万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

諸悪の根源は“金王朝”軍事独裁体制

2017年09月24日 15時25分33秒 | 国際政治
ミサイル「米全土到達」警告=トランプ氏に猛反発―北朝鮮外相
 北朝鮮の李容浩外相は、9月23日に国連総会においてトランプ大統領の演説を批判し、国際社会に向かって先制攻撃をも辞さない構えを示したと報じられております。この演説、いわば、“無法国家宣言”、あるいは、“宣戦布告”と言っても過言ではなく、北朝鮮という国が如何に危険な国であるのか、自ら証明しております。

同演説では、“いざ戦争となれば、自殺行為となるのはアメリカの方であり、無辜のアメリカ市民が犠牲となってもその責任は、トランプ大統領にある”とも述べております。常々、北朝鮮は、自らへの批判を相手国に対して“おうむ返し”をし、対等の立場を保とうとしています。しかしながら、アメリカ、並びに、北朝鮮を批判する常識的な諸国は、北朝鮮を国際法に違反する“悪しき国”と認定しており、犯罪国家として成敗される対象でこそあれ、対等の立場とは認めていません。これらの国からしますと、凶器を手にした犯罪者が警察官に面と向かって、“お前やお前の処の無辜の一般人を俺様が殺しても、お前の責任だ”と言っているように聞こえるのです。この言い分は、聞いている方としては唖然とさせられるのですが、北朝鮮は、本気なのです。

何故、北朝鮮は、こうした倒錯した発言ができるのか、その理由を探りますと、第一に、そもそも、法の役割も法秩序をも理解していない点を挙げることができます。中国大陸でも、“道徳とは他者を縛るためにある(自分自身は拘束されない…)”と考えるそうですが、北朝鮮も同様であり、北朝鮮は、法の存在は認識していても、それは、自らの利益のために悪用する対象でしかありません。その証拠に、北朝鮮の法解釈の基本姿勢は、反対解釈です。反対解釈とは、ある法律が特定の行為を禁じている場合、禁じられていない行為は全て許されるとするものであり、北朝鮮は、この解釈法を以って法の抜け道を探しては合法性を主張し、自己正当化を図ろうとするのです。

第二に、北朝鮮の体制を支える主体思想そのものが、理性から逸脱した危険思想であることです。同国の建国の理念であった共産主義も、暴力革命や虐殺を是認する危険思想ですが、加えて主体思想は、独裁者、並びに、自国の主体性のみを絶対化する利己主義の権化のような思想です。言い換えますと“自己絶対主義”であり、この思想の下では、一般国際法(法)も二国間条約(合意)も意味はなく、常に「自分が正しい」、すなわち、自身を“絶対善”とみなしますので、自国に敵対する諸国や勢力、及び、主体思想と相いれない価値観は無条件に“絶対悪”として見なされるのです。つまり、同国に対して善悪の区別を説いても、無駄と言うことになります。

第三に指摘し得る理由は、休戦中とはいえ、朝鮮戦争以来の戦時状態こそが、“金王朝”軍事独裁体制を支えている点です。北朝鮮側が、今般の問題を南北統一の政治問題として見なしたい背景には、犯罪国家の認定を避けたい思惑と並んで(もっとも、他の諸国は既に認定している…)、戦時非常状態こそ、あらゆる国際法の拘束から逃れる口実であると見なしているからです。国家防衛を根拠や理由に挙げれば、如何なる違法行為も許されると信じているのです。国際法でも正当防衛権は認めていますが、攻撃兵器の開発と保有を目論む北朝鮮のケースは明らかに過剰防衛です。国家存亡の機と言うほどの差し迫った脅威がないにも拘わらず、北朝鮮は、国際法で定めた行動規範を逸脱し、暴力を唯一の手段とする無法者として行動しているのです。そして、恒常的な戦時状態なくして“将軍様”の存在意義はない故に、本心では平和の到来を怖れ、現状維持を望んでいるのでしょう。平和が訪れれば、外敵に対する団結を理由に国民に貧しい生活を強い、搾取することは最早にはできないのですから。

 このように考えますと、諸悪の根源は、危険思想や狡猾な思考が複合的に絡み合いながら体制化された北朝鮮という国そのものにあるように思えます。即ち、“利己的他害性”と言う悪の本質を是として建国された北朝鮮の体制が存続する限り、北朝鮮問題は、根本的には解決しないのではないでしょうか。人類を無法地帯に変貌させかねない北朝鮮という国の消滅(体制崩壊)こそ、人類にとりましては、悪の排除という側面において朗報であると思うのです。

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コメント (2)
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