万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカ大統領令ー安全に関わるリスク判断は政治問題

2017年02月13日 14時08分49秒 | アメリカ
米政府高官 大統領令停止であらゆる対応策検討
 トランプ大統領が先日発した入国制限に関する大統領令は、司法の判断により、その効力が停止された状態にあります。この結果、入国禁止措置も解除されていますが、国民や国家の安全に関わる入国管理の判断は、やはり政治問題なのではないでしょうか。

 何故ならば、安全に関する十分かつ正確な情報は、政府しかアクセスできないからです。アメリカ政府には、海外で活動を展開する情報機関としてCIAが設置されていると共に、国内にあっても、FBIは、公安に関する情報収集にも従事しています。機密情報を含めて重要な情報は大統領に報告されており、大統領の政策判断に影響を与えているのです。言い換えますと、アメリカ大統領とは、唯一、全ての情報に接した上で、国家、並びに、国民の安全のためのリスク判断に全責任を負う立場にあるのです。

 一方、司法部門は、法律に照らして権限逸脱をチェックしたり、合憲性や合法性を判断することができますが、安全に関するリスクを判断をする権限はありません。この点、かつてオバマ前大統領が発した大統領令が司法によって違憲と判断されたのは、その内容が、違法に入国した密入国者の滞在や就労を合法化しようとするものであったからです。つまり、この場合には、裁判所は、”大統領令であれ、違法行為を合法化することはできない”とする法治国家の原則を貫いたものと理解されるのです。

 国家、並びに、国民の安全に関するリスク評価が、正確、かつ、豊富な情報に基づく高度に政治的な判断である以上、国民に対して直接にリスク責任を負わない司法部門による差し止めは、無責任と言えば無責任です。メディアをはじめ、大統領令に対する批判は止む気配は一向に見えませんが、リスク管理の強化は全ての国民に安全と安心を与えるのですから、一面的でステレオ・タイプの批判は、国民軽視の態度と言わざるを得ないのではないでしょうか。

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コメント (2)
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