万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ大統領円安誘導批判問題ードル高はドル決済の運命では?

2017年02月03日 15時13分11秒 | 国際経済
日銀緩和は「国内のデフレ是正のため」 麻生氏、トランプ氏の「円安誘導」批判に反論
 アメリカのトランプ大統領は、米国製品の輸出を拡大すべく、日本国に対しても”円安誘導”を批判しております。批判の対象は、当局による為替市場への直接的介入に留まらず、日銀の量的緩和策にも及んでいるようです。

 日本国政府は、ここ数年来、市場介入は控えているものの、アベノミクスの一環として”異次元緩和”と称された大規模な量的緩和を実施しています。デフレの是正といった国内向けの政策であっても、量的緩和政策は対外的には自国通貨安を招きますので、仮に、量的緩和策を封じられますと、日本国としては経済の停滞をも招きかねず、相当の痛手となります。しかしながら、この米ドル安政策は、大統領が期待するほどには効果は上がらないのではないかと思うのです。

 その理由は、日米貿易における決済通貨は、一般的には米ドルであるからです。為替市場における通貨取引によって相場が決定される現在の変動相場制では、貿易決済通貨の選択が為替相場に少なくない影響を与えます。日米貿易において決済通貨が米ドルであることは、両国間の輸出入の比率に関係なく、貿易量に比例してドル需要が増すことを意味します。言い換えますと、現在、日本国は対米黒字国ですが、今後、アメリカの対日輸出が増加した場合でも、外国為替市場ではドル需要が増すと予測されるのです。ドル需要の拡大は、市場の取引においてドル高をもたらしますので、米製品の輸出拡大と米通貨安の目的を同時に達成することは至難の業と言わざるを得ないのです。しかも、貿易面のみならず金融面においても、米国内への製造業回帰やインフラ整備等によって景気回復への期待が高まれば、投資資金のアメリカ国内への流入も予測され、米ドル需要の増加とそれに伴う相場上昇もあり得る展開です。

 国際基軸通貨であり、かつ、世界大の貿易決済通貨であることこそ、米ドルの強みです。このため、巨額の貿易赤字を抱えていても、アメリカには、デフォルトの心配は殆どありません。一方、日本国の場合には、米ドル安政策の煽りを受けて輸出産業が壊滅的な打撃を受ければ、米国製品を輸入したくても、外貨さえ不足する状況に陥ります。日米貿易における決済通貨を円に替えるという方法もありますが、米ドルの国際的な地位低下を意味しますので、アメリカにとりましては”痛しかゆし”となりましょう。貿易不均衡問題の解決は、相互に強みを生かしあう関係、あるいは、内需拡大とリンケージした調和的な経済の構築を目指す方が、潰し合いとなるよりも、より建設的なのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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