国連安保理、北朝鮮制裁決議案を全会一致で採択
本日、国連安保理では、原案に大幅な修正を加えた形で対北経済制裁決議案が全会一致で採択されました。予定されていた全面的な石油禁輸措置は上限設定に緩められ、金正恩朝鮮労働党委員長に対する資産凍結なども見送られるという“骨抜き決議”となったのです。
修正の背景としては、北朝鮮の早急な混乱を避けたい中ロによる強固な反対に対して、早期、かつ、全会一致での決議成立を優先したアメリカ側の妥協が指摘されております。しかしながら、本提案の目的が、強力な経済制裁を以って北朝鮮を“兵糧攻め”にし、依って核、並びに、ICBMの開発・保有の放棄を迫るものであるならば、優先順位をはき違えた本末転倒という他ありません。修正案によって合意された主たる項目を検討しましても、悲観的とならざるを得ないのです。
第一に、石油部門については、原油は過去12か月分が上限とされ、400万バレルの現状の輸出量がそのまま維持される一方で、石油精製品については、年間200万バレルの上限が設定されました(ただし、コンデンセートと天然ガスについては全面禁輸)。アメリカ政府は、この措置で石油輸出量を3割ほど削減できると説明しておりますが、北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させ得るほどではなく、開発完了時期を遅らせる程度の効果しか期待できません。また、公海における禁輸品輸送が疑われる船舶の臨検についても、旗国の合意を要する方向で修正されたため、密輸を取り締まることもままならないのです。しかも、陸運面でも、中国との国境地帯では(元瀋陽軍区)、既に石油の密輸が横行しているため、石油部門での制裁効果は望み薄です。
第二、北朝鮮製の繊維については全面的な輸出禁止となり、今年度の貿易額から算定すれば、北朝鮮は、7億5200ドル程度の減収が見込まれています。繊維産業は石油に次ぐ主要な輸出品ですので、比較的高い制裁効果が期待される部門ですが、輸出の8割が中国向けですので、石油部門と同様に密輸の黙認が懸念されます。
第三の主たる制裁は、海外で外貨を稼ぐために派遣されている9万3000人あまりの北朝鮮労働者に対する措置です。この措置も、原案にあった即時の強制送還よりも緩和されており、新たな就労許可の付与を禁じるに留まりました(ただし、契約期限終了後は更新できない…)。長期契約を締結している場合には、効果が現れるまでには時間を要しますし、永住資格取得者や密入国者による本国送金の可能性も残されています(この点は、日本国政府にも責任がある…)。
以上に主要な三つの部門について挙げてみましたが、繊維部門のように一定の成果が予測される部門もあるものの、これらを全て忠実に実施したとしても、北朝鮮が、核・ミサイルの開発・保有を放棄するほどの圧力となるとは思えません。中国外務省は、“完全履行を望む”とする談話を公表していますが、この発言は、対北制裁に対する積極姿勢の表明と言うよりも、制裁効果の限界を見越した余裕から来ているのでしょう。また、北朝鮮は、核兵器の原料となるウランのみならず、各種レアメタル、金、マグネサイトなどの鉱物資源にも恵まれており、今なお諸外国との間で貿易、あるいは、密貿易が行われている可能性もあります。
そして、何よりも重要なことは、今般の安保理制裁決議の採択によって、対北制裁における中国とロシアからの協力の限界もまた露わになったことです。北朝鮮を温存させるとする両国のスタンスは明瞭であり、今後、更なる核・ミサイル実験等を機に国連安保理の臨時会合が開かれ、制裁レベルを上げた案が提出されたとしても、中ロが、石油の全面禁輸等に同意する可能性はゼロに近いと言わざるを得ないのです。
