万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の厚かましい特権願望-核兵器は保有したいがNPT体制は維持したい

2017年09月27日 15時02分50秒 | 国際政治
「北朝鮮にとって壊滅的」=軍事的選択肢で警告―米大統領
 北朝鮮の核開発問題は、NPT体制の行方と密接不可分に結びついています。アメリカでも、北朝鮮の核保有を認めた場合の日本国や韓国の核武装が議論されていますし、北朝鮮の擁護者である中国が恐れるシナリオも、日本国の核武装であるとの指摘もあります。誰もが、北朝鮮の核保有が承認されれば、当然に、他の諸国も核武装に走ると予測するからです。

 ところが、北朝鮮だけは、違ったシナリオを描いています。それは、アメリカを含む国際社会が北朝鮮を責任ある?核保有国の一員として公式に認め、北朝鮮もまた、NPT等の国際法上の責務を引き受けるというものらしいのです。北朝鮮は、”NPTを崩壊させて、全ての国が核を保有すればよい”とは決して主張しないのです。NPTに違反して核保有の既成事実化を図りながら、いざ核開発に成功すれば、今度はNPT上の核保有という安保理常任理事国と並ぶ特権的な地位を要求するのですから、その常識を逸した厚かましさには驚かされます。中国やロシアといった核保有国さえNPT上の責務を果たしていない状況にあって、北朝鮮が核保有国としての義務を誠実に果たすとは思えません。

 こうした傲慢不遜な態度は、“might is right”、即ち、核保有=他国に優位する特別な地位、という発想しか金正恩委員長の頭にはないからなのでしょう。この特権を得んがために、国民生活を犠牲にし、国際社会を騙し、国際法を破ってまで核開発を国家の最重要目標に据えたと推測されるのです。核を保有し、特権国グループに仲間入りすれば、他の非核保有国を見下す高みに登れる、と…。北朝鮮にとりましては、核保有こそ、“逆転劇”の切り札のはずだったのです。

 しかしながら、この野望も、自らの核保有によってNPT体制が崩壊してしまえば、絵に描いた餅に過ぎなくなります。もはや核保有は特権ではなくなり、非核保有国に対する核による脅迫や恐喝も通用しなくなるからです。また、将来に亘って、NPT体制を崩壊させた張本人の犯罪国家としてのレッテルが付きまとうことでしょう。つまり、現実には、核を保有したところで得るものは少なく、北朝鮮は、その傲慢な自己中心的思想である主体思想が祟って、自国の核保有が世界にもたらす結果を読み違えたのです。北朝鮮は、”核兵器は所有したいが、NPT体制は維持したい”という虫の良い要求は、最早あり得ないことを理解すべきなのではないでしょうか。

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コメント (4)
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