩氏が、極度に暗殺を恐れているというものです。正恩氏は、国内において人心を掌握し切れておらず、表舞台に登場すると、四方から命を狙われる可能性があります。海外にまで暗殺工作を仕掛けるぐらいですから、暗殺の技術だけは、世界でもトップクラスのはずです。自らが育てた高度な暗殺技術が自らに襲い掛かる可能性があるのですから、出来得る限り自らを公衆の前に晒すことを回避したいとする独裁者の心理がもたらす一種の”引き籠り”として理解できます。そして、自らの命を狙っている国内の暗殺組織の”黒幕”こそ、正男氏であると見なした場合、非情な手段を以って長兄を亡き者にした可能性も否定はできないのです。

 何れであれ、北朝鮮の現状が常軌を逸していることだけは確かなのですが、この不安的な状態を長期にわたって維持することは極めて困難です。第一の推測であれば、金正男氏の”王朝継承”を阻止には成功しても、トップが既に不在な状態では、円滑な権力の継承は殆ど不可能です。”影の権力者”が表に登場するケースも想定されますが、金一族を神格化することで独裁体制を維持してきただけに、統治体制に綻びが生じる可能性が高まります。また、第二の推測でも、トップが表に出られない状況が長期化しますと、国民の間に疑惑が広がると共に、軍組織の指揮命令系統にも混乱を来す恐れがあります。誰の命令なのか、確信を持てなくなるのですから。


 国際社会の関心は、金正男氏の暗殺事件に集中していますが、北朝鮮国内における異変にも注意を払う必要がありそうです。仮に、指摘されているように金正恩氏の”影武者”が実在するならば、北朝鮮の自壊は時間の問題となるのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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