国連における経済制裁路線が隘路に至ったとしますと、残された道は、(1)国連の枠組みを離れた有志連合による経済制裁(先端技術面での入手ルート遮断…)、(2)米軍による武力制裁、並びに、(3)北朝鮮の核保有の黙認となります。既にロシアは(3)立場を示唆しており、アメリカ国内のリベラル派にも同様の見解が散見されます。中国は、六か国協議の再開によって関係諸国の泥沼の交渉に引きずり込み、状況をできる限り曖昧化することで、(3)に伴う日本国の核武装を封じつつ現状を維持しようとすることでしょう。
となりますと、日本国政府は、(1)の場合には、有志連合による対北制裁を自ら提起する、他国が呼びかけた有志連合に参加する、あるいは、単独で独自制裁を強化するといった選択肢があります。ただし、中ロが不参加の状態での経済制裁頼りには、効果不足のリスクが伴います。また、アメリカが(2)を選択した場合には、北朝鮮からの攻撃リスクを覚悟しつつ、自衛隊は、米軍に全面的に協力することとなりましょう(なお、中ロも、以前は米軍による核・軍事施設の破壊を目的としたピンポイント空爆であれば容認の立場であったのでは?…)。そして、アメリカが(3)を選択した場合には、日本国は、速やかに核武装を実現する、発射前にミサイル破壊、あるいは、発射阻止可能な敵地攻撃能力を備える、並びに、完璧なるミサイル防衛システムを構築せざるを得ないのではないでしょうか。なお、核武装については、たとえアメリカが、ICBMのみの計画放棄で北朝鮮と妥協したとしても、主権平等の原則(NPT体制の崩壊により核保有にも適用…)、過去に繰り返された北朝鮮の合意違反、並びに、中国による核をバックとした威嚇と先制攻撃の可能性を考慮すれば(今般の対応でも明らかなように、中国は核保有国としての義務に違反…)、日本国は、核武装を強く主張すべきかもしれません。
時間は待ってはくれないのですから、中ロの立場が明白となった以上、国連安保理の枠組とした経済制裁路線には見切りをつけ、より有効な解決への道に向けて舵を切るべきと思うのです。
よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
にほんブログ村
本日、国連安保理では、原案に大幅な修正を加えた形で対北経済制裁決議案が全会一致で採択されました。予定されていた全面的な石油禁輸措置は上限設定に緩められ、金正恩朝鮮労働党委員長に対する資産凍結なども見送られるという“骨抜き決議”となったのです。
修正の背景としては、北朝鮮の早急な混乱を避けたい中ロによる強固な反対に対して、早期、かつ、全会一致での決議成立を優先したアメリカ側の妥協が指摘されております。しかしながら、本提案の目的が、強力な経済制裁を以って北朝鮮を“兵糧攻め”にし、依って核、並びに、ICBMの開発・保有の放棄を迫るものであるならば、優先順位をはき違えた本末転倒という他ありません。修正案によって合意された主たる項目を検討しましても、悲観的とならざるを得ないのです。
第一に、石油部門については、原油は過去12か月分が上限とされ、400万バレルの現状の輸出量がそのまま維持される一方で、石油精製品については、年間200万バレルの上限が設定されました(ただし、コンデンセートと天然ガスについては全面禁輸)。アメリカ政府は、この措置で石油輸出量を3割ほど削減できると説明しておりますが、北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させ得るほどではなく、開発完了時期を遅らせる程度の効果しか期待できません。また、公海における禁輸品輸送が疑われる船舶の臨検についても、旗国の合意を要する方向で修正されたため、密輸を取り締まることもままならないのです。しかも、陸運面でも、中国との国境地帯では(元瀋陽軍区)、既に石油の密輸が横行しているため、石油部門での制裁効果は望み薄です。
第二、北朝鮮製の繊維については全面的な輸出禁止となり、今年度の貿易額から算定すれば、北朝鮮は、7億5200ドル程度の減収が見込まれています。繊維産業は石油に次ぐ主要な輸出品ですので、比較的高い制裁効果が期待される部門ですが、輸出の8割が中国向けですので、石油部門と同様に密輸の黙認が懸念されます。
