万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

保護主義批判が自国経済を苦しめるー政府は東芝の救済を

2017年02月14日 15時07分26秒 | 国際経済
東芝、きょう発表予定の決算を1カ月延期 米原発会社の買収めぐる「内部通報」で調査必要に
 アメリカがTPPからの離脱を決定したことから、日本国の政府もメディアも、保護主義批判一色に染まっております。安倍首相は、訪米に際してトランプ大統領にTPPの意義を説明したとも報じられていますが、保護主義を”悪者認定”しますと、ブーメランとなって自国の経済をも苦しめる結果を招くのではないでしょうか。

 目下、米原発力子会社ウィスティングハウス・エレクトリック社による買収をめぐり、巨額の損失を発生した東芝は、最悪の場合、東芝グループの解体や倒産まであり得るとまで囁かれております。”虎の子”の半導体メモリー部門についても、本体から切り離して子会社した上で、他社からの出資を受け入れる方針を示しています。既に入札も始まっておりますが、日本企業のキャノンが断念したことで、入札企業は、アメリカ、台湾、中国、韓国等々、全て外国企業ばかりとなりました。出資比率は20%程度とされておりますが、3割まで引き上げる案も検討されており、競争当局の許可というハードルがあるものの、将来的には、外国企業が主導権を握る展開も予測されます。東芝については、既に白物家電部門が中国の美的集団に買収されいますが、製造業は裾野が広いだけに、東芝グループの”身売り”によって、キャノンの御手洗会長が既に指摘されたように、日本国内の雇用にも多大な影響が生じる可能性も否定はできません。日本国政府は、東芝の事態を静観しているようですが、如何なる国でも、国内雇用への配慮から企業救済措置を実施しており、この点、政府の態度は冷淡です。

 日本国には、日本政策投資銀行や日本政策金融公庫などの政府系金融機関が設けられており、東芝の件も、こうした金融機関が融資や出資を行えば、日本経済の衰退や雇用不安を起こすことなく軟着陸できるはずです。外国に対する金融支援には大盤振る舞いをしながら、足元の自国企業の危機に対しては何らの措置も採らないとなりますと、政府の方針は、本末転倒と言わざるを得ません。自国民や自国企業の保護は、政府の基本的な役割の一つなのですから、日本国政府は保護主義批判によって自らの政策手段を縛ってはならないと思うのです。

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コメント (4)
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