第三の主たる制裁は、海外で外貨を稼ぐために派遣されている9万3000人あまりの北朝鮮労働者に対する措置です。この措置も、原案にあった即時の強制送還よりも緩和されており、新たな就労許可の付与を禁じるに留まりました(ただし、契約期限終了後は更新できない…)。長期契約を締結している場合には、効果が現れるまでには時間を要しますし、永住資格取得者や密入国者による本国送金の可能性も残されています(この点は、日本国政府にも責任がある…)。
以上に主要な三つの部門について挙げてみましたが、繊維部門のように一定の成果が予測される部門もあるものの、これらを全て忠実に実施したとしても、北朝鮮が、核・ミサイルの開発・保有を放棄するほどの圧力となるとは思えません。中国外務省は、“完全履行を望む”とする談話を公表していますが、この発言は、対北制裁に対する積極姿勢の表明と言うよりも、制裁効果の限界を見越した余裕から来ているのでしょう。また、北朝鮮は、核兵器の原料となるウランのみならず、各種レアメタル、金、マグネサイトなどの鉱物資源にも恵まれており、今なお諸外国との間で貿易、あるいは、密貿易が行われている可能性もあります。
そして、何よりも重要なことは、今般の安保理制裁決議の採択によって、対北制裁における中国とロシアからの協力の限界もまた露わになったことです。北朝鮮を温存させるとする両国のスタンスは明瞭であり、今後、更なる核・ミサイル実験等を機に国連安保理の臨時会合が開かれ、制裁レベルを上げた案が提出されたとしても、中ロが、石油の全面禁輸等に同意する可能性はゼロに近いと言わざるを得ないのです。
国連における経済制裁路線が隘路に至ったとしますと、残された道は、(1)国連の枠組みを離れた有志連合による経済制裁(先端技術面での入手ルート遮断…)、(2)米軍による武力制裁、並びに、(3)北朝鮮の核保有の黙認となります。既にロシアは(3)立場を示唆しており、アメリカ国内のリベラル派にも同様の見解が散見されます。中国は、六か国協議の再開によって関係諸国の泥沼の交渉に引きずり込み、状況をできる限り曖昧化することで、(3)に伴う日本国の核武装を封じつつ現状を維持しようとすることでしょう。
となりますと、日本国政府は、(1)の場合には、有志連合による対北制裁を自ら提起する、他国が呼びかけた有志連合に参加する、あるいは、単独で独自制裁を強化するといった選択肢があります。ただし、中ロが不参加の状態での経済制裁頼りには、効果不足のリスクが伴います。また、アメリカが(2)を選択した場合には、北朝鮮からの攻撃リスクを覚悟しつつ、自衛隊は、米軍に全面的に協力することとなりましょう(なお、中ロも、以前は米軍による核・軍事施設の破壊を目的としたピンポイント空爆であれば容認の立場であったのでは?…)。そして、アメリカが(3)を選択した場合には、日本国は、速やかに核武装を実現する、発射前にミサイル破壊、あるいは、発射阻止可能な敵地攻撃能力を備える、並びに、完璧なるミサイル防衛システムを構築せざるを得ないのではないでしょうか。なお、核武装については、たとえアメリカが、ICBMのみの計画放棄で北朝鮮と妥協したとしても、主権平等の原則(NPT体制の崩壊により核保有にも適用…)、過去に繰り返された北朝鮮の合意違反、並びに、中国による核をバックとした威嚇と先制攻撃の可能性を考慮すれば(今般の対応でも明らかなように、中国は核保有国としての義務に違反…)、日本国は、核武装を強く主張すべきかもしれません。
時間は待ってはくれないのですから、中ロの立場が明白となった以上、国連安保理の枠組とした経済制裁路線には見切りをつけ、より有効な解決への道に向けて舵を切るべきと思うのです。
よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
にほんブログ村